入学式 【田中さん】
今日は入学式。
茶色い煉瓦の敷き詰められた道には、両脇にある桜の木から落ちた花弁が積もっています。
教室に入れば、ほとんどの席が埋まっていました。
全体を見渡してから、黒板に貼られた席順を見ます。
私の席は、一番後ろ。しかも、窓側。
窓側……窓から入ってくる風が気持ち良くて好きだから、嬉しいな。
「田中さん?」
「……」
突然、隣からかけられた声に、少しビクリと肩が揺れます。
話しかけてきたのは、隣の席の……
「山田くん……」
「あー、そうそう! 覚えてくれたんだ! 宜しくな」
話しかけられたときに、少しだけ、黒板に貼られた席順の名簿を見たのは内緒にしておこう。
山田くんは、少し茶色く染めた髪色をしていて、そのお陰か爽やかに見える顔は、女子である私が憧れてしまうほどに白く綺麗でした。
制服も綺麗に着こなしていて、そこらの女の子も、密かに想いを寄せているのではないでしょうか。
「ところでさ、」
そう言って、山田くんは頭をわしゃわしゃと掻きます。
改めて見た顔は、綺麗に整っていて、思わず見とれてしまいそうになりました。
「おれ、友達まだいないんだ。だから友達になってくんね? 一番の」
「一番の……」
「そ、一番!」
一番という言葉に、心がピョコンと反応する。
「田中さんって、いろいろと表情が変わるんだね。見てて、面白い」
「……」そうですか?
自覚がなかったので、首を横に傾けて聞き返します。
「一番って言ったときだって、目が輝いてた」
山田くんに言われた言葉に、目を見開きます。
そんなこと、言われたことがなかったから。
そんな私を見た山田くんは、「ほら、目が見開いてる」と言って笑います。
私は山田くんのように話すのは苦手だけれど、表情の変化にまで気がついてくれる山田くんとは、友達になりたいと思いました。