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12・研修1日目 ~お昼ご飯~

会話文が多めです

山から下りて私達は探し出した木の板と交換し、今、桜屋敷の敷地内にある台所でカレーを作る準備に取り掛かっている。台所と言ってもキャンプ場にあるようなものだ。そして肝心の集めた食材はというと

・爪楊枝

・カレーナン

・じゃがいも

・カレー粉

・トマト

・玉子

・コンソメ

・レタス

・チョコレート

コンソメとかレタスはカレーに関係ないけど、『一応もらったとこうぜ』と江本君が言い出して今に至る。


「男たちにはナン作りまかして、さっさとカレー作りましょうか」


「了解、って言ってもカレーにコンソメを入れるのは邪道かな」


「そうね」


「あっ、別にカレーに入れなくてもいいかも」


「どういうこと?」


「例えば、コンソメと玉子とレタスのスープとか、レタスとトマトで簡単なサラダとか作れるよね」


「なるほど」


「よしっ、そうなれば作るよ。まずはじゃがいもから」


包丁でテンポよく皮を剥く、隣で作業しているさやちゃんは鍋を持って来て私がさっき言ったコンソメと玉子とレタスのスープを作っていた。トマトは使わないなら、カレーに入れようかな、流石にじゃがいもだけのカレーは寂しいからね。チョコレートはそのまま食べればいいか、辺りを見るとお米を炊いていたりナンをこねて作っている班がたくさんある。中には鯖をどうしようか悩んでいるはんもあった、いや、鯖なんてあったんだ


「私、あいつら見てくるから少しの間ここ任せたわよ」


ナンが作れているかどうか確認しにさやちゃんは行ってしまった。火が入っているスープの鍋を見ながら、自分の作っているカレーを同時進行に見なければいけなくなったが、普段から一人暮らしをしている私にはそう、難しくないことだった


「二ノ宮さんって手際いいね」


じゃがいもを切っていると私の左横で涙を流しながら玉ねぎを切っている同じクラスの田中 (みお)さんが話しかけてくれた。田中さんって確かあおっきーと同じ班だったよね


「なっ涙がすごいよ、大丈夫?」


「うん、玉ねぎが目に染みて」


「私やるよ、代わって代わって!」


「ありがとう」


ついでにハンカチも渡した。玉ねぎは目に染みるよね、後から鼻も痛くなるし、まだ涙が引かないようだ


「家でも料理手伝うの?」


「ううん、私は一人暮らしだからさ、料理とかやらなくちゃいけなくて」


「一人暮らしなの!」


さっきの涙目から一転、嬉々とした表情に変わり“一人暮らし”という単語に食いついた


(ひじり)荘っていうところで大家さんも隣の人もみんな、優しいんだ」


「大家さんは男⁉︎隣の人は一人暮らしの大学生⁉︎」


「お大家さんも隣の人も男の人で…えっなんで隣の人が大学生って分かったの!しかも一人暮らしって」


「ふっふっふっ、それはね女の勘よ!」


女の勘で分かるものなのかな、それに田中さんのイメージって見た目がさやちゃんと同じ文学少女だから、大人しめの子かなって思ってたけど人は見た目で判断しちゃダメだね


「一人暮らしに大学生に花の女子高生、それにクラスには爽やかイケメンとか、設定的においしいよ!うん、いいと思う、それに二ノ宮さんって可愛いし女子力高いしまさにヒロインポジションじゃん!」


んんっ!田中さんが鼻息荒くしてハァハァ言ってるよ。なんか危ない匂いがする


「設定はね、隣に住む心配性な大学生が二ノ宮さんのことを気にするわけ!で、夕飯とか一緒に食べたりして過ごしていくうちにプチ新婚生活みたいになって、あぁここで大家さんが出て来てもいいよね。大家さんは影から二ノ宮さんを見守りつつ仲がいい大学生君に少し嫉妬しちゃって少しヤンデレ化、それで、我慢ができなくなっちゃって二ノ宮さんを襲っちゃうの!ところがたまたま部屋に入って来た大学生君に目撃されて修羅場、どうしたら良いのか分からなくなった二ノ宮さんはその場から逃げて当てもなくフラフラと街に出歩くの、で、ふと立ち寄った公園で同じクラスで学年1イケメンとされる澤田君みたいな人に出会って『今日はオレの家に泊まるか』なんて言われてさ、行くわけよ!でも実はそのイケメンも二ノ宮さんのことが気になってて、これを気にどんどん仲が良くなるの」


