46・異世界から帰還
オーディンさんの話を聴き終えた私は、サトリさん、メアリーちゃん、ディナさんがオーディンさんの能力で創り出された人形だと知り驚きました。蜥蜴人間は知らないので置いておこう。じゃぁ、結局のところオーディンさんは何者なのかと聞きくと、返ってきた言葉は
「力を持った幽霊ってな感じ?」
可愛く舌を出して言われました。ノリが軽いなと思いつつ。それから、私は気になること全てをオーディンさんにぶつけます。なぜ、世界征服的な事をしようとしたのか、なぜ、私たちを襲ってきたのか
「世界征服的じゃなくて、サトリやメアリー、ディナは私が創り出したから、その私の体の一部みたいで」
オーディンさんは創り出したサトリさんやメアリーちゃん、ディナさんと共に楽しく過ごしていましたが、やはり、心の奥底ではまだ寂しさがあったらしく、その心情を読み取った3人は私たちが住む世界にいる能力者を捕まえてこっちに住まわせようと考えたらしい
「オーディンさんはここから出られないのですか?」
「そうなの。出ようとしたこともあったけど、出られなくて」
どうやら、オーディンさんはこの世界という鳥籠から出られないそうです。そんなオーディンさんに私は聞きます
「ディナさんが、人間に能力を複数与えて暴走させたのもオーディンさんの指示で?」
「何それ?」
えっ、知らないの?とぼけているようにも見えないし。なら、これはもしかして。ディナさんはオーディンさんに創り出され意思を持った人形。だから、これはディナさんが勝手にやったことなんだと思いました。その事をオーディンさんに言うと、頭を抱えて、能力を無理やり入れられた人のその後について根掘り葉掘り聞かれました
「ここに来ず能力を複数貰ったなら、その人は大丈夫なの⁉︎」
「命に別状はありませんよ」
何てことを話して、私はいよいよ本題に入ります。本題は私が最後に願った事とオーディンさんが願った事がなぜ、同じなのか
「私は最後に能力なんて、消えてしまえば良いと願いました」
「うん、その願いが今の私の願いと同じなの」
オーディンさんが言うには。ある日、突然、空から声が聞こえてきたらしい、また、訪問者かなと思ったオーディンさんは空によく耳を澄ますと聞こえてきた言葉は悲しいものだった
「能力は私が創ったから、たまにだけど、与えた人の心情が読み取れるの」
そう、聞こえてきたのは以前、オーディンさんが能力を渡したうちの一人だったらしい
『能力のせいで、オレはこんな目にあったんだ』
『これなら、能力なんていらない』
『普通の生活が送りたい』
『不便だ』
などなど、オーディンさんは良かれと思い能力を与えましたが、実際は余計なお世話なんじゃ無いかと思ったらしい。私も能力なんてなければ普通の生活が送れたのにと思ったけど、心の奥底では能力があったおかげで仲間にも出会えたし、良い面もありますよとオーディンさんに伝えました
「ありがとう」
「いえ」
「でも。私ね、よく考えたんだ」
このまま、この世界に訪れた人に能力だけを与え続けて良いのだろうか。中には能力を与えたせいで苦しむ人がいる。それなら、いっそ、能力を与えない方が良いのかもしれない
「それにね、生前出来なかった事が出来て満足だし、2度目に来たあなたが私のことを思い出してくれたから、もう充分なの」
だから、もうお終いにする
そう、オーディンさんは言いました。付け加えて、オーディンさんは自分のことを覚えてくれる人は私だけで良いと
「この世界を消そうかなって思って」
「そしたら、サトリさんたちは」
「今は能力を抜き取って別の場所で待たせているわ。この世界を消す時に私もそこに行くの、例え人形でも私を大切に思ってくれたから、最後は一緒よ」
と言うことは、成仏的な感じなのかな?あれ、ちょっと待ってよ。能力を創り出したならオーディンさんが消えれば能力も消えるんじゃない?そんな事をオーディンさんに話しました
「ある程度、能力の力は弱くなるけど完全に消えるって言うことじゃないの」
「そうなんだ」
「だから、あなたには私のが与えた能力で苦しむ子達を助けて欲しい」
そう言って、オーディンさんは私の頭の後ろに両手を回して自分の頭にくっ付けます。いわゆるこれは頭コッツン。痛みは無かったけど何かが頭の中に入って来るような違和感はあって気持ち悪かった
「能力を消す能力。使い方は自然と分かるわ」
「自然と」
「それと今、能力がある子達はあなたが関わってきた子だけよ」
「それは、島崎さんたちのことでしょうか」
「そうよ」
あれ?それなら…
私があと少しで何かが閃きそうになった時、能力を貰ったからか、体が軽くなって行く感じがしました。これは、自分の体が元の世界に帰ろうとしているのでは?それじゃぁ、オーディンさんとはここでお別れ
「最後にあなたと話せて良かった」
「オーディンさんっ!私、絶対に忘れませんからね!」
「ありがとう」
最後に見たのは笑顔で涙するオーディンさんの顔。そして、次の瞬間。目の前に真っ暗な闇が広がり、急に眠気が襲ってきて、私は抗うことなく目を閉じました




