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#1 神社へ

「飽きてきた」


 オレは自分ん部屋で漫画を読みながら横になっている。

 窓の外はもうすっかり暗い。


「でも、まあ、浴衣を着るって言うなら待つしかないか」


 浴衣を着る……そう、今日は神社の夏祭りの日だ。

 普通に出かけようと思ったら、マコ姉が浴衣を用意してくれていた。

 さすがマコ姉だ。用意がいいよね。


「カズくーん! いいですよ!」


 一階から声がする。

 やっとか。

 オレは一回へと降りてリビングに入る。


「あ……」


 リビングにはマコが立っている。


「どうです? カズくん。似合いますか?」


 マコ姉はピンク色の巾着に、花柄の淡いピンク色の浴衣を着ている。

 物凄くかわいい。何年かぶりに見たけど、浴衣姿のマコ姉はかわいいと言う言葉がぴったりだ。

 本人はかわいいとか言われるのは、あんまり好きじゃないから言わないけどな。


「ああ、マコ姉、すごく似合ってるよ」

「そうですか? ありがとうございます」


 マコ姉は小さく笑う。オレは思わず照れながら頭をかく。


「そういや、フレイは?」

「ああ、フレイさんは……」


 マコ姉はキッチンの方を見る。同じ方向を見る。

 そこには……。


「なんだよ」


 少し恥ずかしそうな顔をしたフレイが立っている。

 オレは思わず言葉を失う。


「なんか言えよ」

「あ、ああ、悪い。見とれてた……」

「え?」


 フレイは真っ赤な生地に黒の模様が入った浴衣を着ている。

 普段は男っぽい服を着ているが、そのギャップですごくきれいに見える……いや、ギャップがなくてもすごくきれいだ。


「な、なんだよ。急にそんなこと言いやがって」


 フレイはなんだか嬉しそうにしている。

 よくわからないが、まあ、機嫌がいいのはいいことだ。


「じゃあ、カズくん。フレイさん、行きましょうか?」

「ああ、了解。フレイ、行こうか」

「おう、わかったぜ」


 オレたちは家からでると、夏祭りをやっている神社へと向かう。

 家からそんなに遠くはない。

 ここからでも祭りの賑わいが遠くから聞こえてくる。

 日も落ちた夜道は、だいぶ涼しい。


「しっかし、こっちの祭りとか楽しみだぜ」


 フレイは楽しそうだ。こういうイベントが好きそうだよね。


「そう言えば、カズくん。むこうの世界でもお祭りとかあったんですか?」

「ああ、あったよ。収穫祭とか一晩中でも踊って飲んで騒いで、次の日にはみんなぶっ倒れるとかな」

「へぇ、楽しそうですね」

「ああ、後は……」


 そんなことを話していると目的の神社の石段に到着した。

 オレたちは短い石段をのぼる。


「へぇ、それなりに賑わってるじゃねぇか」


 神社の本殿に続く石畳の道。その両端にたくさん屋台がならび、大人から子どもまで様々な人たちが楽しそうに歩いたり、買い食いしたりしている。


「さて、まずは……うん、お祭りと言ったらあれだよな!」


 オレはまず、イカ焼きの屋台に行く。


「すいません。3つください」

「あいよ。ちょいっとおまちくださいっと」


 屋台の店員が手早くイカ焼きを調理してくれる。


「はいよ、おまたせ。三本で九百円です」

「じゃあ、千円で」

「おい、おつりは百万円っと」


 百円玉を受け取りフレイとマコ姉のところに戻る。


「ほら、マコ姉、どうぞ。フレイも食べてみろよ」


 オレはイカ焼きを二人に渡す。


「ああ、ありがとうございます」

「へぇ、うまそうじゃないか……これはイカってやつだよな?」

「ああ、寿司と同じでうまいから騙されたと思って食べてみてくれ」


 フレイは豪快にイカ焼きにかぶりつく。一方、マコ姉はその小さな口で上品に食べている。


「うん……うまいじゃねぇか……このたれの味がまた……」

「おいおい、食べながらしゃべるなよ」


 オレの言葉にフレイは食べたものを飲み込む。


「……いや、あんまりにもうまかったもんだからな……むこうの世界でもこれでうまく商売をすれば……」

「やめとけやめとけ、クラーケン狩りなんて、高値で売っても元なんかとれないだろ?」

「まあ、そりゃそうか」


 フレイは笑いながら言う。

 あれを買って商売にするなら……いや、金持ち相手にそれなりの値段で売れば……。

 そんな事を考えながらオレもイカ焼きをほおばる。

 焦げた甘みのある醤油だれが、香ばしさとともにイカのうま味を引き立てている。

 まあ、こういう雰囲気で食べるって言うのも大きいけどさ。


「じゃあ、せっかくだから色々と食べようぜ!」

「なんだよ。色気もなにもあったもんじゃないな」

「色気? やっぱ、てめぇも女は女らしい方がいいのか?」

「そうだな……まあ、おまえには似合わないか」

「なんだと! ったく……マコト! こんなやつ放っておいて行こうぜ」


 フレイは不機嫌そうな顔でマコ姉の腕を引いて歩き始める。

 言い過ぎたかな? お祭りと言う雰囲気でちょっと浮かれてたてかもしれない。

 ちょっと反省。

 そんな事を思いながらオレもそれに続いて歩き始める。


「マコト、これなんだ?」

「わたあめですね……あ、一つください……はい、お金です……フレイさん、どうぞ」

「わ! なんだこりゃ。甘くて口の中で溶けちまったぞ」

「ふふふ、そう言うお菓子ですからね」

「じゃあ、これは……」


 マコ姉とフレイが楽しそうに歩きながら、次々と屋台へと寄っていく。

 さっきのこともあるし、なんとなく二人の間に割って入りにくい。


「ん? なんだこれ?」


 フレイは立ち止まるとある露店に目を止める。

 射的の屋台だ。



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