さっき、さらりと危ないこと言わなかった!襲うとかどうのこうの、思わすジャガイモを切っていた手が止まる


「というか、二ノ宮さんってスタイルいいよね。体操服の上からでもくびれが分かるよ!」


さらに鼻息を荒くして手をワキワキさせながらにじり寄ってくる田中さんに恐怖を覚えた。誰か、誰か、さやちゃんヘルプ


「ふふっ今ここで二ノ宮さんを調べッ痛っ!」


田中さんの後ろから何者かがフライパンで頭を叩いた。その人は


「二ノ宮さん、大丈夫?ごめんね澪が変なこと言って怖かったでしょ?もっと早くに気づけたら良かったのに、本当にごめんね」


「三村さんっ!」


あおっきーと同じ班で田中さんの友達である三村 香織(かおり)さんだった


「うわっ!また私、暴走してたの⁉︎」


「うん、二ノ宮さんが引いてるよ。うわなにコイツ、頭のネジやばくね。どうしよ警察呼ぼうかなって思ってるよきっと」


「そこまで思ってないよ!」


「そこまでって事は少しは思ってたんだね」


「えっと、それは」


言葉を濁す彩乃に三村さんはくすくすと笑いだし、私が切っていたジャガイモを回収した


「はい、じゃぁ、私たちは向こうでご飯を炊こうか、澪、行くよ」


「二ノ宮さん今度私が暴走したら止めてね〜」


行っちゃった。彩乃の周りは嵐が去った後のように静かになる。その時、誰かに右肩を突つかれた。振り向くと頬に人差し指が当たる


「あおっきー、何してるの?」


「暇になったから遊びに来た」


「暇って、ご飯炊かなくていいの?」


「それがな、古田のやつオレがやろうとすると触るなとか言ってきやがって、なんもすることねぇから、ここに来たというわけさ」


カレーの火の入り具合を見ながらあおっきーと話す。うんもうそろそろいい具合かな


「にのっちの班のカレーまともだな」


「じゃがいもとトマトしかないけど」


「まぁ、いい方だろ」


「あおっきーの班のカレーはどうなの?まさか古田君が作るとか」


「なわけないだろ!あの味覚音痴に作らせたら明日、オレの命はないぜ」


「だから田中さんと三村さんに作ってもらったんだよね」


「あぁ、というか田中さんのキャラってある意味すごいな」


どこか遠くを見つめながら呟く、もしかしてあおっきーも何かあったのかな


「普通にさ話してみたんだよ、オレの妹が田中さんの妹と同じクラスだってこと、そしたらなんて言ったと思う?」


「うーん」


さっきのテンションからすると多分まともな事は言ってないかな。だとすると


「『あおっきーってシスコンなの⁉︎うん、それもいいと思うよ!設定的に美味しいよ!ご馳走様です』かな?テンションも真似してみたよ」



「にのっちってエスパー?すげぇな、ほぼ正解」


「ほぼってことはどこか違うの?」


「『あおっきーってシスコンなの』は合ってるそれから『近親相姦は私的にはないかなぁ〜。でも人の恋愛には口出せないから、あおっきーファイト!』だってさ」


「田中さんなら言うね。なんかヤバイ単語も出て来たような気もするけど気のせいだよね」


「おう」


なんとも言えない空気に思わず笑ってしまう。あれ?もしかして私、こういう空気に弱いのかな、笑が堪えられないや


「笑うしかねぇよな。ハハハハ…ハハ」


「声に力がないよ!」


ちょうどカレーが出来たようだ。周りの班からもカレーの匂いが漂う、それと同時にクラス主任がカレーが出来た班から食べろと言う



「オレの所もカレーが出来たかな。じゃぁ、行くわ」


「じゃぁね」


「オレの班のカレー食わせてやるからな。その時はにのっちのカレーくれよな」


「OK、ほら古田君が向こうで呼んでるよ」





* * * * *





木製の長テーブルは縦に5つあり各クラスに分かれて班ごとに座って食べた。彩乃の班はカレーと独断で作ったスープとチョコレート、他の班を見てみると、彩乃の班と同じようにカレー+何かを作ったみたいだ

