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家に帰ってまったり。五年生になった樹は反抗期か、ベタベタしなくなったのだ。寂しい。うさぎは寂しいと死んでしまうのよ?と言った私にため息の弟。泣いていいですか?それでも私の横に座って一緒にお茶飲んでくれるけどね。男の子はこれだから、、お母様。星羅は妹を所望します。
あ、お兄様が帰ってきた。
お兄様は反抗期とか無いなぁ。知らないだけで親にはあるのかな?
「お兄様。一緒にお茶いかがですか?」
「星羅。ただいま。そうだね、着替えたら参加しようかな」
あぁ、今日もイケメンです。疲れがとれるようだ。でもやっぱり高等部に上がったお兄様は生徒会役員にもなって忙しそうだ。前のようには一緒にいる時間もあまり無い。
「もうすぐ文化祭だね。星羅のクラスは何をするの?」
着替えたお兄様が私の横に座りながら話しかける。
「アクセサリーショップです。紫藤様のご提案で」
「へぇ、アクセサリーショップは今までどのクラスでも見たことなかったなぁ。どういう形なの?」
私はパーツを作るのは店。デザインやパーツをまとめるのは私たちであることを話した。
「そうなんだ。星羅はどんなデザインにしたの?」
「シンプルなリーフや、雫の形、雪城学園なので、雪の結晶など、何個かデザインしました。」
「星羅が作ったものを見てみたいけど、中等部の文化祭も、生徒会として中等部の生徒会を手伝わなくてはならないんだ。星羅の作った物が僕以外の人間に渡るなんて、、それがもし男だったら、、、」
お兄様が寂しそうにする。憂い顔のお兄様も素敵。作った人はわからない様になっていることを伝え、自分で買うことが出来たらお兄様にプレゼントするこを約束した。買えなくてもこっそり持って帰れるだろう。
「ちょっとしたストラップや、メンズ用の物もありますので、楽しみにして下さい」
「そっか。楽しみに待っているね。星羅箱にしまって一生大切にするよ」
星羅箱ってなんですかお兄様。是非とも使ってください。女避けにもなるかもしれませんし。
「樹は星羅の文化祭行くの?」
「当たり前です。僕が姉様のアクセサリーショップに行かないわけがない。」
ベタベタはしなくなったが、まだ姉思いの可愛い弟だ。
「あら、それでは一緒に文化祭回る?私のクラスは時間交代だから」
「いいのですか?姉様は紫藤様や琥珀院様と回るのでは?あと、姉様の好きな人とかと、、」
げ!なんであいつらと!一般公開で回るなんて目立つではないか!翠斗くんとは生徒のみの文化祭で回ろうと誘う予定だ。
「樹より回りたい人なんていないわ。こんな寂しい姉様と一緒に回ってくれる?」
「うん!」
と言った樹のキラキラスマイルには小さい頃の面影があり、可愛すぎて抱きしめた。でももうキスはさせてくれない。寂しい。
「あ、お兄様。鈴蘭てなんですか?」
「え?知らなかったの?高等部になったら学園から名指しで家柄やマナー、教養を選抜されたメンバーが発表されるんだ。まぁ、だいたいが、イリスの会にいる人たちだね。人数が決まっているから毎年メンバーの発表があって、ちょっと変わったりするんだ。まぁ、五代名家は心配ないよ。学園版アイリスみたいなもの。色々なところで特権があって優遇されるから、便利だよ」
鈴蘭の名前の由来はジャーマンアイリスに似ているから、らしい。高等部にサロンが備えつけられていて、いつでも軽食やお茶菓子が食べられるそうだ。ラーメンはないらしい。
特権というのは食堂でも鈴蘭のメンバーのみが使える二階席が設けられていたり、大抵のことは優遇されるようだ。二階かぁ、そんなものあったかな?割と何も知らない私。
「お兄様は普段鈴蘭席でお食事なさっているのですか?」
「そうだね。あそこは静かで過ごしやすいしね。星羅も今度一緒に行く?」
「え!よろしいのでしょうか。私はまだ中等部ですし、、」
「まぁ、星羅なら大丈夫だよ。友達とかはあまり良しとされてないけど。僕も鈴蘭の1人だし、言ったでしょう?大概のことは許されるんだ」
毎年メンバーが変わるのが怖すぎる。そんな特権持っていたのに次の年メンバーから外れたりなんかしたら、、ひぇ!
