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アネモネ  作者:
4/4

つかの間の休日

※ここからは個別ルートになります。

『鳥籠の中の鳥』わたしを表現するのにはうってつけの言葉だ。いつだって、そうだった…外で友達と遊ぶことを制限され、ろくに友達なんてできなかった。

いつか私は必ずこの鳥籠を自分の手で壊してあの広い大空へ羽ばたいてみせる。


久しぶりの二連休。という言葉に違和感を覚える人はいるだろう。でも、私たちの通っている学校ではよく聞く言葉なのだ。自称進学校にはありがちな土曜授業。月一ペースで行われる外部模試。そのせいで今月は学校もあと少しで終業式という12月の第三週になって始めて二連休にありつけたというわけだ。

(まぁ、終業式が終わったからといって学校にこなくていいというわけではないんだけどね…)

今日は特にこれといった予定もなかったので取り敢えず、ぶらぶらと散歩にでも行こうと思って早起きしたしだいである。時刻は8時34分、冬の朝の散歩にはちょうどいいくらいの時間だ。ベッドから体を起こして、リビングへ向かう。リビングにはすでに両親が朝ごはんを食べてた。私は二人に朝の挨拶をして、顔を洗いに洗面所に向かった。

鏡に写った自分の顔を見て一言。

「もっと、美少女に生まれたかった…」

こんなことを言っているといつも悠奈と翔平君には

「わけがわからない…君の美少女という言葉の概念が色々とおかしい。」

なんて言われてしまう。洗面器に水をはり、髪の毛を後ろで一つ結びにしてから冬の日には辛い水を顔に浴びる。これでようやく目が覚める。洗顔用クリームをつけて再度水を浴びる。洗顔が終わり横にかけてあるタオルで顔を拭く。乾いたタオルが実に気持ちいい。改めて、鏡の自分を見ると。そこに写っていたのはなにやら悪事を子供がいたずらをする前のような顔をした一人の少女だった。よく見て見ると、それは私だ。すると、鏡の中のもう一人の自分が私に語りかけてきた。

『あなたはそれで満足なの?何か心の奥底に秘めているものがあるんじゃないの?』

「なにが言いたいの…?」

『貴方がその気になれば、案外すぐいけちゃうかもね…期待してるわ…』

そういってまた、鏡の中のもう一人の自分はまた元の自分へと戻っていった。

(一体なんなのよ…)

答えが見つからない。リビングに戻って紅茶でも飲んで落ち着くしかない。

リビングに戻ってストレートの紅茶を飲む。朝の至福の時、これが朝の私のスイッチでもある。ママは既に食器を洗い始めている。だからと言って、食べるスピードをあげるわけでもない。食事は基本的にマイペースだ。しかも、食べるスピードはかなり遅い。

食事を終えて、流し台に食べ終わった食器をおく。ママは買い物に、パパは仕事に行ってるのでこの時間にこの家にいるのは私一人ということになる。散歩に行きたかったけれども、家に誰もいない状況を作るのはママからダメと言われてるのでママが帰ってくるまで散歩はお預けというわけだ。リビングにいてもやることがないので自室に戻る。自室に行けば多少の暇つぶしにはなるはずだ。

私の部屋は割と綺麗だ。というか、綺麗にしている。一応、これでもクラス内での評判は清楚系女子なのだ。

(まぁ…裏はアレなんだけどね…)

椅子に座ってこれからのことを考える。まずは、紙とペンを出してお絵描きだ。いつものように好きな絵を描く。昔に比べると私もだいぶ上達した。いつかは自分のデザインした服を悠奈に着せたい、そんな野望だってある。絵を描き始めてから30分ほど立った頃だろうか、ママが買い物から帰ってきたみたいだ。私は描いていた絵をママに捨てられないように引き出しの中に隠した。ママに散歩に行くことを告げると、機嫌がいいみたいで快く許可してくれた。普段なら「勉強しろ」だの言ってくる人が珍しいこともあるものだ。地元をぶらぶらするだし適当に着替えて、スマホを持って外にくりだした。

12月の中旬ということもあってか、私の住んでいるこの田舎でもクリスマスムード一色に染まりだした。ケーキ屋さんのショーケースに並んだクリスマスケーキを見るだけでも心がウキウキする。甘いものに目がない私はついついお菓子を見ると気持ちが高ぶってしまう。私の散歩ルートは適当だから地元でもたまに道に迷うことがある。わざとやっているわけではない、でも、実は私、天性の方向音痴なのだ。しかし、今日は珍しく道に迷わなかった。珍しいことがこうも続くとなんだか気味が悪い。

散歩を終えて、駅の近くにある喫茶店に入る。ここでもストレートの紅茶をオーダーした。飲み物が届くまでの間にスマホでチュイッターを開く。

(この時間ならだいたいみんな浮上している頃だろう…)

