お弁当を食べましょう、一緒に。 【田中さん】
友達。
私と山田くんは、友達になりました。
しかも、一番の。
嬉しくて、何だか落ち着きません。
さっきの授業では、ペンを何回落としたことでしょう。
「……」うーん
何か友達らしいことがしたいなと、私は考えます。
私は、友達らしいことと言うのは何なのかわかりませんが、山田くんとは、本当はもっとお喋りがしたいと思ったのです。
「……」んー
うぅむ、と考えていますが、友達となると、やはり同じ話題で盛り上がって、馬鹿みたいにふざけ合うことなのでしょうかと、一人で妄想を膨らませてしまいます。
ですがどちらも、お喋りの苦手な私、ふざけられない私には出来ないことです。
「田中さん、何か考え事?」
そんな私を見てか、山田くんが再び話しかけてきてくれます。
山田くんは、私が黙っているときでも、ちゃんと見てくれているんだなと思いました。
そんな山田くんは、優しいと思います。
「……」友達……
人とお喋りするのが苦手な私は、山田くんとあまり目を合わせられません。
「どうしたの?」
それでも山田くんは、私の言葉をしっかり聞いてくれます。
「友達……らしい、事……」
私にとっては、それだけの言葉を言うんでも、少し気恥ずかしくなってしまって目を伏せます。
「友達らしいことか」
すると、近くのグループから、声が聞こえてきました。
「ねぇねぇ、お弁当、どこで食べる~?」
それを聞いた私の耳は、心と同時にピクリと反応しました。
「……」そうだ、これです!
「……」お弁当食べたいな、一緒に。
口で言うのが恥ずかしかったので、その代わりに、山田くんを見つめます。
「じ、じゃあ、お弁当……二人で食べるか」
山田くんの表情は、口元に当てられた手で隠れて見えませんでしたが、ほんのりと赤くなっていたような気もしました。
友達らしいこと。
二人で、お弁当を食べましょう。