番外編:消える世界
番外編:研修2日目~小夜と拓真~の後くらい
今回はユグドラシルの方々です
異世界、ユグドラシルの街の中心にある大樹の下には神殿がある。そので暮らすのはユグドラシルを創った神様と崇められるオーディン
今、彼女はその神殿にある祭壇の前で一人泣いていた。彼女の気持ちと同調しているのか街の天気は嵐であり、サトリ・メアリー・ディナの仲間である蜥蜴人間のシュリは泣いている彼女の様子をおろおろと慌てながら見ているだけだった
「シュリ!オーディンさまになにしたの?」
すると、そこへ人間界から戻ってきたサトリ達が音も無く現れる
「むぅ〜せっかくメアリーちゃんがたねまきしたおはなばたけがなくなってるし」
「草木も枯れていましたね」
そう、この世界はオーディンが創ったのであるから彼女の心情で天気が変わり機嫌がよければ快晴、悪ければ雨なのだが、街が破壊され草木は枯れ街にいた生き物は全ていなくなっていると言うことは彼女の機嫌は最悪だとサトリは思った。それに、今までこんなことは初めてだとも思った。
「シュリ、オーディン様はどうして泣いているのですか?」
「オレは何もしていない!」
「本当に?」
「本当だ。サトリ、お前オレの心が読めるだろ。なら分かるはずだ」
サトリは能力を使ってシュリの心を読み取る。そして、シュリが嘘をついていないことが分かった
「シュリが失態を犯してオーディンさまを泣かしたのかと」
「最近、オーディンは俯きがちでしたけど」
「さすがに、ここまでないよね」
4人は祭壇の扉を少し開けて中を伺う。金髪でウェーブがかかった髪の女の人が三角座りで泣いている。その女の人こそがオーディン
「ディナ!しんでんのいりぐちがくろくそまってきた」
メアリーが指をさした方を見ると、闇が神殿の入り口あたりを黒く染めている。このままでは、この世界が消滅しかねないと危機感を覚えたサトリ達は、何とかオーディンの機嫌をとろうとドアを開ける
「オーディン様」
ディナ、メアリー、シュリよりも一歩前に出たサトリはオーディンに話しかける。声を掛けても反応がないためサトリはオーディンの側に寄ると跪いて背中をさすった
「どうなされたのですか?」
しゃくりあげながら、オーディンは言う
「なんで、私この世界を創ったんだろう」
自問自答しているような答えにサトリはなんと言って良いのか困り果てた。助けを求めるかのようにディナ達に目を向けても首を傾げられるだけであり、力にはなれなかった
「望まなければ良かった!願わなければ良かった!あの時、あのまま私は消えれば良かったんだ!私、みんなを巻き込んで…」
オーディンの悲痛な叫びは部屋にこだまする。ふと、メアリーが後ろを振り返ると入ってきたドアが真っ黒であった。ついにここまで来たかと驚いたメアリーは咄嗟にディナに抱きつく
「ことだまのおねぇちゃんがいたら、とまってたかな」
「どうでしょう」
「おいおい、本当にここ消えるぞ」
じわりじわりと迫り来る闇に打つ手は無し。オーディンが言う言葉の意味を理解できないサトリは、ただ、オーディンに落ち着いて下さいとしか言えなかった
「もう、終わりにしたい。この世界を消したい。でも、それをしたら人間界の子たちが」
「私たちはオーディンさまが創った者です。私たちに出来ることがあればなんなりと」
すると、迫っていた闇が止まる
「本当に?」
「はい」
目を赤く腫らしたオーディンはサトリにとある頼み事をした。それは、とても簡単な事である
「やっぱりもう一度、あの子に会いたい」
あの子と言うのは言霊使いの女の子だとサトリは分かった。徐々に闇が引いて行きいつの間にか外は闇ではなく晴れ晴れとした青空が広がっていたが動植物はない
「オーディンさまは言霊使いの能力が欲しいのでしょうか?」
「メアリーちゃんも分からないけど、そうかも」
オーディンとサトリから離れたところにいるディナとメアリーは微かに聞き取れる声だけを頼りに会話の内容を考えた
「それと、これは本当に私の身勝手な事なんだけど」
「はい」
「みんなも聞いてくれる?」
そして、オーディンは最後のお願いを伝えた
番外編:研修2日目~小夜と拓真~
でメアリーが言っていた
「メアリーたちはね。まちでたねまきしてきたの。で、いまはそのかえり」
の種まきは今回出て来たセリフ
「むぅ〜せっかくわたしがたねまきしたおはなばたけがなくなっているし」
と繋がっています