案の定だいたいの人がいた。各々、久々の二連休を楽しんでるみたいだ。悠奈はまだ浮上してきてないがおそらく起きているだろう。何でわかるかって?もちろん、それは長年付き添ってきた人だからだ。本日の一言目を送信し終ったときに注文した紅茶が来た。

「おまたせしました、紅茶になります。ミルクと砂糖はお好みでどうぞ。」

ここの喫茶店の店員さんはみんなレベルが高い。制服だって可愛いし、高校卒業したらここでバイトをしたいなんて思う。運ばれてきた紅茶を口に含む。こう見えても、私、紅茶はストレート派の人間なのだ。普段の甘党っぶりからは想像もできないだろうが知っている人はしっている。

 紅茶を飲み終えお勘定を済ませて外に出る。スマホで時間を確認すると10時28分。

お昼ご飯まではまだ時間があったのでこれから何をしようか考えてると駅の方から見慣れた顔の女の子がやってきた。

 「沙織ちゃん、奇遇ねー」

我がクラスの委員長ここに降臨。実は、彼女と私は今同じ塾に通っているのだ。この時間からくるということはおそらく自習学習でもするのだろう。受験生予備軍として見習うべきなのだろうけれどもどうも私は勉強というものが好きになれない。

 「川島さん、自習?」

 「もーっ、相変わらずだなぁ…沙織ちゃんは…だから、祐希でいいって言ってるでしょ?」

私は人間関係の距離感に常に悩んでいるタイプの人間なのだ。

『近づきすぎてひかれちゃったらどうしよう…』

なんていつも思っている。だから、委員長の川島さんにしてもある一定の距離感を保って接している。

 「えっ…でも…」

 「『でも』じゃなくて、私たち友達でしょ?」

 「ま、まぁ…」

 「だから、これからは祐希って呼んで?」

 「わ、わかった…それじゃぁ…ゆ、祐希?」

「何?沙織ちゃん。」

「えっ…あっ…そのー…」

川島さん、もとい祐希は私が困惑しているのをうれしそうに見ている。やめて欲しい。助けてください。

 「なんでもないわよ…ただ、沙織の名前を読んでみただけよ。」

意地悪だ。でも…悪くないかも。

 「じゃ、私は塾行くからまたねー沙織。」

祐希の背中が離れて行く。私はそれを彼女の背中が見えなくなるまで見送った。

祐希と別れて家に帰るとママが昼食の準備をしていた。

「ただいま、ママ。」

「おかえりなさい、沙織。ご飯もう少しでできるから手洗ってきなさい。」

 「んー、わかったー。」

そう言われて、洗面所に向かった。また今朝のことが思い出される。

 (もう、あんなことは起きないよね…)

手を洗い、鏡で自分の顔を確認する。うん、大丈夫、私の顔が写ってる。一安心して、自室へ戻る。もう、今日はこれ以上外に出るような用事もないので部屋着に着替えた。ママの昼食の準備が済むのを見計らって自室から出る。

 食卓についてテレビをつける。ママと二人でご飯の時は基本的にニュース番組しか見ない。今日もいつも見るお昼のニュースの時間だ。いつものようにニュースキャスターが昨日今日あった事件などのことを話している。

 『昨夜未明、○○県××市で二十代の女性が殺害されているのが発見されました。警察は被害者の女性と交友関係のあった男性と連絡が取れなくなっていることから、現在警察はその男性の行方を追っています…』

「○○県××市ってこのあたりよね…物騒な世の中だわ、あなたも気をつけなさいよ、沙織?」

「えっ、あ、うん」

話をちゃんと聞いてなくて曖昧な返事をする。まぁ、私みたいに家からの行動範囲が狭い人に限ってそんな事件には巻き込まれないだろう。不審者に自らついていくなんて馬鹿なことはしないし。もしものことがあっても、ある程度の対処法は心得ているつもりだ。

 午後の予定を全く考えていなかった。勉強する気にもなれないし、どこかに行く気も起きない。そんな日はいつも自分の部屋にこもって夕食の時間になるまでスマホかお絵かきが私の普段の姿だ。ここのところたまっていた衣装のアイデアを形にするいい機会だと思って昼食を食べ終わってから自室に籠った。自分が受験生予備軍だということはこの際気にしない、今が楽しければいいのだ。引き出しの中に入ってたノートを取り出して、頭の中にあるイメージを紙に描く。もう何年も続けてきた作業だ。このノートには自分の昔の黒歴史もつまってる、他人なんか見せられたもんじゃない。全意識を一点に集中させる…そしてペンを動かす。

どれくらいの時間机に向かっていたのだろうか、描き終えた頃には既に5時を回っていた。この集中力が勉強に向いてくれればどんなに楽だろうかと思いながら大きく伸びをする。冬になるとこの時間になると空はもう暗くなってしまう。橙色の空が地平線に沈んでいく、それをわたしはずっと眺めていた。『きれい』という言葉でしか言い表せない自分の語彙力のなさにはうんざりさせられるが、そうとしか言えないほどの光景だった。


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