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嫌なことほどすぐ来るってねぇ。
はい、修学旅行になりました〜。
沖縄ですよ、沖縄〜!そして気付いた事実。私、どうやら乗り物酔いするようだ。横で紫藤がうるさいがもうそれどころではない。飛行機の中で嘔吐しないために必死で心を落ち着かせる。無だ。無になるんだ。ここで嘔吐しようものなら陰で一生、ゲロ娘なんてあだ名で呼ばれることは間違いない。
「暖かいのね〜」
「そうね、冬に来てちょうど良かったわ」
沖縄着きました。私は耐えた。
先にホテルに荷物を送るので、私達は手荷物くらいしかない。お嬢様って楽〜。
まずは水族館へ。
流石金持ち。貸し切りかよ。
ガイドさん達がそれぞれの魚のところへ立って説明している。
私は水族館あんまり興味ない。魚がどうでも私に被害も利害もないし。どちらかというと可愛い〜って言ってるクラスメイトを見て人間関係や、好みを見てる方が面白い。うちのクラスにも可愛いって言ってる自分可愛い、タイプの子達たくさんいるしな。そいつら見てる方がよほど面白いわ。
はい、捻くれてることは自覚してます。
「星羅様。星羅様はどのお魚が一番好きなんですの?」
「そうね、どのお魚も素敵だけど、「一番」はみなさんと水族館を楽しんでることそのものが一番ですわ」
嘘は言ってない。
「まぁ、星羅様ったらっ」
「星羅様と水族館を回れて私達も幸せです」
「俺たちだって!」
ぽっと頬を赤くする私の取り巻きたち。
可愛いのぉ〜。可愛いのぉ〜。
水族館を出ると再び班行動になる。商店街をぷらぷら。
あ、あれ可愛い。
あれも可愛い〜〜!
お、あれなんてお兄様に似合いそう。
「嘘、、」
ヤバい、はぐれた。
方向音痴だし、戻れる気がしない。携帯は一応あるけど、誰の番号も知らないわ、、瑠璃坂に電話するのは最終手段だよなぁ〜。
とりあえず元の道歩けば誰かしらには出会えそう。班違っても雪城学園の子に会えれば何とか安心だ。
と、思って歩いていたんだが、どんどん人気がなくなっていく。え、私こっちから来たよね?進めば進むほど人気もなければ狭くなっているし、人いても外国人が増えてきたように思う。まずい。私英語話せない。いや、ほんと、ここどこ〜!?
「はぁはぁ」
後ろから荒い息が聞こえてくる。
「ねぇ」
声をかけられて振り向いてみたら、雪城学園の制服の男の子だった。良かった〜!知らない人に襲われたりするかもってちょっと思っちゃった!
「あら、ご機嫌よう。あなたも道にまよってしまったの?」
男の子に尋ねる。
「はぁはぁ、星羅たん、はぁ星羅たん、」
まるで焦点の合ってない目で私を見ながら迫ってくる。
「星羅たん、僕の星羅たん、やっと1人になってくれたね、はぁはぁ、、」
嘘だろ。勘弁してくれよ。別にテメェの星羅たんじゃねぇよ。
私はモブでもヤレるって言ってたけど前言撤回。こいつとは無理です。脂がぎっとぎとでとっても太っている。目がイッってるし、何より魚顏だ。ひぃー!来ないで〜
とりあえず全速力で走る。デブは足遅いよね?ね!?
なんか飛んできた!!何これ、果物ナイフ!?普通に犯罪なんだけど!?
いってぇ!刺さった!!てかカスった!ガチで投げてんじゃんこいつ!!
私は恐怖のあまり足をもつれさせて転んでしまった。腰が抜けたのか全く動けない。
動け。動け!動け!!動け!!!私の体だろう!!私の言う通りに動いてよ!!!
