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田中さんと山田くん  作者: 天夏 奏
6/6

切ない恋愛小説 【山田くん】

 屋上に吹き抜けた風が、俺と田中さんの髪を撫でていく。

 

 「俺も、なんか田中さんの前だと、何でも言える気がする」

 「そっか。……嬉しいです」

 そう言った田中さんは、こっちを向いて、こてんと首を傾けて笑う。

 太陽に照らされたせいか、田中さんの方を向くと、眩しくて目を細めた。


 「お弁当、美味しい」

 再び声を発した田中さんに顔を向けると、照れ臭そうに下を向いていた。

 きっと、一生懸命に話の話題を考えたりしていたんだろう。


 「そうだね」

 俺がそう答えると、また話は途切れてしまう。

 

 「田中さんは、本はよく読むの?」

 田中さんは黒色の綺麗な髪の毛と落ち着いた雰囲気で、側から見ていたら、読書を好みそうな清楚系な女の子と見れる。

 俺は本は結構好きだし、よく読むから、自然と口から零れていた。

 

 「……!!」こくこくこくこく

 田中さんの首が、上下にすごいスピードで動いている。

 どうやら、ものすごく好きなようだ。


 「好きなんだね」

 と聞くと、こっくんと大きく頷く田中さん。

 乱れた髪を耳にかけると、あなたもですか? というような眼差しで見つめられる。


 「俺も結構読むよ?」

 「主に読むのは__」


 「「切ない恋愛小説……」」


 二人の声が、風にのって消えていく。


 「山田くんも、恋愛小説を読むんですねっ」

 「何を読みそうに見えた?」

 「ミステリ、とか……」

 「ミステリも好きだけどね」

 そう言って笑いあう。

 本人は無自覚なのかもしれないが、途切れることなく会話ができている。

 それも、「相手が俺だから」という理由だったら、嬉しいと思ってしまうのだった。


 「あ……もう教室に戻った方が良いかな」

 暫くすると、俺は腕時計を確認して言う。


 「もうそんな時間ですか」

 と、膝にのせていた弁当箱を抱えて立ち上がった田中さんを見ながら、来たときと同じドアから帰る。

 お互いに読んでいる小説が一緒で、教室までの間も、その話は途切れなかった。

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