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授業が本格的に始まった。
「星羅様、素敵、」
「カッコ良いわ!!」
「まさか、運動ができるなんて、、」
今は体育
授業中、50メートル走で女子1位を獲得した。
ふふふ?話しかけくれても良いのよ?
「星羅、何秒だった?」
紫藤が声を掛けてくる。私、最近紫藤とばかりいる。いや、私自身は孤高の女というのもいいなぁっと思っているのだが、私が1人となると、しめた!とばかり紫藤が話しかけてくるのでほぼ紫藤と行動を共にしている状態にある。新しい取り巻きも友人も出来ない。
、、、いや、私も1人が寂しくて普段より紫藤に話しかけているが。ぼっちは寂しい。
「7.2秒です」
「わかった。」
その後、紫藤は学年でもトップクラスのタイムを出した。さすが、腐っても五代名家というやつか、、!!
そしてこの体育の授業、3クラス合同なのだ。そのため、3組の緋津華も一緒になる。
緋津華は紫藤よりもちょっとだけ早かった。
丁度走り終えた緋津華と目があった。まっすぐ反らすことなくこちらを見てくる。私もなんとなくぼーっと緋津華を見ていた。しばらくの間私達は目を合わせていた。
緋津華とはイリスの会でも度々こういうことがある。かといって話すわけでも無く、私のことを好きな素振りはない。星羅たん七不思議の一つだ。
「星羅」
「あら、紫藤様。なんですか?」
「今日ランチ一緒に食べるぞ!」
「今日は予定がありますのでまたいつか。」
「いつも予定があるじゃないか!いつ言えば空くんだ!」
「えー、来世?」
「、、、、、、」
生まれ変わって出直してこい!なーんちって。
そしてやってきた昼休み。私は表向きは優雅に心はダッシュで3年の教室に向かった。
「すみません、柏先輩いますでしょうか?」
皆様お忘れかな?柏は翠斗、私のダーリンだ。
「え!君、柏くんに用事?今日彼機嫌悪いからやめておいたほうがいいよ、何の用事かな?可哀想に、、」
さも同情の眼差しで対応してくれたお兄さん。いや、怖がられすぎだろう翠斗くん。
「柏くんに用事?呼んできてあげるよ」
私が困っていると、綺麗な女の人が話しかけてくれた。あ、この人翠斗くんの好きな人だ。遠目からでも綺麗な人だったけど、近くで見ても美人系。可愛い系の私とは正反対だな、と思うとちょっと心臓わしづかみされた気分になった。
「星羅?どうした?」
「翠斗くんとお昼食べようと思って。まだだったでしょう?入学祝いして?」
私は可愛らしく小首を傾げた。
翠斗は鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている。そんな顔も可愛いよ?
食堂に翠斗くんと向かおうとしていると、
「せ、星羅さん!」
と呼び止められた。この人イリスの会でも何回か見た顔だな。他にも男女問わず何人かいる。
「このような人と星羅さんが親しくするべきではありません!」
「そうです!貴方のような方にふさわしくないです!」
「噂ではとても凶暴で喧嘩ばかりしているとお聞きします。星羅さんに何かあってはと思うと心配です!」
えー。なにこの面倒くさいやつ。ちらっと横を見ると翠斗は感情の見えない顔をしていた。翠斗にこんな顔させるなんて、、!!許せん!
私は翠斗の腕に自分の手を絡ませた。
なっ!と声が上がる。
「では逆に私と親しくするような人とはどのような人でしょうか?」
と尋ねる。
「そ、それは、もっと家柄の高くて、悪い噂のない、、」
どもりながらも答えてくれた。
「私はそのようなことを家族にも教師にも教えて頂いたことはございません。いつ、誰が決めたことなんでしょうか?」
五代名家のこの私に指示できる人かしら?
「、、、、、」
男は黙る。
「で、でも、!私達は星羅さんが心配で!!暴力の噂はございますし!」
「心配して下さってくれたんですね。ありがとうございます」
私はニコッと微笑んだ。
「じゃぁ、、」
ホッとした表情をする彼らをよそに私は
「翠斗くん。翠斗くんは私に暴力をしますか?」
と翠斗に尋ねた。それまで傍観していた彼は一言「いや、しない」と答えてくれた。
私は翠斗くんに小指を出してもらい、私の小指を重ね、
「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます」
と約束した。
「これで問題ございませんね。心配ありがとうございました。では!」
今度こそ食堂に向かおうとした。
「いや!そんな口約束、、」
「そうです!子どものお遊びでは、!」
とまたギャーギャーいう彼らに
「あら、ご存知ありませんか?この約束を破った方は破られた方に、指を切り落とされ、拳万、すなわち一万回殴られ、さらに針を千本のまされるのです。そこまでされると分かってて約束破る方は少ないでしょう。でも、もしそうなったときは証人として協力お願いしますね?」
では!と爽やかな笑顔で私達はその場を去った。横で翠斗くんは
「知らなかった、、」
と呟いていたので、
「気軽に結婚の約束などを指切りしている子どもたちを見るといつも意味を教えたくなったのよねぇ!男の子!早まるな!ってね」
とお茶目にウインクしておいた。まぁ、口約束には違いなかったが、そこは突っ込まれなくてよかったよかった〜!
腕を組んだまま食堂に向かうとお兄様がこちらを見ながら、
「嘘だろ、、嘘だろう!?」
とブツブツ言っている。
私はちょっと悪戯心で、
「そろそろ兄離れをしないとですかね」
とお兄様に聞こえるように言うと、「そんな、そんなことが、まさか、そんなバカな、」とふらふらしている。常盤先輩と翡翠先輩がお兄様を捕まえて、食堂から連れ去るとき、お兄様の奇声が食堂に響き渡った。
翠斗に散々構ってもらってご機嫌で午後の授業を受けていた。
6限は英語だ。先生が吉本に
「昼飯は英語で何というか?」
と聞いている。
きゃ!私とダーリンが食べていたやつね!英語で言うと〜!ラーンチ!
吉本はわからないようで、黙り込んでいる。
「君がいつも食べいるものだ。それを英語っぽく言ってみて」
とヒントをもらって十数秒後、吉本から
「キューゥショーック(給食)」
という誰も予想しなかった言葉がでた。
うん、なんというか初等部までは給食だったもんね、、
その後の小テストに吉本は何一つわからなかったらしく、「答えのある人生なんていらない」と書いていた。斜め後ろの私は見えていたが、カンニングになるので止められなかった。先生の返事が気になる。とりあえず吉本が英語不得意なことがわかった。




