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45・オーディンの過去②


オーディンさんが目を開けると、目の前は真っ暗で宙に浮いている感じでした。そして、やっぱり自分は死んでしまったのかと改めて自覚した。それなら、ここは天国?いえ、天国ならこんな真っ暗ではないからきっと地獄なのだろう。きっと最後に正当なルートで隣国に行かなかった罰なのだろうとオーディンさんは考えました


そんな暗闇の中でオーディンさんはみんなはちゃんと隣国に行けたのだろうか?メアリーの脚の傷は治ったのか、神父様や大切なディナは生きているか、貧しい方々は今、幸せなのか。自分のことよりも人の事を思っていたそうです


そして、最後に自分が滝壺に落ちる時に思った事をを思い出しました。『みんなごめんなさい私の勝手な行動を許して。隣国へ無事に辿り着けたみんなが今度は幸せな人生を送れますように。それと、これくらいしか力になれなくてごめんね。私にもっと力があれば、みんなに平等に食べ物とか暖かい場所を提供できたのに、この国を変えるほどの力さえ私にあれば、みんなを救えたのかもしれない。1つ1つの願いを聞くことができたのかもしれない』


「願いを叶える力があれば良かったのに」


そして、今度生まれ変わったら安定した生活ができる綺麗な世界で生きたい。そう思いながら再びオーディンさんは目を閉じました





目を閉じてからどれくらい経ったのか、急にまぶたの裏が明るくなりオーディンさんは思わず目を開けてしまいました


「ここは?」


目を開けると飛び込んで来たのは雲ひとつない青い空と大地、建物も花も一切ない茶色の大地だけがあったのです。訳が分からない。でも、もしかして、歩けば誰かに出会えると思ったオーディンさんはとりあえず一歩、足を踏み出しました


でも、歩いても歩いても大地が続くばかりで一行に、誰とも出会えません。それに、この殺風景な地面を歩くとなんだか、心が折れて来ました。早く誰かに会いたい、淋しい。そんな思いがだんだん募ってきます


「せめて、この大地がお花畑だったら良かったのに」


すると、オーディンさんの足元から円を描くように地面から色とりどりの花が咲き出したのです。またも、頭の中が真っ白になったオーディンさんはその場にへたり込んでしまいました


「何これ?」


オーディンさんの頭の中は驚きと共にとある可能性があると考えました。そして、試しに恐る恐る口に出したのです


「湖」


案の定、オーディンさんの近くには小さな湖が現れます。オーディンさんも子供ではないのでこの状況を一瞬で理解しました


「リンゴの木、街、神殿」


鳥、花、蝶。そう、望んだものが現れる。そう理解したオーディンさんはこの世界を美しく綺麗な世界へと変えて行きました


でも、なぜ自分がここにいたのだろうかと言う疑問はあります。でも、それは暗闇の中で自分が生まれ変わったら安定した生活ができる綺麗な世界に生まれ変わりたいと願ったから


「ここは、私が生まれ変わった世界なのかな?」


神殿の外にある湖でオーディンさんは自分の姿を見ました。顔は生前と変わらない、服は生前、着てみたかった服をきている


「もしかして、死ぬ前に色々強く願ったから、今があるんじゃないのかしら」


そして、オーディンさんはこの考えに至ったと言うわけです










オーディンさんがこの世界をユグドラシルと名付けました。名前の由来は、平和の世界樹と言う意味だそうです。


そして、この世界にも慣れ親しんだ頃。花も水も食べ物もある、生前よりもずっと素敵で良い場所が作れたとオーディンさんは思っていたのですが、ただ一つだけ、ただ一つだけ出来ないことがあったのです


それは、生きている人間はこの世界に作り出せない。生きている蝶や鹿、動物は出せてもなぜか人は出せない。だから、オーディンさんは一人寂しく過ごしていたその時、空の方から突然男の『力が欲しい』という低い声が聞こえてきました。その声はだんだん近づいて来て空から何かが神殿の西の方に落ちて来たらしい


オーディンさんは駆け足で向かうと、そこには、目つきが鋭く威圧感がだだ漏れの男がボロボロの姿でその場に座っていたそうです。この男の特徴とこの世界の構造を知っている私は、一発で男の人が島崎さんだと気付きました


