05
私は一年生になった。
本日付けでこの雪城学園に入学致しました。
やー、お金持ちだけあって、でかいでかい。迷子になったら戻れないんじゃない?気をつけよう。
クラス分けは紫藤と離れて喜んでいたのも束の間、、
「キャー!!!!紫藤様よー!」
「キャーーーーー!!!!琥珀院様もご一緒だわ!!!」
「素敵!!近くでみられるなんて、、!!」
「こちらにやってこられるわ!!!!!」
記念すべき馬鹿は迷うことなく私のクラス、私の席に来た。他のクラス入っちゃだめなんじゃないー?そんなこと言う人は一人もいないけど。
「星羅」
紫藤が話すだけで女の子たちがうるさい。まるで猛獣だ。
「キャーーーーー!!!!!瑠璃坂様と仲がよろしいというのは本当でしたのね!」
「桐様はとても無口なのに、瑠璃坂様とはお話なさるのね!羨ましいわ!」
勘違いしている。紫藤を勘違いしている。
こいつ無口ってことになってんのか、残念な中身がバレないように、せめてもの親御さんの教育か?
「始めまして、瑠璃坂さん。桐から話を伺ってるよ。」
「お初お目にかかります。琥珀院様。」
琥珀院 蓮。五代名家の1人、黄色の家だ。まるで動く城に住んでいそうなイケメン。色素の薄い髪の毛を肩まで伸ばしてまるで王子様だ。いつも微笑んでいるのにどこか近寄りがたい雰囲気。ちょっとお兄様に似てる。んー、こういうのが好みなんだよー!何考えてるかわからない系男子!
「星羅、昼休み話があるから開けておけ」
えー。昼休みはお兄様といちゃいちゃ予定なんだけど。お兄様に寄ってくる女を牽制しに行く義務があるのにぃ〜
「またあとでね、瑠璃坂さん」
決定事項かよ!
私は困ったように微笑んで彼らを見送った。あくまで断れなかったんだよー!私の意思じゃないよー!というのを全身でアピールする。女の嫉妬は怖いからね。譲らないのはお兄様と樹だけです。
昼休みになり、宣言どおり私をドナドナした紫藤たちは裏庭にあるコテージでお茶を飲んでいる。コテージ、、ちょっと隠れ家みたいでワクワクするんだけど!入っていいの!?入場制限あるの!?私いつでも来ていい!?
「桐が強引でごめんね、瑠璃坂さん。」
琥珀院が申し訳なさそうな顔を作る。私は知っているぞ。お前も加担者だとな!
是とも否とも思わせるように微笑む。
「桐とは幼馴染みなんだけど、最近は瑠璃坂さんの話ばかりでね。どんな子なんだろうって僕も気になっていたんだ。僕ともよかったら仲良くしてね。」
紫藤に近づく女の素行調査か?紫藤が馬鹿だから代わりに見極めてやってるのか、大変だな。
「まぁ、恐縮にございます」
「ぷ!恐縮って小学生の使うの初めてきいた」
そうですか。丁寧な分にはいいだろ。
「星羅、これを見てくれ」
さっきからそわそわしながら手に持っている物に私達が反応しないので自分で訴えることにしたようだ。
紫藤が出したのはヌンチャク、、嫌な予感しかしない。
突然立ち上がり、ヌンチャクを振り回す。
「フォアッチャーー!」
「、、、、、、」
「桐はまた映画に影響うけて、、今度は何を見たんだか、、」
映画、ね。おおむね想像通りでよかった。あれが通常運転だった方が問題だ。
「あ、電話だ。ちょっとごめんね」
琥珀院の携帯に電話がかかってきたようで、コテージの外に出て行った。
「アチョーー!」
私はコテージに飾ってあった大きめのクマのぬいぐるみを手に取り、
「う~わ~!」
と吹っ飛んで、やられたフリをさせる。
「KO!!」
そして紫藤を指さして
「YOU WIN!!」
更に、
「ラウンド2 ファイッ!!」
その声に紫藤がノリノリでもう一度奥義を出そうとした瞬間ぬいぐるみを投げる。突然のことで全く反応できなかった紫藤はその場に倒れる。
私はその場を後にした。
コテージを出ると丁度電話が終わってこちらに戻ってくる琥珀院を見つけた。
「琥珀院様。本日はありがとうございました。私はお先に失礼します」
「あれ?もう戻っちゃうんだ、またたくさんお話しようね?」
寂しいな、とうるっとしながらこちらを見る。きゅーん!好みの顔だけにノックアウトしそうだ。
なんとか意識を持って裏庭を歩いているとお兄様にあった。
「お兄様。裏庭良く来られるのですか?」
「星羅の姿が見えたから。琥珀院くんとも仲良くなったみたいだね?なんだか寂しいな、」
お兄様が私の後ろの木に手をそっと置く。壁ドン!?壁ドン!?そして私の顎をもう片方の手で持ち上げ、
「次からは僕も、、、ダメ?」
「もちろんです!!!!私にはお兄様だけです!」
ノォッックアウトぉぉぉぉぉ!!!!!!
きゅーん!きゅーーーーーーん!!!!!!!お兄様に勝てる人はいませんーー!!!!!