32・決断
ベターなお話だと思います
平凡な日常が続くと思ったら、さやちゃんから電話があった2日後、とある有名な宝石店で強盗事件がありました。一応、テレビのテロップに出た店名はさやちゃん家の宝石店の名前でなかったので一安心
相田さんからの情報によると、この強盗の手口は実に巧妙で人間業ではできないことばかりの連続。この強盗は初めはアメリカや海外で盗みを働いていたそうです。それが、日本に上陸したということで、日本の警察の方々は大忙し
でも、この強盗…というか海外では怪盗と呼ばれているので私も強盗ではなく怪盗と呼ばせてもらおう。で、その怪盗が盗む物は値段もつけられない様な希少価値がある絵画や宝石ばかり、しかも、犯行する前は必ず予告状を出すとのこと
相田さんと電話で話していたのですが、どうしても、その予告状と言う単語が出た時、某有名な探偵アニメに出て来る怪盗さんを思い出して、大声で叫んでしまいました。どうやら、相田さんも、同じことを思っていたそうで、お互いに笑いあっていたのですが
ここからが、本題。その怪盗は人間業ではできないことばかりの手口で有名な絵画や宝石を狙うのです。それは、どんな犯行手口かと言うと、分からないのです。誰にも気付けない程、巧妙だから、分からない。だから、人間業ではないと警察の方々がそう言っているそうです
「部屋が真っ暗になったかと思ったら、次の瞬間、絵画は盗まれていた」
『そうなんだ』
「防犯カメラにも映ってないし、しかも、絵画は防弾ガラスに入れられていたんだから、盗めるはずがないでしょ?』
「それを、怪盗さんは盗んだ。本当にあの某有名探偵アニメみたいですね」
だから、警察の1番お偉い方々はこの怪盗は、能力持ちではないのかと、いう結論に至った。もちろん、能力持ちの話は警察のお偉い方々中でも更にお偉いごく数名の方々しか知らない情報です。その人達が判断するなら、きっとその怪盗さんは私達と同じ能力持ちでしょう
『ちなみに昨日、その怪盗から警察本部と、盗まれる側の店に予告状が届いたんだ。これはメディアにも流していない情報だから、他言無用でお願いね』
「了解です」
その話を聞いた後、相田さんは誰かと電話を代わったようです
「もしもし」
『と言うことだ、だから、今回の事件は異能科で処理をすることになった』
「しっ島崎さん!」
いきなり低ボイスが聞こえたと思ったら島崎さんでした。うわぁー。心臓に悪いよ。ん?ちょっと待てよ、今回の事件は異能科で処理をすることになった。と言うことは久々の異能科の出動ですか⁉︎えー、嫌だなぁ。だってせっかくこの平和を楽しみたかったのに
『今から作戦を練る。だから今すぐ、こっちに来い!』
「はい」
今はとある平日の夕方6時頃。今日がバイトの日じゃなくて良かった。私は島崎さんに逆らうと痛い目をみると分かっているので、ここは素直に承諾して、向かいますか
最近は能力を抑える指輪はしていません。なぜなら、もう、能力が使いこなせているからです。えっへん!それに、この前の私だったら、言霊で出した物は時間が経ったら消えてしまうのに、最近では、自分で消去と言わない限り消えないのです
そこまで私の能力は強くなりました。これも、鬼教官こと高橋さんと修行する場所を作ってくれたロイさんに感謝です。そして、私が初めて異能科に来た時、相田さんが、異能科には私を含めて7人いると言っていました
島崎さん、高橋さん、相田さん、ロイさん、神谷さん、私。残るはあと一人、気になりますね
* * *
異能科の本部に行くまでは、普通なら電車を使うのですが、何せ今は急ぎの用事、普通に向かっていては遅れてしまいます。だから、ここは、普通に行くのではなく、私には人外れた身体能力があるので、それを使います。要は、フリーランニングをするみたいに屋根と屋根を飛んだり、壁を軽々越えたりして異能科の本部までショートカットして向かいました
今は夕方だし、人目につかない道を選んで来たので、誰かに見つかるということはありません
「来たか」
「彩乃ちゃん早かったね。その椅子に座りなよ」
「ありがとうございます」
異能科の本部の無駄に広い部屋には、島崎さんと高橋さんと相田さんしかいません。あれ、ロイさんと神谷さんは?集まるならその2人もいるはずなのに
「神谷さんは探偵業が忙しくてこれないみたい。それと、ロイさんは基本こういう仕事は受けないんだ」
「では、残りの異能科の人は?」
「あぁ、彩乃ちゃんはまだ祐樹君と会ってないか」
ゆうき君。相田さんがちゃんや君付けする時は、自分よりも年下の人を指すから、たぶん、ゆうき君は相田さんの歳23歳よりも下なんだ
「で、話を戻すが。これが予告状だ」
「おお!某有名漫画に出てくる予告状ですね」
白い紙にパソコンで書かれた予告状にはちょうど1週間後に開催される松永家主催の海上パーティー。と、ここで気付いたのはこのパーティー、さやちゃんが言っていたあのパーティーだ!
島崎さんから一通り松永家の事を聞いたのですが、やっぱりこの前さやちゃんに誘って貰ったパーティーだと確信しました
「で、異能科の仕事はこの日に展示される【小夜の瞳】を死守すること、あわよくば犯人を捕まえる」
「あの、島崎さん小夜の瞳ってそのネーミング誰がつけたのですか?」
「依頼主であり開催者の松永 源次郎だ」
さやちゃんのお爺様ですか。ほぉ、宝石に自分の孫の名前を付けるとはかなりの溺愛っぷりに引くものがある
「今回の仕事にはオレと二ノ宮と高橋で行く」
「相田さんは?」
「僕は警衛警護課だから、そっちの仕事があって無理なんだ」
確かに初めて会った時、警衛警護課って言っていたよね。後から調べたんだけど、相田さんの課は重要な人を守ったりするお仕事。それなら、無理か
「でも、ただ仕事内容が違うだけで仕事場は同じだよ」
と言うことは、海上パーティーの誰かを護衛するんだ
「はぁ」
海だ…私のトラウマの海だよ…本当は行きたくない。でも、友達の家が狙われているなら行くしかないよね。いや、行かないとダメだ。せっかくさやちゃんのお爺様が付けた宝石を奪われるなんてお天道様が許してもこの二ノ宮彩乃が許しません!
これ、一回やってみたかったんだよね




