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#7 修羅場

 服を着替えたオレはリビングでオレは正座をしている。

 いや、別に正座するようなことはしてない……いや、さすがにしたよな。うん、あれは仕方ない。

 目の前のソファには真剣な顔のマコ姉とフレイが離れて座っている。


 空気が重い……まるで重力系の魔法にでもかかったように空気が重い。

 ああ、そう言えばあの時は大変だったなぁ。

 なんとか攻略法を見つけて倒したけど、あの魔術師には苦労させられたっけ……。


「カズくん」

「ひゃい!」


 マコ姉の声に顔を上げて、姿勢を正す。


「じゃあ、もう一度確認しますけど、カズくんは本や映画とかのお話みたいに数年間、異世界に行ってたんですね?」

「はい」

「で、このフレイさんと一緒に戻ってきたってことでいいんですよね?」

「はい、その通りです」


 うつ向く。怖くて目を合わせられない。

 最初は嘘をつこうかと思ったが、それは無理だった。

 なんたって長い付き合いだ。オレの事はよく知っている。こんな大きな嘘なら見破られるのは間違いない。


「そうですか……」


 マコ姉の声は反応に困ったような感じだ。そりゃ、そうだよな……普通は信じられないもんな。

 フレイの顔をちらっと見る。謝って許しては貰えたけど、こっちも難しそうな顔をしている。

 気まずい……かなり気まずい。時計の針の音が嫌に大きく聞こえる。


「わかりました」


 マコ姉を見る。マコ姉はメガネをクイッと上げるのが見えた。


「カズくんがそう言うなら信じます」


 うん、そうだよね。信用……え? 今なんて?


「ま、マコ姉! 信じてくれるのか!」

「はい、カズくんが嘘を言うとは思えませんからね」

「よかった……ありがとな。マコ姉」


 思わず笑顔になる。マコ姉も優しく微笑んでくれる。

 ああ、そうだったよな。マコ姉はいつでもオレの味方だったもんな。


「あとは、彼女の事ですが……どうするんですか?」

「ああ、フレイは長くても一か月くらいで帰れるらしいんだけど、それまでは家に泊まってて貰おうかと思ってるんだ」

「え? 泊まるんですか!」


 急にマコ姉がびっくりしたような顔になった。


「え? そうだけど……やっぱり、問題ある……かな?」

「当たり前です! 若い男女が一つ屋根の下で暮らすとかお姉ちゃんは許しません」

「で、でも、こいつを放り出すわけには……」

「いや、大丈夫だ」


 フレイが急に声をかけてくる。振り向くとすでに立っていた。


「あー……なんつーか、うん、そんなに世話になるわけにもいかねぇからな」

「でも、泊まる場所はどうすんだよ?」

「泊まるのは……そうだな。野宿でもすりゃ大丈夫だろ。なに、盗賊や魔物がうろついてるような場所でも経験はあるんだ。そう言うのがいないんなら、どうにでもなるだろうよ。あ、たまに飯でも食わせて貰えたら助かるんだけどな」


 フレイはあいまいに笑いながら頭をかく。


「いや、だけど――」

「それはダメです」


 オレ言うよりも早くマコ姉は立ち上がりがフレイに近寄る。そして、その手を握る。


「女の子が野宿なんて許すわけにはいきません」

「いや、だけど、あんただって俺とカズマが一緒にいるのは困るんだろ?」

「はい、ですから、私が一緒に泊まります」


 マコ姉はじっとフレイを見つめる。


「え? マコ姉? なに言ってるの?」

「なにって、二人では何が起こるかわからないので、私がお姉ちゃんとしてカズくんお家に泊まります。それなら安心ですからね」

「そんなこと言われてもな……なあ、フレイ」


 フレイを見る。フレイもかなり困った顔をしている。


「ああ、そうだぜ。見ず知らずの他人にそんなにしてもらうわけには……」

「見ず知らずではありません」


 マコ姉はフレイの手を持ったまま、オレをじっと見る。。


「カズくん。フレイさんはカズくんの友達ですか?」


 マコ姉のメガネの奥の真剣な目がオレをしっかりと見つめる。

 そんなのは決まってる。


「ああ、こいつは友達だ。いや、こいつがどう思ってるかはわからないけどさ」


 マコ姉が笑顔で頷く。


「フレイさんはどうなんですか?」

「俺は……」


 フレイがオレの顔をじっと見てくる。オレもフレイの赤い瞳をじっと見つめる。


「こいつが俺を友達と思ってくれるなら、友達……だと思う」


 フレイは頭をかきながら、少し照れたような顔で言う。


「じゃあ、私もフレイさんとはお友達です」

「マコトさん……」

「あ、呼び捨てでも、ジンくんみたいにお姉ちゃんって読んでもいいんですよ?」

「いや、お姉ちゃんはさすがに遠慮しとくぜ。じゃあ、マコト、ありがとな」


 フレイとマコ姉はお互いに笑いあう。

 うん、よかった。マコ姉のおかげで話がまとまった……家に泊まられるのは、ちょっと恥ずかしい気もするけど、まあ、マコ姉と一緒にいられるって言うのは素直にうれしい。

 そんな事を考えているとオレのお腹が鳴る。

 そう言えば、まだ夕飯を食べてなかった……でも、このタイミングは恥ずかしいな?

 オレは顔が熱くなるのを感じた。

 マコ姉とフレイが笑う。オレも気まずくなって頭をかきながら苦笑いする。


「ふふふ……もう、カズくんは仕方ないですね。じゃあ、ご飯にしましょう。おかずは……」

「ああ、カレーを作ってあるから、みんなで食べようぜ」

「そうなんですか? カズくんの手料理は久しぶりだから楽しみですね」


 そう言うとマコ姉はキッチンに入る。


「じゃあ、フレイ、行こうぜ」

「ああ、そうだな。実はオレもはらぺこだったんだ」


 オレとフレイもキッチンに向かった。

 


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