#2 ショッピングセンター
「だから、二人ともさっきのは……って、着いたな」
オレは言い訳しながらショッピングモールまでやってきた。
からかわれてるのは何となくわかったが、あんなこと言ったんだ。そのくらいは付き合ってあげないとな。
「さて、どうだ、フレイ。すごいだろ?」
「いや、別にそんなでもねぇぞ」
「あれ?」
おっかしいな。映画館まで入ってるかなり大きな建物なんだけど?
「だって、帝国の要塞だって、このくらいのでかさがあっただろ?」
「まあ、そりゃ、そうだな」
映画館まである三回建ての大型ショッピングモールだけど、確かにあの要塞はもっとでかかったよな。
「でも、店がいくつも入ってる建物は珍しいだろ?」
「あー……確かに、このでかさで店が入ってるのは珍しいな」
「だろ?」
「カズくん、フレイさん。早くいきましょう。さすがにこの暑さは……」
マコ姉は言う。確かにマコ姉はかなり汗をかいている。
ああ、そうか。オレたちはこの程度の暑さには慣れてるけど、マコ姉にはつらいよな。
「じゃあ、二人とも行こうか?」
「ああ、わかった」
「はい」
オレたちはショッピングモールに入る。
中は冷房が効いていて涼しい。今日は休日ってこともあって、親子連れや恋人、友達連れの客でにぎわっていた。
「おお、中はかなり涼しいんだな。それに……うん、いい匂いもしやがるぜ」
フレイは鼻を鳴らしながら楽しそうな声を上げる。
確かに、いい臭いはしている。そういや、焼きたてのパンとか売ってる店もあったっけかな?
帰りに買うのもいいかもしれない。
「さてと、じゃあ、まずは……」
オレは周りを見渡す。すると、いつの間にかマコ姉が掲示板の前に立っていた。
「マコ姉。どうした?」
オレはマコ姉に近づきの後ろから掲示板を見る。今日やる予定の映画の広告が張り付けてあった。
「マコ姉、ちょっといいか?」
「ん? どうしましたか?」
「これ、マコ姉が読んでた小説と題名が同じだよな?」
「ええ、ちょうど映画化したんですよ。まだ見れてはいないんですけどね」
マコ姉はポスターを見つめている。
上映時間は……まだ間に合うな。そうなると……。
「マコ姉。せっかくだし、見ていかないか?」
「え? でも、買い物がありますから……またの機会でも大丈夫ですよ」
そうは言っても、マコ姉は明らかに残念そうだ。
上映期間ももう少ない。今回を逃すと映画館で見るのは難しいと思う。
せっかく楽しく買い物なんだから、マコ姉にも楽しんでもらいたいんだよなぁ。
となれば、ちょっと強引に話を進めるとするか。
「フレイ、ちょっといいか?」
オレはフレイを呼ぶ。フレイは興味深そうにあちこちの店をのぞいていた。
「なんだ?」
言いながらフレイは近づいてくる。
「この映画、買い物前に見たいんだけどいいか?」
「映画? なんだそりゃ?」
「ああ、そうか。映画って言うのは……あれだ、テレビのでかいやつだ」
「へぇ、面白そうじゃねぇか。いいぜ。俺も見てみたいからな」
フレイは楽しそうに笑っている。
このショッピングモールの雰囲気に、かなりテンションが上がってるらしい。
子どもっぽい気もするが、まあ、言うと怒られるからやめておこう。
「じゃあ、決まりだな。マコ姉もいいよな?」
「カズくんは強引ですね。でも、ありがとうございます」
「まあ、いつも世話になってるからな」
オレたちはそのまま、エスカレーターに乗り込む。そして、三階にある映画館へと向かった。
フレアは相変わらず、あちこちをきょろきょろと見まわしている。
「おい、着いたな。マコ姉。チケット頼む。オレたちはポップコーンでも買ってくるから」
「うん、わかりました。じゃあ、お願いします」
そう言うと、マコ姉はチケット販売のカウンターに向かう。
一方、オレはフレイを連れてポップコーン売り場へ向かう。
「えーと、ポップコーンの塩味、SサイズとSコーラ3つずつで」
「少々お待ちください」
店員は手早く3つのトレイに乗ったコーラとポップコーンを出す。オレはお金を払いそれを受け取った。
「ほらよ」
「お、ありがとな……ちょっと、味見……うん、うめぇじゃねぇか」
言いながらフレイは手が止まらずにどんどん食べる。
「おいおい、中で食べる分がなくなるぞ」
「いや、だってよ」
「だってじゃなないよ。まったく」
お互いに笑いあう。
そんなことをしているとマコ姉がチケットを買って戻ってきた。
「じゃあ、時間もそろそろだし行きましょうか」
「ああ、了解」
オレたちはそのまま中に入る。
中を見回すと人がほとんどいない……まあ、話題作でもないし、同じ時間にやってる映画が話題作だから仕方ないけどな。
「じゃあ、真ん中の席に座るか」
オレは一番見やすい席、真ん中の席を選ぶ、マコ姉とフレイはオレの両隣に座った。
「カズマ。そういや、これ、どんな映画なんだ?」
「この映画か? えっと……マコ姉、どんな映画だったっけ?」
「小さいときに別れた幼馴染みの二人が再開する、って言うお話ですね」
「だとよ」
「え? 恋愛ものなのか?」
フレイは目を丸くする。
「そっか、まあ……いいか」
フレイは頭をかきながらスクリーンに目をやる。
もしかして、恋愛映画とか嫌いなのか? 確かに、こいつだったら派手なアクションとか、そう言うのが好きそうだもんな。
そんなことを考えていると、ブザーが鳴り館内が暗くなる。
そして、映画がはじまった。




