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38・人は見た目によらず

どうやら、方向音痴な私たちは更に知らない場所に来てしまったようだ。ここはどこ?と言うか、船ってこんな狭くて薄暗い場所なんてあったかな?


「穴開けたら良いのか」


「祐樹さん!何を物騒なことを言っているのですか!」


「そうすれば出られるだろ?」


「出るも何も、ここは海の上なんですよ。穴開けたら海水が入って来て転覆の恐れがあるでしょ」


さっきから、祐樹さんとこんな会話を何度もやりとりしています。少し、いや、かなり話してきて祐樹さんという人物がなんとなーくわかって来ました


「なんでも、力尽くで解決しようと考えないで下さい!」


「その方が、手っ取り早い」


私から見た祐樹さんは実力主義ってな感じの人。それに、頭で考えるよりも先に行動するタイプ。性格は、目付きや雰囲気で怖かったけど何気、私の歩調に合わして歩いてくれている辺り、そこまで怖い人じゃないのかと思った


「なぁ、お前の能力ってなんだ?」


「【メリケンサック】」


手を目の前にかざすと、何もないところからマジックのようにメリケンサックが出てきました。それを、しっかりと握って祐樹さんに渡します。なぜ、これをチョイスしたのかというと


「祐樹さん、こういうの似合いそうですね」


うわっー。ものすごく嫌な顔された。それから、眉を八の字にして、私が渡したメリケンサックをポケットにしまいました。私はてっきり、投げ捨てるのかと思ってたから、この反応は意外です


「そういうのがお前の能力か」


「はい、ところで祐樹さんの能力って何ですか?私の予想では島崎さんと同じ怪力だと思うのですが…」


「話変わるけど、オレの事は祐樹さんじゃなくて祐樹って呼べ。さん付けされると寒気がする」


「はい、分かりました」


ドスの効いた目で睨まれたけど、今はそう怖くなった。なんでだろう、あっそうか、祐樹さん…じゃなくて祐樹のちょっとした良い面を見たから怖くなくなったのか


「それと、オレの能力はお前の言った通りだ」


「怪力ですか」


どうやら、祐樹の能力は島崎さんと同じ怪力のようです。怪力かぁー、最近、ちょっと他の能力が良いなーとか思ったりしてくるんだよね。ロイさんの能力は別として、高橋さんの予知能力は訓練すれば学校の小テストの問題とか予知出来るし、島崎さんの怪力は、重い荷物を持つ時に便利そう、神谷さんの描いた物が実体化する能力は、なんだか楽しそう


「能力って便利ですよね」


「そうか?オレはこんな能力はいらねぇな」


「どうして、ですか?」


「オレはこの能力のせいで少年院に行く羽目になったんだ」


それから、祐樹が言ったことをまとめてままると、祐樹は、見た目から不良ですよね。どからよく街の中でガラの悪い奴らに絡まれていたそうです。そして、その能力を使って絡んで来たガラの悪い奴らを瞬殺


「傷害事件が多くあって、最終的には、そこに行ったのですね」


「あぁ、この能力が無くてオレのガラが悪くなかったら、今頃のオレは平穏に暮らしていたんだろうなーっていつも思う」


薄暗い通路を歩きながら、私は祐樹について、少し、同感する部分が出て来ました。確かに、私の能力が無かったら、今頃、普通に暮らしていたのかもしれない。こんな、怪盗を追う仕事もキケンな目に遭う事も無かった


「どうして、オレらには能力があるんだろうな」


「どうして、でしょうか」


確かに、今まで何とも思ってなかったけど、なんで私たちに能力があるんだろう?

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