それが、田中さんだからなのか。 【山田くん】
親しく話せるような男友達も作っていない。
ボケッと時計を見つめていた俺の視線は、自然と田中さんの方を向いていた。
見るからに……何か考え事をしているようだ。
綺麗な黒髪のかかった頬は、ぷくっと膨れている。
授業中にも少し横目で見ていたけれど、何回かペンを落としていた。
「田中さん、何か考え事?」
聞くと、何か言おうとしているのか、口がパクパクと動く。
金魚かよ、と突っ込みたくなる。
「どうしたの?」
田中さんは、喋るのがあまり得意ではなさそうだ。
だから、俺はちゃんと聞いてあげる。
一番の、友達として。
「友達……らしい、事……」
田中さんは小さく口を動かして言うと、目を伏せてしまった。
「友達らしいことか」
言われれば、確かに友達らしいことをしてみたいと思う。
一瞬、ふと田中さんの方に顔を向けると、顔が少し明るい気がした。
本人は気がついていないようだが、もうキラキラと輝いている。
その時、近くのグループから、お弁当の話が聞こえてきた。
「……」ぱぁあああ
それを聞いた田中さんの顔が、更に明るくなる。
輝きも、増す。
話をしているグループの方に向けていた視線を田中さんに戻すと、こちらをじっと見つめている田中さんと目が合った。
弁当……
田中さんの言いたいことは、なぜだか、俺には自然と伝わってくるのだった。
「じ、じゃあ、お弁当……二人で食べるか」
女子と二人でお弁当を食べるなんてしたことがなかったからなのか、それとも、見つめられているからか。
それとも……それが、田中さんだからなのか。
熱を帯びていく顔を隠すように、俺は口元に手をあてた。