4・警視庁特殊異能課
目を覚ますと天井ではなく私の顔を覗き込む男の人がいた。これはどーゆー状態かな?起きてすぐ見るのって大体、天井だよね。なんで知らない男の人が私のことを見つめているのかな?
「こんばんわ」
「えっ!おはようじゃなくて、こんばんわ⁉︎」
思わずツッコミを入れてしまった。初対面の人なのに
「うん、今は夜だからこんばんわだよ」
へにゃっと笑う男の人、つられて私も笑ってしまった
「どこか痛むところはないかな?」
改めて自分の体を見るとあちこちに包帯が巻かれていて服も制服ではなく病院の入院患者が着るような服を着ていた。
「服が違う」
ぼそりと言った言葉が聞こえたのか目の前にいる男の人は急に顔を赤くさせて狼狽していた
「きっ着替えさせたのは僕だけど、そそそんな、やましい気持ちはなくて、そんなんじゃないからねっ!本当だよ!違うからね!絶対にだよ!お願い信じて」
「わあああ、わかりましたわかりました」
私まで狼狽えてしまった
「とりあえず、今のところ体は大丈夫です」
「それならよかったぁ〜」
この人の背後にお花が見えるのは気のせいだろうか、この人はなんかこう、ふわっとしてて、ほやっとしてて、うーん、ゆるふわっていうやつか、でも優しいことは確かだね。だって私が起き上がろうとした時、背中を支えてくれたりしたもん
「あっ!名前がまだだったね。僕は警視庁特殊異能課 兼 警衛警護課に所属する相田 優斗 23歳よろしくね」
漢字で書くと読みにくいだろうな、その前によく噛まず言えたね
「私は桜ヶ丘高校1年の二ノ宮 彩乃です」
「彩乃ちゃんでいいかな?僕のことはなんとでも呼んでいいからね」
「はい、ありがとうございます相田さん」
それから私は気になることを聞いた
「あの、ここはどこですか?」
「ここは、警視庁の最上階にある警視庁特殊異能課の部屋にある仮眠室だよ。彩乃ちゃんはここで3日間も寝てて」
「3日間も!」
「大丈夫、学校とバイト先には彩乃ちゃんか風邪を引いたって連絡してあるからね」
「あっありがとうございます」
それともう一つどうしても気になることを聞いた
「あの、もう一つなんですけど警視庁特殊異能課ってなんですか?」
「それについては、この後、島崎さんが話してくれるよ。」
『島崎』どこかで聞いたことある名前だな、確かさとりさんに襲われたあの日の夜に助けてくれた人だ
その時、お腹が鳴った。なぜこのタイミングで鳴るんだ!自分の顔が熱くなるのが分かる
「とりあえず、ご飯食べに行かない?」
相田さんの言葉に私は頷いた
*
時刻は夜の7時、私達は近くのファミレスに入ってご飯を食べた。しかも、相田さんの奢りで、私は唐揚げ定食で相田さんはミックスフライ定食、本当は唐揚げ定食の他にも色々食べたかったけど、定員さんに注文している間、どんどん相田さんの表情が曇って行き最終的にはお財布を確認し始めたので、唐揚げ定食だけにした
「ごめんね、お腹いっぱい食べさせてあげられなくて、本当はもっと食べたかったでしょ」
「いえいえ、とんでもないです!」
相田さん、あなたはどこぞのお母さんか
「【唐揚げ定食】を奢って頂いてしかも、服まで貸して頂いて本当にありがとうございます」
私が食べ終えた唐揚げ定食のお皿の隣にまた新しい唐揚げ定食が現れた。えっまさか言霊の能力、使っちゃった
「やっぱりまだ彩乃ちゃんの能力は不完全だね」
「それ、さとりさんからも言われました。」
「多分、彩乃ちゃんはただ能力のONとOFFが出来てないんだよ。って彩乃ちゃん能力の乱用はダメだよ」
相田さんに言われた通り私は言霊を使って色々な食べ物をテーブルの上にわんさかと出していた。
「大丈夫です。残さずに食べますから」
「そういう問題じゃなくて」
プルルルルルプルルルルルと相田さんの携帯から着信音が鳴る。ちょっと席を外すねと言って外に出て行った。
「なんか色々あり過ぎて大変だなぁ」
相田さんが席を外している間、私は自分なりに今の現状を考えてみた。
テロリストにあったのが日曜日で、さとりさんに襲われたのが月曜日、そこから3日間休んで今日、金曜日、私が休んでいる間は風邪を引いたことになってて学校とバイト先には連絡をしてある
「で、あの時、私を助けてくれたのは」
警視庁特殊異能課の島崎さんと高橋さん、という警視庁特… (言いにくいから異能課でいいや)異能課の2人それと相田さん、それで、これから私は島崎さんとあって異能課が何なのか、とか私の言霊について話し合うらしい
「うーん、本当に言霊の能力があるなんて未だに信じがたい話だな」
