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食堂事件の後、私は家でこってり絞られた。よく考えれば後が怖いのは分かることなのになぜ遊び心でお兄様をからかってしまったのか、、
心より反省しています。いや、もう、本当。
でも、翠斗のことはお兄様に特に何も言われなかった。絶対反対すると思ったんだけどなぁ。ま、されないにこしたことはないので聞かないが。しかしその後お兄様から山のように送られてくる美しき家族愛の小説で部屋は埋もれてしまった。読みきれません、、
あ、そうそう。食堂でお兄様が奇声をあげていたことは誰も見ていなかったらしく、急に奇声が聞こえる、というホラーな噂となって私の耳に聞こえてきた。食堂の利用者が減ったらごめんなさいっ!私が翠斗とたくさん使うから許してね?
あれ以降も定期的に翠斗とお昼を過ごしている。紫藤や、琥珀院がうるさいかな?と思ったんだが別になにもなかった。私が思ってるほど私に執着してないのかな。
「星羅。成績表見に行くか?」
「そうですね、一応見ておきます。」
紫藤と一緒に成績表を見に行く。中等部からは上位は成績が貼り出されるのだ。初等部では三角、丸、二重丸の三段階評価だったのでみんなの成績がどれくらいなのか分からなかったため、ちょっと楽しみでもあった。私?死に物狂いで勉強したので問題ない。
ちなみにこの間の英語小テストでは吉本が先生から「君なりでいい。答えをまっている」と返ってきたのが見えた。先生かっこいい。
ガヤガヤする中でも私達が歩くと皆がよけてくれるので歩きやすい。あ、私の懐かし取り巻きちゃんたち発見。サラッと挨拶をして成績版に向かう。
私たちが成績版の前に立つとザワザワがより一層うるさくなった。
1位 緋津華 朱莉嘉
1位 琥珀院 蓮
1位 紫藤 桐
1位 瑠璃坂 星羅
、、
、、、、、、ねぇ、これ私4位に見えない?
名前順だと私4位に見えない!?1位だよ!私も1位だよー!!!!!
くそ!「ン」の書き方が「ソ」に見えるからって国語で三角のところがあったんだよ、あれをしっかり書いていれば、、!
「同率首位だぜ、、」
誰かがぽそっと言った。そうだよ!そうなんだよ!私まで1位なんだよ!よく言った!
「星羅。1位おめでとう。」
琥珀院がこちらに近づいてきた。
「あぁ、星羅も1位か。4位に見えた。」
紫藤〜!しばきあげるぞ!てかよく君が1位だったな!さては勉強出来るバカか!?
「お二人とも1位おめでとうございます」
「あぁ。国語でンをソと間違えられなければなぁ、、」
紫藤!お前もか!仲間〜〜!
「あー、あそこで三角の人結構いたみたいだね。僕は大丈夫だったけど」
自慢か?そういえばこいつ初等部の頃書き初めで賞とってたな。字が綺麗なのは頷ける。
3人で談笑していたら、緋津華が壮大な取り巻きを連れてやってきた。
「まぁ!緋津華様!1位ですわ!」
「さすが緋津華様!私達の王子!」
緋津華軍団(星羅命名)が私達を押しのけてワイワイしている。いやいや、私達も1位だよ?緋津華がこちらに気づいて挨拶しに来た。
「同率首位だな」
「そうだね。次は負けないよ」
「俺も、次は負けない」
男同士の熱い握手が交わされる。周りから「きゃぁ!!」と声が上がる。ねぇ、その握手、私も入れてくれない?
あ、まただ。緋津華と目が会う、1秒にも何時間にも感じられるこの感覚。
「星羅。戻るぞ。」
ハッと私は現実に戻り紫藤と教室に帰る。
「星羅は緋津華と仲がいいのか?」
え?別に?目が合ってるの見られてたかな?そういえば緋津華と目が合ってる時、必ずと言っていいほど紫藤に声をかけられるわ。これは見られてたな。
「会えば、ご挨拶はしますがこれといって仲がいいわけではございません」
目は会うけど、実際に話したことは挨拶くらいだし、間違ってない。
紫藤がじっと見つめてくる。
これは見極めてるんだろうなぁ。私が緋津華に興味あるかどうかを。目は口ほどに物を言うと言うけれど、紫藤はまさにそれ。声として聞こえてきそうなほど想いを込めた目をする。
紫藤はくしゃっとした顔をした後「そうか」と言って席についた。
今のくしゃって顔に私はちょっと苦しくなった。
放課後、私が物思いにふけりながら車に向かっていると、ギャップで男を落とす、といった大変興味深い話をしている女子たちがいた。
「やっぱり、殿方はギャップに弱いんですわ!ギャップに!」
「あー!確かにわかります!普段はそっけないけど、2人のときは甘えん坊さんとかですわね!」
「あとは、メガネ外したら美人とかですわね!」
女子4、5人でキャイキャイしている。
「まぁ!◯様なんて細身なのに結構なお胸じゃないですか!ギャップですわ!」
「まぁ、△様だって、ふくよかですが、絶壁のお胸じゃないですか。ギャップですわ」
「、、、、、、、」
戦争が起きるかと思った。
それにしてもギャップねぇ〜。私の天使な見た目で口が悪いのもある意味ギャップ?




