15・研修2日目 ~自覚した思い~
澤田目線の肝試し
短め&会話文が多めです
いつ頃だろうか、気が付いたら目で追っていた。自分でも変態かと思うけど、気になってしょうがない、コロコロ変わる表情と笑った時の顔が可愛くて
いつまでもそばに居たいと思うようになっていた
その気持ちに気付いたのはーーー
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引いたくじの番号は15番、心の中で二ノ宮と一緒になれたらな良いなと思ってた。でも結局、二ノ宮とは一緒になれなかった。今から思えば番号を交換すればよかった
…にしてもなんで、二ノ宮のペアがあおっきーなんだよ
あいつ、何気なく二ノ宮に近寄ってくるわ、髪を下ろした二ノ宮を見て照れてるわ、そりゃぁ髪を下ろした二ノ宮はいつもと雰囲気が違って似合ってるし可愛いよ。だからと言って浮かれ過ぎなんだ。手を繋いだ時も、これで2回目だなとか、言ってさ、2回目?2回目?しかも、繋ぎ方!手を絡ませるな。それと二ノ宮も少しは危機感もてよ。やたら距離を詰めてくるし、何より『あおっきー』と『にのっち』ってオレは澤田君って呼ばれてるのになんだ、あの親近感、オレも二ノ宮って苗字呼びだから悪いのかな
はぁ、オレ、なんでこんなにイライラしてんだろ。本当、自分が嫌になる
あっ分かった、二ノ宮のペアが行く時に青木が少し振り返ってオレの事を鼻で笑ったんだ。だから無性にイライラしてるのか、あー、成る程やっと分かった、そうかそうかこれだったのか
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いや違うな、それじゃなくて本当は嫉妬してるんだ。拓真は例外として二ノ宮が他の男と話していると、こう、なんというかその、変な感じになる
やっぱり、この原因はオレが二ノ宮の事が好きだからか、前までは拓真に聞かれても曖昧な返事しか返せなかったけど今なら自信を持って確実に言える
オレは二ノ宮が好きだと
「澤田って二ノ宮さんのこと好きだよね」
「うん、好きだよ」
「ほぉ〜」
「って、ええ!と、なっなにを聞くんだよ」
「ふふっ」
「というかここどこ?いつの間にか手錠外れてるし」
突然、話しかけてきたのはペアになった田中 澪だった。田中はポケットから壊れた手錠と何か筒状の物を取り出すと軽く振ってみせた
「私の家は鍵屋だから、これくらいの鍵穴だったら簡単に壊せれるよ」
鍵屋だからかと納得して辺りを見回すと、どうやら坂を下っている最中のようだった。しかし道中でお化けにあった記憶がない
「というか澤田、さっきから考え事してたでしょ?私が話しかけても生返事だったし、スルーされたし」
「えっ、話し掛けてたの?ごめん気づかなかった」
「まぁそれは良いとして、その考え事って二ノ宮さんのことでしょ?最近露骨になってきたよね。クラスの中では江本と松中さんと私ぐらいしか気付いてないけど、というか、いつも澤田にくっついてる奴らも気づけよな。私から見れば露骨過ぎて笑えてくるよ?本当にさっきも昨日も、その前だって」
「そんなにわかりやすい?」
懐中電灯がなく、月が少し雲に隠れて薄暗くなった坂道を転ばないように気をつけながら下る
「わっかりやすいよ〜!で、いつ頃かな。意識し始めたのは?この際だから言っちゃいなよ」
どうやら乙女スイッチが入ったらしい、近くにあった木の枝をふざけてマイク代わりにし迫ってきた。こうなればもう、友人の三村しか止められる者はいないだろう。だが、残念なことに今この場に彼女はいない、この場で言葉を濁しても更に追求してくると判断した澤田はポツリポツリと話し始めた
「最初は、桜ヶ丘の入試の時だったんだ」
「おっ、そこからなの⁉︎」
