36・カジノには危険がたくさん
その後、なんとかカジノ場を脱出したのにも関わらず、またカジノ場に戻ってきてしまった。なんだよこの無限ループは
「さっきまで、出口が分かってたのに、今はさっぱり分からない」
時刻は夕方の4時ごろ。いやー、それにしてもこの豪華客船は広過ぎる。広過ぎるから私みたいな方向音痴が困るんだよ!うわー、もう本当にこの方向音痴を誰か治して下さい
「あれ〜あやのちゃん奇遇だね」
「その声は!」
半分涙目になりながら、オロオロしていると右隣から懐かしい、いや、男性なのにちょっと高めな声が特徴なーー
「西川さん!」
しかも、スーツ姿ですよ。あっ、でも西川さんらしくスーツをチャラく着こなしている。って、なんでここにいるの⁉︎
「その顔はなんでここにいるのって顔してるね」
「エスパーですか?」
「いや、ただ単に人の顔から心情を探るのが得意なだけだよ」
「……………」
「黙らないでくれるかな」
あっ、そうか確か西川さんは推理作家だから探偵に必要な知識とか豊富だよね。成る程、だから今みたいな発言ができるんだ
「簡単に言うとこのパーティーの主催者さんに招待されたんだ。ほら、この手紙見てみ」
西川さんは内ポケットから一枚の白い紙を出して私に見せました。そこに書いてあったのは、西川さんの言う通り、日付と場所
「一般人もいるけど、ここにいる大半は主催者の招待状を貰って来ているんだ」
ここは、カジノ場だけどあたりをよーく見てみると、テレビに出ている芸能人とかスポーツ選手とか有名な方々がたくさんいます。と言うことは以外と西川さんって有名な作家さんなのですね
「そうですか、西川さんはボッチで来たのですか」
「人をボッチ呼ばわりしないでくれっ!俺にも友達はいるから」
「でも、今、見たところボッチですよ?」
「今は、な」
胸を押さえて嘆いているところを見ると、どうやら一人で来たらしい。でも、今の発言で一応、友達はいるとの事
「別に最初は断ろうと思ったよ。同じ作家の中で招待状を貰ったのは俺だけだし。でも、怪盗リディアが来るなら見てみたいじゃん?だから、一人でも来たんだ」
「そうですか、だから一人は寂しいから、この賑やかな所に来て気を紛らわしていたのですね。確かにその考えはありだと思いますよ」
慰めるように西川さんに言いました。その瞬間、西川さんの目はキラリと光ります
「そう言う、あやのちゃんも今、一人だよね。しかもその格好」
「いやーこれはコスプレですよ〜。実は私、この豪華客船の主催者の孫娘さんと親友で、その孫娘さんに今日来ないかって誘われたから来たんですけど、私の方向音痴が炸裂して今は迷子なんですよね〜はははは」
本当の事と嘘を交えて言うと、それは嘘とは気づきにくいらしい。そんなどこで覚えたのか知らない豆知識を使い、私は西川さんの目を誤魔化しました。だって、私が異能課だってバレたら島崎さんに何をされるか分からない。それに、さっきの西川さんの目はあいつの全てを見透かすような感じだったから少し怖かった
「コスプレかぁー。でもコスプレするなら俺はあやのちゃんにナースか教師をやってほしかったな」
「逮捕しますよ?」
「真顔で言うのは止めて」
シリアスモードからいつもの西川さんに戻った。すると、西川さんは私の頭を見て驚きの表情に変わります
「あれ?いつも頭に水色の花飾りしていたけど今日はしていないの?」
「あー、あれですか」
実は澤田君に貰ったあの水色の花飾り、本当は付けて来たかったんだけど、今日は何が怒るか分からない日。もしも、事件に巻き込まれた際に大切な水色の花飾りを壊してしまうような事があれば、澤田君に申し訳ないし、何より私が嫌だ
「忘れてしまいました」
「だったら、代わりにこれあげるよ」
西川さんから手渡されたのは綺麗なガラスで作られ桜をモチーフにした髪飾り、その五弁花の中心にはブラックオパールのような大きな玉が1つ付いています
「これが、噂の【小夜の瞳】ですか。やっぱり西川さんは怪盗リディアだったのですね」
「まだ、怪盗フラグのネタを引きずりますか⁉︎って、そもそも【小夜の瞳】って言う宝石が何なのかは主催者とその家族しか知らないんだよ。この情報は世間一般の皆様はもう了承済みだからね」
「えっ、そうなの」
確かに、小夜の瞳はどんな色の宝石かって言うのは島崎さんからも聞いていない。だから今日、世間一般には公開されていない小夜の瞳が公開されるから怪盗リディアは盗みに来たのか
「それに、その髪飾りはさっきカジノで勝った景品だから。でも、凄いよね、カジノの景品にこんな豪華な物がでるなんて、流石、松永宝石店!」
「景品かよ、でもありがとうございます」
「最初の言葉は聞かなかったことにして、はい、付けてあげる」
西川さんはあっという間に、私の髪に髪飾りを付けると満足そうにうなづき、手をひらひらと動かして自分が怪盗ではないと主張した。まぁ、私も本気で西川さんが怪盗だとは思ってないし、何より今、小夜の瞳はこの豪華客船のどこかに厳重に保管されているから、この場にあるはずがない
「それと、ついでに出口はあっちだよ」
ドヤ顔で言う西川さんにイラっときたけど、出口を教えてもらったので、この拳は鎮めよう
「ありがとうございます」
「はいはーい」
今度こそ、またカジノ場に戻ることはないと願いつつ、私は西川さんに教えられた出口へと歩きました




