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いつもいるおばあさんとの思い出

作者: いさまた

朝霞台駅と北朝霞駅の間のベンチに座り僕は友達を待っていた。この日は心地よい春の日差しと風が吹いていて大学に行かずここでずっと寝ていたいと思っていた。周りを見ると読書を楽しんでいたり僕のように待ち合わせをしていたりと人それぞれ人生を歩んでいた。時計を見ると待ち合わせの9時まであと5分。まだかと思っているとあるおばあさんがキョロキョロしながら来た。


「まただ。」


僕はぽつりと呟いた。いつもこの時間になると必ずそのおばあさんがキョロキョロと人を探すかのように現れるのだ。一通り見渡すとベンチに座り本を読みだすのだ。



「おはよー。」


と遠くから声がしたのでそのほうを向くと友達が歩いて近づいてくる。僕は立ち上がりカバンを背負った。


「今日も時間ジャスト!」


「はい、はい。」


適当に受け流しおばあさんのほうをチラリと見る。まだ本を読んでいる。僕はそのおばあさんを後に大学に向かった。


「ところで、今日はプリント持ってきたよな。」


「さすがに今日は持ってきたよ。」


そう言い彼が電車で見せてくれたプリントは前回の講義のプリントだった。僕はそれに気づいたが彼のためを思いあえて教えてあげなかった。心地よい気温と電車に揺られたせいかうとうとしてしまう。


「おい、寝るな、次だろ。」


友達に起こされ、僕は寝ぼけながらも改札を出た。


「昨日何時に寝た?」


友達に訊かれ記憶を辿るが思い出せなかった。


「わすれたー。」


「忘れたってなんだよ。」


「わすれたはわすれたー。」



そんな感じに話しながら僕たちは大学へ向かい講義を終え明日がくるのだ。


その日は友達に用事が入り一人で行くことになった。電車を乗り換えいつもの待ち合わせ場所の朝霞台駅と北朝霞のベンチに着いた。

僕はいつもみているおばあさんのことが気になっていたためベンチに座り友達ではなくおばあさんのことを待った。

8時55分、いつも現れる時間になつた。


あ……」


おばあさんはいつも通り何かを探しているのか周りを見渡し、ベンチに座った。そしてカバンから本を取り出し読み出した。おばあさんの雰囲気によってそこだけ別の場所に思えた。おばあさんのことを見過ぎたためおばあさんが僕に気付いてこっちに向かってきてしまった。


「どうしたいんだい?」


とてもやさしい口調でおばあさんは話しかけてきた。


「あ、えーと……」


ぼくは正直に言うか迷った。


「いつもうろうろしていたのが気になってしまって。」


「あー、それはね、ある人を待っているんだよ、もう会えないある人をね。」


おばあさんはどこか寂しそうな表情をしていた。ぼくは少しでもその寂しさがなくなればいいと思い、遅刻ギリギリまでおばあさんとおしゃべりをした。


「ありがとね。」


おばあさんはとても明るい表情に変わっていたのでぼくはとても幸せな気分になれた。それから僕は時間がある時におばあさんとおしゃべりを楽しみ大学に向かう習慣になった。


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