34・豪華客船は迷宮
ついにこの日がやってきた。現在、朝の9時、私はとある大きな豪華客船のシークレットルームにいます。部屋の中には島崎さんと高橋さん
「海はどう?怖くないかな?」
「はい、大丈夫です。それに高橋さんが催眠術をかけて下さったので今は怖くないです」
そう、この豪華客船に乗る前、私のトラウマが発生して歩けない状態だったけど高橋さんの治療と言うなの催眠術をかけてもらったおかげで、今こうして普通に豪華客船の中にいるのです
「高橋さんってなんでも出来るのですね」
「なんでもは出来ないけど」
「豪華客船で世にも奇妙なショータイムか」
島崎さんの言った単語に私たちはため息を付きます。事の発端は12時間前、テレビを見ていると突然、画面が砂画像になり、次の瞬間、今、巷を騒がせている怪盗リディアが映ったのです。そしてなんと明日、松永家が主催する海上パーティーで『さやの瞳』を奪うと宣戦布告。この放送は日本の全都道府県に流れたらしく、案の定、今日の豪華客船には報道陣が殺到しました
本気でリディアを捕まえようとする私たちにとって報道陣は邪魔です。だから、主催者である松永源次郎に報道陣を退去してもらおうとしたのですが、『この大勢の人の目がある中でお前はどう盗むのか、やれるものならやってみろ!』と超ノリノリでね。無駄だったよ
「いや、そもそも『さやの瞳』を展示しなければ良いだけの話ではないですか?」
「確かにそうだけど、松永源次郎は頑なに展示するとか言ってた」
「孫娘の名前入りの宝石だ。そりゃぁ自慢したくなるだろ?」
「おじいちゃんの心ですかね」
怪盗リディアは夜の9時、ちょうどさやの瞳が豪華客船に乗っている人々の目にお披露目されるこの時間に盗むと言っています。それまでは豪華客船のどこか一室に厳重に保管されているとか
「とりあえず夜の9時までは自由時間ですね」
「は?アホか。それまでは怪しい人物がいないか船内を見回るんだぞ」
「…はい」
催眠術のおかげで海が怖くなくなったから、浮かれてた。あっ、でも見回るついでに豪華客船を堪能すればいいんだ。
「じゃぁ、行くか」
島崎さんの声に反応して私たちはこの部屋から出ました
* * *
現在、午前9時30分。私は島崎さんと高橋さんと別れ豪華客船の中にある休憩室に入り1人でこの後の予定を確認中です
まず、今から午後5時30分までは自由時間!じゃなくて豪華客船の見回り。午後6時から松永源次郎さんが主催するパーティーと言う名の松永家に代々伝わる宝石のお披露目会
この間は豪華客船に乗っている人全てを大きなダンスホールに詰め込みます
もちろん、報道陣もコックさんも豪華客船にあるショッピングセンターの店員さんも警備員さんも屈強な警察官も全て。つまり、ダンスホール以外に誰もいないようにするという計画
で、夜の6時から8時30分までは、豪華客船のダンスホール以外に誰かいないか捜す
そして、夜の9時。今宵の主役である『さやの瞳』が大勢の目の前に公開され、怪盗さんに盗まれる。いや、盗まれるを前提に話してはいけないか
「はぁ」
豪華客船に乗っている人全てが大きなダンスホールいる間、私たち異能科は島崎さんと高橋さんがダンスホールの中にいて、私はダンスホールの外。つまり扉の前に立って侵入経路を塞ぐ
ちなみに、ダンスホールの出入り口は大きな扉しかない。何が言いたいかと言うと出入り口は1つだけと言うことになります
捕まえたらロイさんの作り出した空間に閉じ込める。でも、ロイさんは基本こんな仕事は受け付けないとか言っていたのにどうして受けたんだろう。と言うか、朝からロイさんの姿を見ていない。でも、あの人のことだからきっとどこかにいるんだろうな
「怪盗さんは電気系統の能力者だと思う」
今まで電波をジャックしたり何かと電気関係の悪さがほとんどだからね。予定を確認した私は休憩室から出ました
この豪華客船は客室も含めて12階。全長、どれほどあるか分からないけど多分1キロ、それ以上はあるかも。そんな大きな豪華客船には大きなプールやバカみたいに広いダンスホールやショッピングセンターやアミューズメントパークなどあり、もう凄いという言葉しか出てこない
あっ、早速、報道陣の方々がショッピングしている親子連れにインタビューしています。何やら質問内容は怪盗について、いやー怪盗さんは人気者だね
『二ノ宮、聞こえるか?』
「はい」
インタビューしている報道陣を見ていると耳にしているイヤホンから島崎さんの声が聞こえてきました。そう!実は今、私の格好はSPが着るような黒いスーツみたいな服で耳には島崎さんや高橋さんといつでも連絡が取れるようにイヤホンをしています
『二ノ宮は客船の頭から行け』
「はい、分かりました」
頭と言うことは操縦機がある方から下に行けばいいんだね。さて、1泊2日の豪華客船はなんだか荒れそうな気がします
「早速、操縦機がある方に行きたいけど、ここどこだろう?」
出た。私の方向音痴がここに来て出て来たよ!これなら高橋さんに方向音痴にならないように催眠術を掛けてもらうべきだった!
「とりあえず、船内の地図を見よう」
私は船内の地図を探すため豪華客船を歩き回るのでした