「試験の昼休みに松永が誰かと一緒に昼ごはんを食べるのを見て驚いたんだよ。松永って見た目はつり目で文学少女、少し近づき難いだろ?それにあの頃は尖ってて、オレでも近づかなかったくらいでさ」
田中は頷きながら静かに澤田の話を聞いている
「それで、偶然、拓真と一緒に見たのが松永が笑ってるところだったんだ、あの時は尖ってる松永が笑ったことなんてなくて、一体誰と話してるんだと思って松永の隣を見たら」
「二ノ宮さんだったんだね」
「うん、その時の笑った顔が可愛くて覚えてたんだ。それから入学して同じクラスになったけど、話す機会がなくてさ。拓真は同じ部活で色々と話してたみたいだけど、でもやっぱり一番はみんなで出かけた時かな」
「へぇ、そんなに思ってれば告れば良いのに」
「告白はまだしない。多分、告白すると二ノ宮には必ず困ると思う、それに二ノ宮を困らせたくはないし、今の関係を壊したくはない」
田中の目を真剣に見て断言した。そして田中も澤田の目を見てふざけた様子もなくいつもより、声のトーンを低めて質問した
「困らせたくないのは分かったよ。でもさ、もし仮に澤田とAさんが同時に告って、二ノ宮さんがAさんの方にOKしたら澤田はどうするの?」
「今の時点で二ノ宮はOKしない」
「だから、仮にだよ仮に」
「その時は二ノ宮を応援する。二ノ宮が自分で決めたことだからオレは何も言えないし、多分、見守ることしか出来ないと思う」
雲が晴れて月明かりが薄暗い道を照らした。それに風も出てきて5月だというのに肌寒かった。田中は依然にも真剣な表情のまま澤田に話し掛けた
「いきなり話が変わるけど、二ノ宮さんって可愛いよね。女子力高いし、男子の中で密かに人気あるよ。本人は自覚してないけどさ。でも、等の本人はリアルに恋愛に疎いでしょ?あれ危ないよね。いつか絶体に襲われちゃうよ」
「本当にいきなりだね。確かに二ノ宮は可愛いよ。コロコロ変わる表情とか話してると楽しくて、って簡単に襲うとか言うなよ」
「ゴメンゴメン、でも、あれは本当に危ないと思うな」
「大丈夫、二ノ宮に手を出す奴はシメるから」
一瞬にして真剣な表情を崩し元の感じに戻った
「ふふっー、言うわね。でも、ミイラ取りがミイラにならないように気をつけなよ」
「どういう意味だ?」
そう言いながら、長い坂道を下り終えた、道には大量のマネキンの頭が転がっていたが、それを気にせずに田中は澤田よりも数歩先に歩くとくるりと回転し笑いかけた
「さぁね。とりあえず私が言いたのは、二ノ宮さんに告白するのは早めの方が良いよってこと。現にあおっきーは気があるみたいだし、親密度で言うとあおっきーの方が勝ってるかな」
「青木…」
澤田から黒いオーラがみたいなのが出てきた。その様子が怖くなり一歩一歩、後ずさりをする田中は『あおっきー』という単語は禁句だと肌で感じた
「澤田っ!澤田っ!元に戻れ。ほら分かれ道だぞ、どうするどの道を行く、さぁ考えろ」
冷や汗を垂らしながら慌てて澤田を元に戻そうとする。そのおかげが澤田はハッと気づきゴメンゴメンと笑った
「とりあえず、女の勘で左にいこうか、ほら澤田、私を二ノ宮だと思ってエスコートしなさい」
「それは無理あるだろ!」
田中と澤田はゆっくりと左の道に入って行った
* * *
「おかえりー」
「おっつー」
左の道はお化けも何もなくてただ暗い道を歩いただけだった。そして出口を出ると1ー5の全員がその場にいて、クラスメイトが様々な言葉を投げかける。澤田はすぐ様二ノ宮の元へ行った
「二ノ宮っ!」
「澤田君、おつかれ、田中さんも怖くなかった?」
「私は楽しかったよ。色々とご馳走様な感じだったし」
「にのっちも楽しんでたよな」
二ノ宮を挟む青木と澤田を見守りながら田中はニマニマしながら妄想に浸っていたのだった