「その都度変わるなんて、メンバーから次の年外れた方は大変そうですね」
「そうだね。去年確か成績を酷く落とし続けた先輩が今年はメンバーに選ばれなかったみたいだから」
「それは、何というか、、、怖いものですね」
「初等部、中等部にはないでしょ?だからコテージがあるんだ。あそこは学校も公認の鈴蘭予備軍みたいなところだからね」
へー。そうだったんだ。詳しい区切りとか全然興味なかったから知らなかった。アイリスのメンバーでもコテージ使えない人もいるのか。なるほど。ほとんど個室にこもっているから誰がいるとかもあんまりわかんないなぁ
そして誰がいるとか知らないなりにも高等部の人は見かけないと思ったら高等部には鈴蘭のサロンがコテージの代わりにあるんだね。私は個室派なんだけど、サロンに個室、あ、ない?あ、そう。
「姉様、僕でも知ってましたよ。」
え!そうだったの!教えてよ〜!
そして土曜日。緋津華との待ち合わせ場所に行く。携帯は買い換えた。
無事合流した私たちはアイリスで使う会場や、料理などの話を詰めていった。
会場は近くだったこともあり、直接見学して予約しといた。五代名家主催の時は今までの会場は何となく避ける。と言っても割と同じところが使われることは少なく、いつもアイリスの会の為に各地に行かなくてはならないからちょっと面倒くさい。
いっそ瑠璃坂の家の近くに絞ってほしい。
緋津華は流石というか紳士だ。道路を歩く時は外側を歩くし、荷物は基本緋津華がもつ。スマートなヤツめ。なんか気に食わんぞ。
「少し休むか」
と喫茶店に入る。いつの間に予約したんだ。ドレスコードとまでは行かないが、煌びやかな喫茶店。
「それで、話なんだが」
話?アイリスの件はもう終わったでしょう?
私が不思議そうな顔をしていたためか
「話があると事前に伝えていただろう」
と言う。そういえばそうだったけど、てっきりアイリスのことだとばかり。
深刻そうな表情をする緋津華。面倒事はやめてね?
「今まで誰にも話したことがなかったんだが」
そのまま誰にも話さずに隠していてくれ?そんな重そうな話は聞きたくない。
「俺は人とは違う能力を持っているんだ」
「、、、、、、、、」
「小さい頃から、最近は段々と治ってきているんだが、人の心が読めるんだ」
「、、、、、、、、」
「瑠璃坂なら信じてくれると思って。不思議と瑠璃坂は気持ち悪くならないんだ。だからパーティーではいつも一定の距離間は取りつつも近くになるべくいるようにしている」
「、、、、、、、、」
私は紅茶をゆっくりと飲んでソーサーに置く。
「緋津華様。それは病気ですわ。」
「は?」
「思春期の男女問わずなってしまいがちな病気。そして人によっては治ることは一生ない不治の病に近い病気です」
その名を厨ニ病という。
「いや、俺は、、」
「何も言わずとも大丈夫です。私には分かりますとも。誰も持っていない力があるのですね。特別な存在なんですね」
「あ、あぁ、そうなんだが、」
「皆まで言わずとも分かりますわ。悪の組織と戦っておられるのですね。右手は疼きますか?手より目でしょうか?心眼の持ち主ですものね」
「え、いや、、」
「病気という自覚があるのならば、思春期心療内科をオススメしますわ」
「、、、俺は病気ではない!」
どうやら重症のようだ。
「あぁ、怒らないでくださいまし。そうですわよね。病気ではございませんわ。選ばれし存在ですわ。そしてどこにいても自分には居場所がないと感じていて、独りなんですね」
「ど、どうしてそれを、、」
分かりますとも。分かりますとも。
「あら、迎えの車が来てしまう時間ですわ。それではごきげんよう。心眼の覇者さん?」
私は迎えの車へと歩く。無口なやつというものはロクな奴がいないなぁ、まぁ、優しい私はしばらくお付き合いしてあげましてよ。ふふふ。
「人の、、話を聞け、、、」
ポツンと残された緋津華朱莉嘉は項垂れていた。