追いつかれ、ヤツの手に持っている果物ナイフで横腹を切られる。痛みとかない。もう何が何だかわからない。これがヒロインだったら切られる前にヒーローの助けが来たのかな。ヤツは私の上に乗りかかり、私の手首を抑えた。
「はぁはぁ、やっと、やっとだ。はぁはぁ。ホルマリン漬けにして一生可愛がるからね。はぁ。」
苦しい。苦しい。降ってくるヨダレが気持ち悪い。床ドンはただしイケメンに限る、ということがわかった。必死に違うことを考えようとしているが私の体は恐怖で動かない。前世で痴漢にあってるっていう友達に、痴漢くらいでピーピー泣くなよって思ってごめん。本当に怖いんだね、こういうの。
「星羅たん、はあ、反応ないね。僕のこと受け入れてくれたの?はぁはぁ、嬉しい。はぁはぁ」
私は諦めて、今後身の振り方を何通りも考えた。
「ーーーん!!」
「ーーーさん!!」
「星羅!!」
はっ!
私、気を失ってた!?
目の前には琥珀院がいた。
「大丈夫、じゃないね?救急車よぼうか。」
「まってください」
私は辺りを見渡す。さっきの脂魚顏くんが横で伸びていた。琥珀院の他には誰もいないようだ。私の服はそんなに乱れてない。ふぅ、一命はとりとめたようだ。よし。
「怪我もかすり傷ですし、救急車は結構です。出来ればこのこと内緒にしていただけますか?」
「どうして?」
このことがバレたら、私はお兄様や樹に監禁されかねん。何より、
「今後、この人に襲われた人として周りから見られる日常に耐えられないからです。」
「なるほど、ね。」
「記憶にありませんが、危ないところをありがとうございました。どうしてここに?」
「あぁ、えっと、この先が僕の別荘なんだ。別荘の者から雪城学園の制服の子が近くにいるって聞いてね、この辺は迷いやすいし、1人だって言ってたから瑠璃坂さんじゃないかと思ったんだ。」
なんてラッキーもあったもんだ。良かった。今回のことで私に危険回避手当てがついてないことが判明したし、今後気をつけよう。
「どっちにしても、その格好だと騒ぎになると思うよ、別荘近いから血だけでも落とそう。」
血だけと言わず、あいつのヨダレも流させておくれ。
「助かります。でもその前に、」
私は脂魚顏のところにいって、ズボンとパンツを脱がせる。本人の手を股間に当てさせ、もう片方には果物ナイフをもたせた。ポケットに私の写真が入っていたので、それは回収して置く。
そしてその姿を私は携帯に収める。ま、こんなものかな?
「お待たせしました。さぁ、行きましょう?」
「、、、、、、」
別荘でシャワーを借り、手当てする。お腹以外は平気そうだ。お腹も見えない位置だし、大丈夫かな。制服はジャケットを琥珀院に借り、私のジャケットは破棄した。風に飛ばされて追っていたら迷子になって、ジャケットは海に落ちた、という設定だ。
無事にみんなのところに戻った。
そして夜。麻呂眉と、琥珀院のファンリーダーと私の3人部屋だ。
特に何か言われるということはなく、むしろ琥珀院のファンリーダーは琥珀院のことが知りたい見たいで、色々聞かれた。好きな食べ物?知らんわ。きっとカレーだよ。カレー。黄色レンジャーはカレーが好きって相場が決まってる。
そして寝静まった夜。
ブツブツと声が聞こえる。そっと起きてみると、麻呂眉が目を開けたまま、いびき、歯ぎしり、寝言とフルコンボしていた。
正直、脂魚顏に襲われるよりずっと怖かった。
次の日は社会科見学として、戦争時に使われたガマの中を体験した。
横にいた麻呂眉が説明のスタッフさんと全く同じことをブツブツと低い声で、まるで複製音のように話していた。
その後、麻呂眉はガマの中での記憶が一切ないと言っていた。
麻呂眉からは距離を置こう。もうからかったりしない。心に誓った。
帰りのお土産コーナーにて、紫藤が「シーサーの糞」というチョコレート菓子?を大量に購入していた。
ちょっとほっこりした。
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「私の父が洞窟や、歴史好きでガマ体験も何度か一緒に行っておりますの。丸暗記しているから私もスタッフと一緒に説明してしまいましたのよ?でも、自慢のようになってしまうからガマ出た後は知らないフリしておりましたの」
そういうことだったのか。




