08
5年生になりました。
やー、あっという間だった。
3年生ではお兄様が卒業するため、中等部で変な虫がつかないよう、べったりだった。
同じく愛する樹の入学だったため、やはり変な虫がつかないように1年生の教室に遊びに行きまくった。樹の友達とも仲良くなれて満足だ。1年生ちゃん可愛い。私の天使ちゃんたち。
そして5年生の今。学校に不信感を抱いている。理由はクラス編成だ。今まで、紫藤、琥珀院と一度も同じクラスになったことはなかった。今年は何故か全部集まっている。
全部って?
私、私の取り巻き何人か、紫藤、琥珀院、私を敵対視している紫藤のファンのリーダー、同じく琥珀院のファンのリーダー、ついでに吉本。
間違いなく何かおこるだろう。学校も変な手に出たな。実は5年生のクラスはそのまま6年生に持ち上がることになっている。修学旅行もこのままだ。臭い物には蓋をしろ、ってことか?
学級委員は大変だなぁと思う。私?もちろん傍観ですよーん。
いままでは、まぁ私の目配せひとつでクラスが意のままになるくらいには人間関係築いてたけど、今年は反乱分子がそこそこいるから協力は難しい。委員長、すまん。
5年生になると男子も女子も色気づいてくる。
私のことは毎日誰かしら褒めてくれるのでとても気分が良い。そこのお嬢さん、いいぞ、もっとちこうよれ。
近くの男子の会話が聞こえる。
「女と金は難しいよなぁ〜」
「あー、分かる。」
小学生の会話じゃねえだろ。
「ふっ。俺、女も金も小1の時に覚えたから。」
「え、吉本お前すげえ」
「吉本、なんだその誇らしげな顔は」
吉本やめろ。女の子たちの目がヤバいぞ。
だが、吉本が言っていたのは漢字の話だった。
女子の皆さんはちょっとだけ吉本に優しくなった。
「瑠璃坂さん、ちょっとお時間よろしいかしら?」
うーん、近いうちに来るだろうと思っていたが、思ったより早かったな。
確か紫藤のファンリーダーだな。イリスの会でも見たことがある。それなりのご令嬢らしい。
見事に紫藤と琥珀院がいない時を狙ってきて。
「はい?」
こてん、と首を傾げる。
「お昼休み、お一人で焼却口に来ていただけるしら」
えー、ヤダよ。あんな臭いとこ。
イリスのメンバーなんだからコテージ使おー。あ、存在しらないのかな?
「申し訳ございません、すでに予定が入っていて、、」
「とっても大切なお話ですので。」
「星羅様になんて口を聞くんだ!」
「そうよ!星羅様、行くことないですわ!」
私の周りもうるさくなる。
もー。面倒くさいなぁ。行けばいいんでしょ。行けばぁ。
昼になり焼却口に行くと、わらわらと女子達に囲まれた。ですよねぇ〜。
「お話ってなんでしょう?あまり話したことなかったので、話せる機会が出来て私、嬉しいですわ」
にこっと純粋そうに笑う。ここで罪悪感煽っとかないとな。にしてもこいつ顔がまろ顏だな。眉毛が丸いし、顔がぽっちゃりで、余は大変楽じゃ、とか言ってそうな顏。浮世絵顏といい、イリスの会の女はロクなのがいないのか!?
うっと少し眩しそうにしたが、まろ眉が
「単刀直入に言いますわ。私たちの桐様に近づかないでいただきませんこと?」
と言うと、大人数が一斉に一歩を踏み出す。
こえええぇぇぇ!!!!
てか、すげえ揃ってる。練習したの?
私はすごく困った顔をして、まるで絵文字の汗が見えるように振る舞う。分かりやすくいうと(。>﹏<)て感じだ。
「なんとか言ってくださる?」
「困ったでおじゃる」
「「は?」」
しまった。心の声が。いと恥ずかし。
「いえ、紫藤様とは私個人の関係はございませんから、家の関係もあり、近づかないというのは難しいですわ、、それにクラスメイトですもの、それなりに話す機会も出来てしまいます」
私、五代名家ですのよ?
「ま!生意気に!いつもちやほやされて!」
「男の方はみんな自分のこと好きだとでも!?」
「顔が可愛いからって!」
「性格おしとやかだからって!」
「運動もできるからって!」
「頭がいいからって!!!調子に乗るのも大概にしてくださいまし!」
、、君達本当は私のこと好きだろ。
そろそろかなぁ〜。お!紫藤と琥珀院きたぁー!
ふふふ。私の取り巻きたちに、紫藤様たちには内緒ね?と悲しそうに言っておいたのだ。
小学生の内緒ね?なんて喋ってくれと言っているようなものだ。ぬかりはない。
ヒーローくーん、助けてぇー。紫藤の取り巻きだから紫藤が助けてくれんのかな?
ん?んんんん????
「やめろ!」
と私のヒーローは目の前に飛び出して手を広げる。
「星羅姉様をいじめるのは誰だ!いじわるさんは嫌い!!」
やーーーーーーーん!!!!!きゅんきゅんきゅーーーーーん!!!!かーわーいーいー!!!!!素敵!私の王子さまぁ!!!
「まあ!!樹!とってもかっこいいわ!素敵よ!写真とるからそのままでいて?」
私は我を忘れて樹のかっこいい姿を携帯のカメラに納める。もちろん連写だ。
「ねえさんとっても助かったわっっっ!ありがとう!私の王子さまっ!」
樹にキスの雨をそのまま降らす。樹はほっぺを赤くしていたが、星羅お姉様のことは僕が守るからね!っと意気込んでいる。
「ねえ樹?私、とっても怖かったの。ギュってしてくれる?」
「うん!ぎゅーー!」
可愛い!!!口で言うところがまた可愛さに拍車をかけている!!弟が天使すぎてつらい。
「今日は怖くて寝れないかもしれないわ、困ったなぁ」
ちらっと樹を見ると、
「僕が一緒に寝るよ!星羅姉様には僕がいるから怖くないね!」
と言ってくれた!もうっっもうっっ!!!!!
我に返った時には、紫藤と琥珀院はこちらに走ってくるポーズのまま固まっていた。ダサいよ君達。
まろ眉は樹に嫌いと言われたのがショックだったのか、青ざめている。
「姉様に怖い思いをさせているのは誰なの?」
とキッとして聞く樹に紫藤を指差し、
「あいつが犯人です」
と答えた。