それと島崎さんは異能課の中でリーダーに当たる人だと相田さんが車の中で教えてくれた。ついでに今、島崎さんは仕事中なので帰ってきたら話し合い
「なんか重くなりそうな雰囲気かな【チョコレートパフェ】」
チョコレートパフェを食べていると相田さんが戻ってきた
「島崎さんが帰ってきたみたい。これから警視庁に行くよ」
「りょーかいです」
「ほら、口にチョコ付いてるよ」
*
只今、警視庁の最上階にあるとても広い部屋の一室で机を挟んで向かい側に島崎さんが座ってみえます。本当は相田さんも来て欲しかったけど、『島崎さんが2人だけで話したいみたい、話が終わったら一階のロビーに来てね』と言い残しこの部屋の前で後を去ってしまった。
「この前は助けて頂きありがとうございました」
「それを言うなら高橋に言ってくれ」
高橋さん、あの目が左右違うあの人かな
「あいつの能力は未来予知みたいなもんだ、それでたまたま見えた未来にお嬢ちゃんがさとりが対峙していたから、そこに行ったっていう訳だ」
「はぁ」
この人なんか怖い、相田さんはほんわかしているのに、この人はなんだろう、威圧感っていうのかな?とにかく目が怖い。獲物を狙う豹みたい
「まぁ、そう固くなるな」
いや、それは無理ですよ
「それで、あの話が変わりますが、警視庁特殊異能課ってなんですか?」
本題を切り出した
「あぁ異能課はオレと高橋、相田とお嬢ちゃんを含めて7人で活動している。名前の通りここの課はお嬢ちゃんみたいに能力を持っているやつが集まるところだ」
「じゃぁ相田さんも能力をもってるんですね」
「いや、あいつは普通の人間だ。なんせここにはまともな奴が誰1人いないからな、だから相田みたいなまともな奴がいなきゃここは成り立たない」
それには激しく同意します
「で、オレらの仕事は重要人の護衛や事件解決の手伝い、それはまぁ副産物で本命は能力者の確保とユグドラシルの撲滅だ」
ユグドラシル、さとりさんが言っていたあの組織
「そのユグドラシルは一体なんですか?」
「あいつらの目的はさっぱり分からんが、一つだけ言えるのはオレらと同じく能力者の確保だ。最近は資金調達のためかテロリスト達を使って金を集めているらしい」
この前のテロリスト達は資金調達係りなのか
「でだ、お嬢ちゃん」
「はっはいっ!」
いきなり声を低く出されると身構えるのは無理もないよね
「お嬢ちゃんは言霊の能力者だ」
「はい」
あっなんか話が読めて来たぞ
「別に強制ではないがオレらの課に入らねぇか、なんせ人手不足でな」
やっぱりあっでも強制じゃないなら入らなくてもいいよね。だって島崎さん怖いもん、相田さんに言われたなら即答でOKするけど、ごめんね相田さん、私断ります
「強制ではないのなら断ら…」
島崎さんの目が一気に鋭くなった。怖いよ怖いよ。背中に汗が垂れるのが分かる
「強制ではないのならどうなんだ」
鋭い目+威圧感、ヤバイここから逃げ出したい。
「辞めま…」
無言のプレッシャー怖いよ。うわわわわわわこれ絶対に入れって言ってるよね。そうにしか見えないよ
「は、入らせて頂きます」
島崎さんが笑った気がする。うわっこの人最初から私を入れる気だったんだ
「それじゃぁ今後のことについては、また後日に連絡する。携帯を出せ」
私は言われるがままに携帯を渡した。私のスマホと島崎さんのガラケーを見つめること数秒
「これで、連絡先は繋がった」
携帯を渡される
「よろしくな二ノ宮」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
深々と頭を下げる私。あれ?名前の呼び方がお嬢ちゃんから二ノ宮に変わった。これは異能課にはいった証拠かな
「それと、能力のことについては他言無用だ、世間ではオレらのことは極秘になっているからな。誰にも言うなよ」
「了解です!」
あんな怖い顔で言われたら誰にも言えないよ。本当にこの人は怖いな
話を終え私は相田さんが待つ1階のロビーへと向かった。だが、部屋を出てすぐに左右の目が違う彼に出会った
「高橋さん、あの時は助けて頂きありがとうございました。」
「君は、あの時の子だね」
それから私はさっき島崎さんと話していた内容を高橋さんに話した
「そうなんだ君も異能課に入るんだね。これからよろしく」
スッと手を差し出されて握手をする。なんかいいねこの感じ
「でも、仕事に失敗したら島崎さんは怖いからね。そこは気を付けた方がいいよ」
笑顔で恐ろしいことをさらっと言ったよ。その後は高橋さんと別れて1階へ向かった
相田さんにも私が異能課に入ることを伝えると
