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ソロでも十分なんだが  作者: みのもん
1/1

1話

キーワードは「男主人公」「奴隷」の二つでどんな話になるか十分わかるはず。

今日もただ家と職場を往復し、飯を食って風呂に入り、寝る。


「……つまんねぇなぁ。」


入社してからの3年間で身についた習慣であり、この先の人生が何の刺激もなく退屈なものであることを悟るには十分であった。


布団に入り、意識を手放そうとすると、それはきた。

トゥン♩

「ん?誰だ??」


スマホの画面には見慣れないメッセージが表示されていた。


【指名依頼:村の救援】


「依頼?は?」


(メールでもSNSでもない…なんのアプリの通知だ?)

メッセージをスライドし、詳細を確認する。


【指名依頼:街の救援】-------------------------------------------------------------

タケルへの指名依頼

ラカムの村にゴブリンが向かっています。ゴブリンを討伐し、村人を救護してください。

達成条件:ゴブリンの撃退、村人の死傷者なし

報酬500z

※帰還不可

依頼を受け、オルクスへ転移しますか?  〈はい〉〈いいえ〉

-------------------------------------------------------------------------------


詳細を見たが、余計わからなくなった。

スマホゲームの通知か?


「ラカムってどこだよ…。しかも転移って魔法でもあるまいし。」


だがもしもオルクスってところに転移してゲームのような体験ができるのであれば、

この退屈な日常に少しは刺激が得られるかもしれない。


「まぁ久しぶりにこんなゲームやるのもいいか。」


少し夜更かしするくらいなら明日の仕事にもたいした影響はないはず。

まだオレは26だ、平気平気。


特に内容を読まず、深くは考えずに〈はい〉を選択する。

〈はい〉を選択した直後、浮遊感を感じ、目の前が一瞬で光に覆われる。

反射的に目を閉じ手をかざしたところで、タケルの意識は途切れた。


「んんっ、ん~」

外の光が網膜を強く刺激しており、瞼が持ち上がらない。


少しの時間だが意識が飛んでいたようだ。


ザラザラとした床、床のひんやりとした冷気が体に伝わってくる。

髪をなびく風は暖かさを含んでおり、草原の香りが鼻を通ると心地よさを感じる。


……いやいやいや

俺の家はカーペットを敷いてるし、寝るときはいつも窓を閉めていたはずだ。


漸く目が慣れてゆっくりと目を開ける。

「はっ……!!」


どこまでも続く透き通った青空はとても東京のものとは思えない。

小丘で立ち上がり周囲を見渡す。


緑で覆われた広い大地…

写真でしか見たことのないような、雲にも届かんとそびえ立つ山脈。

眼下には、森に囲まれた小さな集落が見える。

簡単な木の策で集落を囲み、その中に数十の家が立ち並んでいる。


「あれは…村か?」


こんな異常事態の原因になったであろう依頼内容を思い出す。

転移だとか、ゴブリンだとか、まったく信じられないことばかりである。


「ゲームじゃないよなぁ、リアルすぎるだろ…」

これが夢ではなく現実であることはわかる。その程度には冷静であった。


「とにかく行ってみるか。」


情報収集するにしても村へ行ったほうが賢明か…。

もし本当にゴブリンがいて、村が襲われているのであれば、できる範囲で撃退を手伝おう。

…無理そうなら逃げよう。


「ってかオレが戦うなんてできんのか?」


小学生の頃に少し空手を習っていたがそれだけである。

真面目に生きてきた結果、喧嘩の一つもしたことがない。


「ゲームならスキルとか魔法が使えるんだけどなぁ。ステータスもなさそうだしな。」

そう言った瞬間、頭の中に見覚えのある情報が浮かび上がってきた。


--タケル------------------------------------

職業:村人Lv.1   SP:100

スキル:農耕LV.1 家事Lv.1

固有スキル:異世界言語 ステータス

特殊:女神の加護(SP取得増加)

-------------------------------------------


「えっ…これ、ステータス‥か」


ますますゲームっぽくなってきた。ゴブリンといいステータスといい、まさにゲームだな。


ってか弱くね? 本当にこれがリアルの世界で、ゴブリンを倒さなきゃいけないんだったらこればヤバい…。


んー、このSPってスキルポイントのことだろうな。

今まで数々のゲームを攻略し、ファンタジー小説を読み漁ったオレにはわかる。このポイントを消費すればスキルが手に入るはずだ! これで勝てる!


現実であることはわかっているが、ゲームのような成長システムに楽しさを感じてしまう。

タケルは頭の中でSPの項目を選択してみた。


-----------------------------------------------------

SP:100

【村人】

農耕Lv.2…SP20

家事Lv.2…SP20

騎乗Lv.1…SP10

体力Lv.1…SP15


生活魔法 SP20

職業選択 SP100

第二職業獲得  SP100

スキルリセット SP100

獲得経験値2倍 SP100

必要経験値1/2 SP100

鑑定 SP100

-----------------------------------------------------

「勝てないじゃん! 戦闘スキルなんもねーよ!!」


タケルは村人であり、村人は戦闘とは無縁の生き物である。どんなにレベルが上がったとしても戦闘スキルを獲得することはない。この世界で魔物と戦うのであれば剣士、魔術師、冒険者といった職業に転職する必要がある。


もう村人のスキルは諦めよう…。他に選べるスキルもあるみたいだし。


下の方にある必要SPが高いものはきっとレアスキルだろう。職業とは関係なさそうだ。

しかし全部良いスキルばかりだな、全部欲しいぞ。だが村に着いたらゴブリンと戦うことになるだろうし、ここで選ぶべきなのは…


「これだ! 職業選択」


--タケル-----------------------------------------------------

職業:村人Lv.1   SP:100

スキル:農耕LV.1 家事Lv.1

固有スキル:異世界言語 ステータス 職業選択

特殊:女神の加護(SP取得増加)

------------------------------------------------------------


「よしできた! これで戦闘職を選択できる!!」  

タケルは職業の項目を選択した。


【他の選択可能な職業がありません。】


「なっ……!!」



あーやってしまった。SP全部使ってまで転職しようと思ったのに…異世界厳しいなぁ。

こんなことなら体力のレベルでも上げといた方がまだ役に立ったな。

どうやって戦えばいいんだよ。棒でも振り回すか? 石でも投げるか? それでゴブリンって倒せるのか?


もうオレは戦力にならないけど、他の村人と協力して倒すしかないな…。うん、そうしよう。

協力関係を築けるほどのコミュ力は全くないけど、一緒に戦っていれば味方と思ってくれるかな。

いざって時は逃げよう。うん、仕方ない。




タケルは途中で拾った太い木の棒と大きな不安を抱えたまま、村へと近づいていくのであった。


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