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33・バイトはいつも通り

松永家主催の海上パーティーが行われるまで残り3日となったとある夏休みの喫茶店『カルミア』の中にて


「怪盗ねぇ〜。最近、世の中物騒だね〜。あやのちゃんも気を付けなよ?」


「はい、今、目の前にいる人に気を付けます」


「彩乃さん上出来です」


「マリアさんありがとうございます」


「2人してオレをディスらないで!」


喫茶店『カルミア』の2階は常連さん専用の場所。そこにいるのは常連である推理小説作家の西川さんとホラー小説作家のマリアさんだけ、他の常連さんはいません


「でもさ、怪盗ってかっこ良くない?」


「何を中二病みたいな事を言っているのですか?」


「実は、西川さんはここ数日メディアの注目の的である怪盗だったとか」


「それ、分かります!今の発言は怪盗フラグですよね」


「怪盗フラグって何!死亡フラグみたいに言わないでよ!」


西川さんとマリアさんの会話に出てくる怪盗はもう既に日本で有名人となっています。最初のニュースでは宝石店から様々な品を盗んだ泥棒と言う名前、次は謎の怪盗と言う名前になり、その次は謎のベールに包まれた漆黒の怪盗。そして、今では漆黒の堕天使!怪盗リディア


リディアって言う名前は島崎さんの呼び出しから3時間後、大胆にも怪盗が都心部の電波をジャックして名乗ったのがきっかけで判明した


「でも、電波ジャックには驚きましたね」


「私もです」


「顔は不気味な仮面を付けていて分かりませんでしたが、仮面越しでも整った顔立ちと言うことは分かりましたね」


「声も爽やかで綺麗でした」


「だから、怪盗なのに世間では女性の黄色い声援が絶えないんだよ」


「でも、あのネーミングセンスはどうかと思いますよ」


「オレの発言を無視しないで」


確かに怪盗は漆黒のマントにタキシードって言うね、痛い格好をしておりまして。えぇ、3日後にはこの痛い怪盗と対峙することが恥ずかしくなってきた


「あっ、喉渇いたからレモンティー頼む」


「私も注文良いですか?」


「はい」


「アールグレイを頼めますか」


「分かりました、アールグレイお一つですね。浪川さん、アールグレイお一つお願いしまーす」


「あやのちゃんも!オレも注文したんだけど」


私は西川さんの声をスルーして近くにいた同じバイト仲間の浪川さんにマリアさんが頼んだアールグレイの注文を言った


「あやさん!仕事して下さい」


「ごめんなさい、私まだマリアさんとお話がしたくて」


浪川さんの目の前に立って両手を胸辺りで組み、上目遣いで頼んでみると、顔を赤くしてさっさと1階へ行ってアールグレイを持ってきてくれました。ついでにマリアさんが浪川さんに笑顔でお礼を言うと、メデューサによって石にされた人間のように固まり、西川さんが何をしても動きません


「頬にペンで落書きしよう。ここはやっぱり渦巻きが定番だよね。それか奇を(てら)ってゾンビメイクとか」


「ちなみに浪川さん、柔道の黒帯持っていますよ」


「それ、マジか」


慌ててマジックペンを閉じる西川さん。あーぁ、もう少しで西川さんが痛い目見るところをこの目で見られたのになぁ


「あやのちゃん、心の声が聞こえてるよ」


「幻聴ですよ」


と、ここで浪川さんが我に返ったようです。浪川さんの目の前には冷や汗をかいてペンを片手に持つ西川さん、これらから推測されることはただ一つ


「どの技で決めて欲しい?」


「浪川、落ち着こうか」


数秒後、喫茶店カルミアの2階から断末魔が聞こえたと1階のお客様から苦情があり、私と浪川さんと西川さんはオーナーにこっぴどく叱られ、今月の給料を減らされる羽目となり、一方、西川さんはこれから6ヶ月、約半年ですね、出入り禁止という処分になりました


「はぁ、なんだか平和過ぎてこれから起こることが信じられないよ」


あと3日後、私は海の上でさやちゃんの名前が付いた宝石『小夜の瞳』を怪盗リディアから守らなければなりません。今更、思ったんだけど小夜の瞳ってどんな宝石なのかな?


さやちゃんの瞳は黒だから黒色の宝石?でも、今まで黒色の宝石なんて聞いたことも見たことも無いから想像がつかない。強いて言えば、ブラックオパールなら分かるかも


「彩乃さん、それは、どう言うことですか?まるで、これから何か大きな事件が起こると確信しているようにも聞こえます」


しまった、私が3日後の海上パーティーで怪盗が来ることは、異能科と警察のお偉いさんの中でも更に偉い人と狙われた宝石店の松永家の人達だけ。それに、この情報は相田さんから他言無用でとお願いされたんだっけ


「えーと」


「ふふ、冗談ですよ。予知能力なんて彩乃さんには無さそうですからね」


良かった、話がそれて良かったです。それから、私は念のためにボロが出ない内にマリアさんから離れ1階のお客様の対応へと向かった



* * *




バイトが終わり家路に帰る途中、とある横断歩道の赤信号で止まっていると誰かに後ろから声をかけられました。振り返るとそこにいたのは澤田君


「久しぶり!」


「うん!澤田君も元気にしてた?と言うか部活の帰りなんだね」


「そうなんだ!ねぇ一緒に帰ろう」


突然のお誘いに驚き中。いや、こんなにも爽やかに公共の場でさらりと言われたら驚くのも無理は無いよね。しかも、私こう言うお誘いは初めてで…


「でも、澤田君の家って私の家とは逆の方向だよね?」


「オレは彩乃と一緒に帰りたい」


ええっ!不意打ちで舌の名前を呼ばれるとドキッてするよ!しかも、しっかりと私の目を見て言うものだから、目をそらせなくて。こ、こんな時はどうすれば良いの?


「あら」


「クスクス」


通りすがりの人は暖かい視線を向けてくるから、なんだか恥ずかしい。気が付くとなぜか私の右手は澤田君の左手と繋がっていて、そのまま


「レッツゴー!」


「ええっ!」


引っ張られるように横断歩道を渡り、私は澤田君と一緒に歩き出しました



現在のジャンルは学園ですが物語の初めの方のジャンルは恋愛でした。

それから戦記→学園と、迷走して

今は学園となっています。


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