「そーなんだ!入ってくれるんだ!やったぁー」
と大いに喜んでくれた。本当に相田さんは癒される、この人が警察だなんて想像もつかないな
「異能課にはね男しかいなくてさ、しかもみんな荒っぽくて結構、大変なんだよ」
異能課について分かったこと
・その1、全員で7人
・その2、私以外は全員、男
・その3、みんな荒っぽいらしい
でも、高橋さんはそうでもなさそうだったけどなぁ、もしかして実はあぁ見えて中身は腹黒かったりして
「もう、今日は遅いし家まで送って行くよ」
ロビーの時計を見ると10時を回っていた。でも、相田さんには色々とお世話になってるしこれ以上はどうかなと考えてしまう
「大丈夫です!今日はなんだか歩いて帰りたい気分なので、あっ服は後日返しに行きますね。」
「でも、夜道は危ないよ」
「いえいえ!歩いて帰ります」
暫く私と相田さんの抗議が続き、このままでは収集が付かなくなったと思ったので、じゃんけんをして決める事にした。こういう時はじゃんけんに限るね。結果はグーとチョキで私の勝ち
「色々とお世話になりました。」
そう言って警視庁を出て行こうとした時、相田さんが慌てて出てきて私に指輪を渡した
「これって結婚指輪!」
「なっななな違って違うよ」
「冗談ですよ」
真っ赤になった相田さんの顔が面白かった。この人。いじりがいがあるな
「これはなんですか?」
「それは島崎さんから渡しとけって言われて」
「島崎さんからっ!」
「うん、この指輪に付いてるオレンジ色の石には能力を消す力があって、彩乃ちゃんの能力は今、不安定だから、力を使う時以外は付けておいてね、って島崎さんが言ってたよ」
相田さんが言うと優しく聞こえるけ島崎さんが言ったら脅しにしか聞こえないだろうね
「わかりました。」
「うん、夜道には気を付けて帰るんだよ」
*
駅をおりて家まで歩く、警視庁から自宅まで以外と距離があった。幸い荷物はサブバックだし中には制服と教科書しか入っていない、これなら送ってもらってもよかったかな、なんて今更後悔してももう遅い
「そうだ、自転車を出そう」
指輪を外して自転車を出そうと考えたが、最後の最後に相田さんから『むやみに能力を使っちゃダメだよ』と忠告されたのを思い出した。
「やっぱりダメだよね。でも自転車があれば早く帰れるしどうしよう、うーん相田さんごめんなさい!能力使わせて頂きます」
指輪を外したその時
「二ノ宮⁉︎」
「うわぁっ!誰っ!」
慌てて指輪をはめ直す。後ろを振り返ると肩からスポーツバックを掛けた澤田君がいた。
「オレだけど、ごめん驚かしたな」
「ううん平気平気あっでも、ちょっと驚いたかも!もしかして澤田君の家ってこの近くなの?」
「いや、オレは二ノ宮の家に行ってプリントを渡そうと思ってて、それより熱はないのか?」
そうだ、私は熱を出して休んでることになってたんだ。でも、わざわざプリントを届けに来てくれるなんて優しいな。やっぱり江本君が言ってた通りだ
「もう、熱はなくて」
コツン
コツン?あれま、どうして私のおでこと澤田君のおでこがくっついてるのかな?どうしてどうして……
「なっなななな!」
「ほら。熱あるだろ顔も赤いし」
慌てて後ろに下がる。熱があるのはあなたのせいですよ!いきなりなんですか、おでこをくっつけるだなんて、家族でもしないよ。いや私には家族がいなかったんだ
「ふっ普通は手で触るもんだよ」
「あぁそうかじゃぁこれなら」
ピト
だから、なぜそうなる
「ちょっと落ち着こうか」
「オレが?」
自分でも顔が熱くなっているのが分かる。もう帰りたい、今すぐここから逃げたい、言霊使ってなんとかならないかな。あー無理だぁ、とにかくもう夜遅いし男子高校生といえども夜道は危ないから澤田君には帰ってもらいたいな
「澤田君、熱はないから大丈夫だよ。わざわざプリントのために来てくれてありがとう、ほら、もう夜遅いし夜道は危ないよ。だから……」
「うん、夜道は危ないから送っていくよ」
いや、送っていくよじゃなくて
「ほら、二ノ宮の家まで行くよ」
「ん?澤田君この手はなんだい?」
当たり前のように手を繋いでくる。しかも手を絡める、いわゆる恋人繋ぎというやつだ
「だって、まだ顔赤いし途中で倒れたら大変だろ」
澤田君、優しさの限度を超えているよ。これはなんというかその、あれだ、あの、あの、うーわーあーなーーもうどうにでもなれ!
「わかった。私の家はもう少し先だよ」
「おお!」
赤面で項垂れる私と爽やかな顔で笑う澤田君
なんだろう、今日はやけに月明かりが綺麗だな。
まだ熱が引かない顔でそんな事を考えてた。