「あの、大丈夫ですか?」


オーディンさんが島崎さんに声を掛けると島崎さんは呻きながらよろよろと立ち上がりました。そして、突然オーディンさんの肩を掴むと押し倒したらしいです


「妻は!娘は⁉︎」


落ち着いて話して下さいと言ったオーディンさんに島崎は呼吸を整えてから話し始めました。すると、どうやら先程、交通事故にあってしまい、目を瞑って、次に目を開けた瞬間、ここにいたそうです。


「オレはこんな所にいる場合じゃない、早く妻と娘を助け出したいんだ!まだ、あいつらは車の下に下敷きになっているかもしれないんだ」


そんな、島崎さんにオーディンさんの心情は動きました。なんとかして、この人を元の世界へ返したい。そして、この人の家族も助けてあげたい。生前、自分の力不足て救えなかった人達の代わりにこの人を救いたい


「そうだ」


救うためにはどうすれば良いのか考えたオーディンさんの頭には自然と方法が思いつきました。それは、オーディンさんの能力である、何かを創り出し与えるという能力。島崎さんがこの世界にやって来た時、空から『力が欲しい』と言う声が聞こえた。だから、オーディンさんは自分の能力で、怪力?そんな能力を創り出し島崎さんに渡したそうです


「うわっ!」


初めて作った能力の形は私に渡した丸い飴玉のようなものじゃなくて、水のよう透明な液体が入った小瓶だったらしい。それを島崎さんは野生の勘か何かを働かせ、勢いよく飲みました


「ありがとう」


「はい、お役に立てれて良かったです」


すると、島崎さんは足から透けるように消えてしまいました。また、一人残されたオーディンさんは今の出来事がまるで夢のようだと感じたそうです。そして、次から次へと人がやって来ました。



その人たちの特徴を上げると、どうやら、命に関わるような事故があった後、ここに来ると言う共通点があったのです。それと、この世界に人が来る時は必ず、空から願い事が聞こえる


「ここを別の世界だと考えて、向こうの世界で誰かが亡くなる直前、願いを強く思えばここに来るって言うことなのね」


もしかして、これは自分が死んでしまう直前に願いを強く思ったことと関係があるのね。とオーディンさんは思いました。そんなある日、またも空から願い事が聞こえてきました。しかし、その声は以前にも聞いたことのある声


「あなたはロイ!」


オーディンさんは以前にも来たことのあるロイさんに声を掛けるとなんとロイさんはオーディンさんの事を覚えていないと答えたのです


「すまないが、私はあなたを知らない」


「あっ……そう…ですか」


この世界でひとりぼっちのオーディンさんにとって、忘れられることはショックでした。そして、前の時と同じようにロイさんに能力を渡してロイさんが消えた後、今までの淋しさが爆発したのか、涙が溢れて来た。それと同時に世界がじわじわと黒くなってきたらしい


「まさか」


この時、オーディンさんは自分の感情で世界が変わると知りました。それと、オーディンさんが送り出した人々は向こうの世界に行くと自分を忘れてしまう。生前、出来なかった人々の願いを叶える夢は叶えられた。でも、それ以上に今は淋しい。誰かと一緒にいたい。次第にその気持ちは膨れ上がってきました







そんな時に出会ったのが私。だから、私に「ねぇ、すごい私のわがままなんだけど、もしあなたが良かったらここで一緒に暮らさない?」なんて事を言ったそうです


あと、私の時に関して言えば。オーディンさんは私の願いを空から聞いた時に、空には私のこれからの未来の姿が見えたそうで「だって、あなたの家族は……もう」と、言った


私がロイさんたちと同じく自分の世界に戻った後、オーディンさんは寂しさのあまりまた、泣いたそうです。そして、とある案が頭に浮かんだらしい


「人形でも良いから」


そして、オーディンさんは生前に関わった神父さまのサトリとシスター仲間のディナと最後に送り出したメアリーの姿を思い浮かべてあの3人を創り出したのでした。でも、人形なので、動きません。そこでオーディンさんは試しにサトリさんに能力を与えてみました。すると、動きだしたのです


「あの、あなた様は?」


「口調も姿もあのサトリ神父さまだわ」


こうして、サトリ、メアリー、ディナはオーディンさんによって意思を持つ人形に創られました。ついでに、私はまだあったことがないけど、蜥蜴人間(リザードマン)もいたそうです。それから、オーディンさんは長い月日を彼らと過ごしました

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