私の彼氏は変人です。
「城野姫子、結婚して欲しい。」
このお話は、彼のこのセリフから幕を開けます。
私の名前は、城野姫子。
都内の学校に通う、高校一年生です。
今日、人生で初めてプロポーズされました。
といか、初めてで当然である、私はまだ15歳なのだ。
「ごめんなさい山内君。私は、まだ法律的に結婚できる年齢じゃないの。」
薔薇の花束を差し出したまま、石の様にかたまっている彼を尻目に、
私は遅刻してしまうと登校を急いだ。
「姫子、山内に告られたって本当?」
教室に着いた途端、これである。
どうやら、目撃者が結構いたらしい。
面倒なことになったなと胸中、ため息をついた。
「うーん、告られたって言うか…。良くわかんないや。」
そう言って、女友達をはぐらかし、私は次の数学の小テスト範囲どこだっけと話題をさっさと変えた。
私にプロポーズしてきた山内信司君は結構、学内で有名人だ。
見た目は、がり勉の眼鏡で実際に成績も良く、いつも学年上位をキープしている。
ただ勉強が出来る人と言うわけでもなく、サッカー部に所属していてレギュラーにもなっている。
学年は同じだが余り話したことがない私にはよくわからないが、少し変人の入っているがいい人らしい。
きっと彼は、勉強と部活の両立で疲れていたんだろう。
そう私は結論付けた。
「城野姫子、婚約してほしい」
「気持ちは嬉しいわ山内君。けれどよく知らない人とは婚約はできないの。」
そう思っていた所に、第2弾が襲来した。
婚約は年齢がいくつでもできるが、あまり話したことのない人とはいくらなんでもできない。
私はそう言って、指輪を差し出して固まっている彼をしり目にと登校を急いだ。
学校に着くと、やはり私と彼とのことが噂になっていた。
しかし、堂々としていると案外平気なものでつつがなく一日を終えた。
「城野姫子、俺と付き合って欲しい。」
そういった彼は何も持っていなかったが、その分私の目を真摯に見詰めた。
私はきょとんとした。
「山内君って、ひょっとして私のことが好きなの?」
「今までの俺の行動を何だと思ってたんだ!」
秀才の奇行だと思っていたとはまさか言えない。
そうして、私と山内君はお友達から始めることとなった。
少しずつ彼を知ることになったのだが、中々いい奴だった。
頭が良く、真面目で優しい。
少しじゃなくて、かなり変人が入っていたが惹かれて行くのに時間はかからなかった。
その後、暫くして恋人になったのだがどうしてほぼ初対面の時、プロポーズしたのか聞いてみた。
彼曰く、好きな女性相手に男性として責任を取りたかったとか。
うん、やっぱりこの人変人だなと思った。
そんな真面目で優しくて変人な彼と結婚して3年目になる。
彼は医者になり、私は専業主婦になった。
夫婦仲も良く、子供も男の子が生まれ、すくすくと育っている。
この子は夫にそっくりで、好きな女の子に将来いきなりプロポーズしないか心配している。
夫のように何度断られても、同じ相手にアタック出来るほど神経が太いとは限らないからだ。