#2 二日酔い
「うー……いたたた……あったまいたい……」
ゆっくりと目を開ける。朝日が顔に当たっているのがわかる。
まわりを見渡す。オレの部屋、ベッドの上だ。クーラーも効いて涼しい。
どうやら、倒れたオレをフレイが部屋まで連れてきてくれたらしい。
「ふぁ~……起きるか……」
なんとか起き上がると部屋を出る。
少しふらつくが、まあ、平気だろ。
「おはよう」
キッチンに入ると、オレはフレイに声をかける。
フレイはテーブルにうつ伏せになって倒れていた。
マコ姉はもういない。そりゃ、この時間なら仕事に行ってるよな。
「おはよう……」
うつ伏せのまま、フレイは応える。
うん、完全にダメになってるな。
そりゃ、あんだけ飲めばそうなるよなぁ。
オレはみそのいい臭いがしていることに気付いて、コンロに向かった。
マコ姉特製のみそ汁だ……うん、ありがたい。
って言うか、マコ姉は本当にどうなってるんだろうな。あんだけ酔っても次の日には全く酔いが残らないって話だし。
そんな事を考えながら、戸棚からお碗を取り出す。そして、みそ汁を注ぐ。
まあ、熱くなくてもいいだろ。
「ふぅ……うまい……」
一口飲むと、口の中にみその香りが広がる。具は豆腐とねぎ……うん、俺の好物だ。
優しい味が二日酔いの体によく効く。
「フレイ、おまえも飲むか? みそ汁は二日酔いによく効くらしいぞ?」
「そうなのか? じゃあ、貰うか……」
オレは別のお椀にみそ汁を注ぐとフレイの前に置く。
「ほらよ」
「ああ、ありがとな」
フレイはみそ汁を飲む。
「ふぅ、うまいな……あ、昨日は悪かったな。酒が飲めないのに飲ましちまってよ」
「ん? ああ、まあ、あんな状況だ。仕方ねぇだろ」
オレは大きなあくびをする。水分をとったおかげか気分が少し楽になってきた。
頭もすっきりしてきた。
「しっかし、なんであんなに飲んだんだ? マコ姉だって普段は悪酔いするからって、飲まないのに」
オレはみそ汁をお代わりしながら聞く。食欲はあんまりないけど、みそ汁なら何とか食べられる。
「なんつーか、すげぇマコトとは気が合うんだよな。なんて言うか……俺ってさ。今まで人に頼るよりは頼られる側だったんだよ。ガキの頃から孤児院でも姉貴分だったし、軍に入ってからもすぐに部下を持つ立場になっちまったからな」
マコトは少し寂しそうな目でお椀を見つめる。
「でさ、こう……人を頼るってあんまりしたことはないんだけどよ。本当にマコトは優しくて、ついつい甘えちまうんだよな」
少し恥ずかしそうにフレイは頭をかく。
「そうか……まあ、確かにマコ姉は優しいし、頼りになるからな」
それはオレが一番よく知っている。
「そういや、マコ姉もおまえのことを妹ができたみたいで嬉しとか言ってたぞ」
「え? そうなのか?」
「ああ、マコ姉は一人っ子だし、オレは弟みたいなもんだからな」
うん、オレじゃあ、弟にしかなれないから、女同士でワイワイできるって言うのはフレイにしかできないだろうし。
「ふーん、弟……ねぇ」
フレイは複雑そうな顔をする。しかしすぐにニヤッと笑う。
「じゃあ、昨日みたいなのも別に何とも思わないのか?」
昨日って、あれだよな……その、下着姿のあれだよな。
うん、思い出したら恥ずかしくなってきたな?
「え? 昨日って? なんのことだかさっぱり……」
「顔に出てるぞ」
「え?」
オレは思わず顔に手を当てる。すると、フレイはニヤッと笑った。
「嘘に決まってるだろ?」
「おまえなぁ……」
「でも、どうなんだ? 」
「どうって言われても……」
そりゃ、フレイもマコ姉もタイプは全然違うけど、どっちも美人なのは間違いない。
ああやって、言い寄られたら、そりゃ、オレだって男なわけだからうれしいに決まってる。
いや、まてよ……嬉しいってことは、フレイは当然だけど、マコ姉だって異性としてみてるってことだよな……。
「おい、大丈夫か?」
「え?」
「いや、なんかすげぇ真剣な顔してたからよ」
フレイが心配そうな顔で聞いてくる。
「ああ、いや、別に……さて、おかわりはもういいのか?」
「そうだな……もういいかな」
「そうか。じゃあ、片づけ位はやっとくからそのままでいいぞ。もう少し寝てきたらどうだ?」
「そうか? あー……わりぃな。じゃあ、頼むわ」
フレイはあくびをしながら言う。そして、そのまま二階へと上がっていった。
オレは残ったお椀を洗い始める。
だが、フレイに言われたことが気になってなんとなく集中できない。
オレはフレイとマコ姉をどう思ってるのか?
考えはまとまらない。
まあ、でも、ゆっくり考えればいいさ。まだまだ、時間はあるんだしな。




