山田くんだからなのか。 【田中さん】
お昼を知らせる音楽が、教室いっぱいに流れる。
挨拶が終わると、待ってましたとばかりに、ロッカーへお弁当を取りに行きます。
すると、不意に目の前にあるロッカーの灰色が濃くなったような気がして振り向くと、そこには山田くんがいました。
「……」どこに行きましょう
山田くんに訪ねるように、自分のお弁当を目の前に持ってくる。
それを見て、うーんと考えた山田くんが、顔を明るくして答えます。
「そうだ、屋上に行こうか?」
「わぁ……」
こうしてやって来たのは、涼しい風の吹き抜ける屋上です。
まだ桜の散りきっていない春の空は、青く透き通って、とても綺麗です。
「綺麗……」
それを見た私の口からは、思わず言葉が漏れました。
「ここで食べよう」
屋上には、三人ほどが座れるようなベンチが、二つ並んでいました。
そこに座って、風呂敷に包まれたお弁当を食べます。
「美味しそうだね」
そう言ってお弁当を覗いてきた山田くんのお弁当にも、美味しそうな卵焼きが入っています。
「山田くんのも、美味しそう……」
「じゃあ、交換しようか!」
そうして山田くんは、卵焼きと、私のお弁当に入っていたウインナーを交換してくれました。
「わ、山田くん、美味しいよ‼」
その卵焼きを食べた私の頬は、自然と緩みました。
山田くんの顔を見ると、何に驚いたのか、目を見開いています。
「どうしたの?」
聞くと、山田くんは少し微笑みます。
そんな笑顔も、綺麗だなと思います。
「田中さん、よく喋ってるな、と思って」
「……!!」
それには、私も驚きました。
人の前で沢山話すのは苦手なはずなのに。
なんでか___
「はっ」
心当たりのあるものに気がついた私は、またまた声を漏らします。
「ん?」
私が沢山喋れているのは。
そう、きっと___
「きっと、山田くんと居るからかな」
山田くんといると、自然と心が緩んでいることに、私は気がついきました。
「なっ___」
それを聞いてか、なぜかまた山田くんが頬を赤らめました。
それと同時に、二人きりしかいない屋上に優しい風が吹いて、その頬を撫でたのでした。