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「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「琥珀院様の綺麗な髪の毛が!!!!!」
「でも新しい髪型も騎士のようで素敵だわ!」
「何があったのかしら!失恋!?」
「琥珀院様が失恋なんてなさるはずないわ!!!」
一日中噂のマトだ。
「星羅様。何かご存知ではなくて?」
私が動く城って言ったからだよ。多分。
「さぁ、でも髪型を変えると気分もスッキリしますよね」
「そうですわね!私も髪の毛切ろうかしら」
短髪ブームが来るかもしれない。凄いな琥珀院。
夕食を食べている時、お父様が口を開いた。
「星羅。今度パーティーに出るから用意しといね」
「まぁ、誰の主催ですか?」
「翠城様だよ」
げーーーー!!!!!パーティーには家の義務もあるから参加はしているが、翠城のとこのは出たくない!
「参加したいですが、文化祭の準備が忙しくて」
行きたくない。
「忙しい星羅には申し訳ないけど、五代名家主催のパーティーは出ようね」
ちーん。
そうだよね、そうだよね、、でも会いたくないし関わりたくないし。
翠城ってあんな嫌なヤツだけど攻略対象でしょ。五代名家だし。しかも私、良く思われてないでしょ。高等部からゲームの主人公と一緒になっていじめられるんだ。きっとそうなんだ。やーだー!!
私は食事中なのも御構いなしに
「あ〜る〜晴れた〜よーるさがりーパーティーへ続く道〜」
と歌い始めた。
「車が〜ごーとごと、私を乗せて行く〜。可愛い娘。売られて行くよ〜。悲しそうな瞳でみ〜て〜い〜る〜よ〜」
「、、、、、、無理だよ星羅。こればっかりは、、」
「私は何も言っておりません。歌っていただけです」
一晩中歌ってやろか。やんないけど。
精々私をドナドナするがいい。
「誰の娘だい?」
と申し出る父に
「どうだったかしら。橋の下で拾ったかしら」
と答える母
おい。実の親。お父様にそっくりな顔ですよ。血縁は間違いないです。
そして実は文化祭準備は今日終わった。あとは本番を待つのみだ。私は会計を担当することになっている。
にしても翠城家。文化祭前とはどういう了見だ。大人には関係ないからか。では私は行かなくてもいいのではないのか。
知ってる。嫌なことほど早く来る。
文化祭を前日にし、私はパーティー会場に来ている。五代名家主催だからか、紫藤も琥珀院も緋津華もいる。翠城はもちろんだ。
お兄様と樹とくっついて、お父様お母様と挨拶をして回る。
この歳になると婚約者という話が多い。お兄様が黙らせるから全然被害はないけど。
でた!蛇め!
翠城も両親と共に挨拶回りしている。そりゃそうか。主催だしね。
「星羅さんとは学園も一緒ですし、息子の碧と仲良くして下さいね」
翠城母は美人だ。ツリ目な美人。素敵だ。ツリ目美人が涙に濡れているところを見てみたい。でも翠城家とは関わりたくない。
「翠城先輩とは親しくなる機会がなくて、会えば挨拶する程度です」
しっかり釘を刺しておく。
隣の翠城が「お?」という表情をする。何も喋るでないぞ。お前の嫌味な発言は非常に勘に触るのだ。
残念そうにする翠城母に申し訳なくなりながらも、今後も関わることはない。と心の中で意気込む。
「翠城先輩とは縁が無いようですが、翠城様のお母様と仲良くしていただきたいと思います」
美人に負けた。仕方ない。私はそういうヤツだ。
嬉しいそうにする翠城母。あぁ、素敵。
「妻は気が強く見られがちでね。そう言ってもらえて嬉しいよ」
翠城父も素敵だ。何故こんな息子に育ったのか、、やれやれ。
私の両親から視線が向けられたが、何食わぬ顔で外行き顔を作ったまま微笑む私。
「今度、お茶会を開きますの。女性だけのお茶会ですわ。よかったら星羅さんもどうかしら」
「まぁ!何があろうとも是非参加させて頂きたいですわ」
美人!超美人!でもうちのお母様も負けていなくてよ!
「あ、そうだわ。別日なんですが、息子の碧も出るちょっとしたパーティーもありますの」
「私、日頃から学生の仕事でもある勉学に勤しみたいと思っておりますので。私は要領が良くない分、努力しないとと考えているのです。あまり羽目を外すと楽しさのあまり、勉強が手につかなくなりそうです。せっかくのお誘いですが、、」
と断る。あからさま過ぎたかな?まぁいいや。
ふー。翠城家の挨拶も済んだし、仕事完了!
現在は樹と一緒に料理を堪能している。お兄様は両親について挨拶回りの続きだ。跡取りは大変だなぁ
「姉様。友人を見つけました。」
行きたそうな樹。友人関係も大事だよね
「私も友人を何人か見つけたわ。挨拶してくるから樹も遠慮せず話しておいで?」
後ろ姿も可愛い。流石は樹。
私はちょっと疲れた。人目のない所、ない所と静かに移動していると、マッサージチェアを見つけた。へー!珍しい〜。
宇宙体験マッサージ機!?楽しそう。パーティー会場からはちょっと離れた娯楽場所のようだ。
あ、お金入れるんだ。私はお金を入れ、リモコンを取る。
ベルトもつけるの?凄い揺れるのかな?
しっかりベルトを締め、リモコンを手に取る。強押し派なんだよね〜
でも、まずは中、で様子見だな
リモコンを押すが、震度が来ない。背後の機械も動いてない。
ボタンを強、ハイパワーとポチポチ押してみる。
変化なし。
ぼったくりじゃん。
ふと隣のマッサージ機を見ると、ガクガクに震えていた。
そこに寝ていたのは翠城。挨拶回りしてたんじゃ!?目はつぶっている。
ベルトもしてない翠城のマッサージ機は、宇宙体験だからか、頭が下になり垂直へと移動する。
振動もすさまじく、ガタガタなるたびに身体が飛び跳ねている。
私は素早くベルトを外し、走って隠れながら会場に何食わぬ顔で戻った。もちろん足音も消した。
会場に戻ると心眼の覇者がいた。おい!心眼の覇者!お前心が読めるんだろ!会場を出て右に曲がった先の娯楽場所に行って鉄砲玉として自首してこい!
私は会場の出口から一番遠いバルコニーに出てベンチに座った。
わざとじゃない!わざとじゃない!
正直生きた心地がしなかった。
「星羅、そんな所で黄昏てどうしたの?」
「琥珀院様」
こいつには絶対にバレてはいけない。余裕のある笑みを浮かべる。
短髪も似合っているね。騎士というか、司書みたいだけど。前髪がパッツンで後ろは刈り込まれており、坊ちゃん刈りだ。
たまたま私たちの近くを通った令嬢が
「きゃ!蓮様と星羅様よ!そういえば先日、紫藤様のお宅へ遊びに行ったみたい!何をしたのかしら!」
と。
琥珀院が私にしか聞こえない声で
「四つん這いだよね」
と言う。それ、一歩間違えると怪しい関係じゃない?
私はあの時撮った写真をメッセージアプリで琥珀院に送った。
隣でメッセージを確認した琥珀院は固まっている。
「何かおっしゃいましたか?」
「、、、、、、」
話をしたおかげでちょっと落ち着いた。たまには使えるじゃないか。琥珀院。
会場に戻ると、大きなタンコブ、痣を顔に作った翠城を見つける。
もう帰ろう。いや、ここで帰ると逆に目立つか!?
翠城に5メートル以上近づかないように気をつけながらその日を過ごした。