カレーの出来はというと、お腹が空いていたからという理由なのか美味しく感じられた。カレーが残りわずかになった時、彩乃の席の隣にあおっきーがカレーを隠しながら持ってきた


「にのっち、目を瞑って口開けろ!」


「カレーだよね?でもなんで後ろに隠すの!それに目を瞑ってって絶対になんかあるでしょ!」


「目を瞑らないと食えないだろ」


「いやそれ、ダメなパターンのカレーだよね!」


「おーおー、お二人さん仲がいいねぇ」


横から江本君が茶々をいれるがスルーして会話を続ける。


「さっき約束しただろ!カレーを食わせてやるからなって、どうだ!」


「さぁ、知りませんね。そんな事」


「じゃぁ、オレ食うよ?」


澤田君がそう言ってくれたものの、見るからに怪しそうなカレーを食べて犠牲者にすることは出来ません!


「ていっ!」


「むぐっ!」


一瞬の隙を突かれて口にあおっきーの班のカレーが入る、仕方がなく食べるが食べてしまったことに後悔した


「カレー、これはカレーなの?なんかプチプチしてるよ。それに、うわぁぁ、辛っ!さやちゃん水!水頂戴!」


さやちゃんから水を受け取り飲み干した。それでも後から辛いのがきた!ハバネロ?なにこれ辛いしカレーはプチプチしないよ。もしかしてこれは古田君が作ったのかな?でもあおっきーは古田君に絶対、作らせないって言ってたよね


「これ、作ったの田中さんと三村さんだよね」


「いや、何かの手違いか田中さんと三村さんじゃなくて古田が作ってたみたいだ。うわぁあの2人に言えば良かった。古田が味覚音痴だって事を」


「後悔しても、もう遅いよ。」


「というわけで残りのカレーは、にのっちのカレーと交換でいいよね!」


「断る!」


「というかさ、そのカレーに何が入ってんの?」


江本君の問いにあおっきーが思い出しながら答える


「タラコとジャガイモとタマネギと、後は鷹の爪とプチトマト、にんじんかな」


だからカレーが辛かったんだ!それにプチプチの食感はタラコだったのか、内心でツッコミを入れながらあおっきーの話を聞く


「それは、ヤバイね。よくまぁ半分も食べたもんだ」


「あっ、そういや、にのっちに使ったスプーン、オレが使ってたスプーンだった」


「ん?」


「にのっちって人が使ってた物とか使える?」


「いや、私は潔癖症じゃないから大丈夫だよ」


人が使ってたスプーンを使えるかどうかを、聞いてきたのだ。もちろん彩乃は過去にも澤田とそのような事をしているので大丈夫なようだ。いつもなら、この前みたいに江本君が吹いたりするけど、今回はなんでか知らないけどさやちゃんと一緒に澤田君を叩いていた


「ちょっ、さやちゃん江本君!何してるの!澤田君は何もしてないから叩くのはやめて」


「あやの、コイツには喝を入れないといけないのよ」


「今回ばかりは俺もさやちゃんに同じだよ」


「どさくさに紛れてちゃん付するな。この爪楊枝が」


爪楊枝という単語に笑ってしまった。どうやら今の私のツボは爪楊枝みたい


「澤田が可哀想に見えるのはオレだけかな?」


一人、会話に置いて行かれたあおっきーは、古田君が作ったカレーを持ちながら独り言のように呟いていた





* * * * *




午後9時

研修だからといって遊んでばかりではない、この山奥まで来て私達は大きなホールに集まり勉強をしている。どうやらここにいる間の夜7時から9時30分までは担任から配られたテキストをこなさなければ部屋に帰れないらしい、もちろん9時30分までは生徒全員、部屋には帰れない、だからまだ終わってない子に教えたりしている

担任の千夏ちゃんから世界史と数学と英語を渡された。数学はもともと、得意なのですぐに終わり世界史は

ヘタ○アで覚えたことがあるから難なく出来た。そして問題は英語だ

英語は中学から苦手で今だにズルズルと引きづってる。うわぁ残り6ページもある、どうしよう。確か、さやちゃんって英語が得意だったよね。隣を見るとテキストを全て終え机に伏して寝ているさやちゃんがいた


「さやちゃん、英語教えて」


体をゆさゆさと揺らして起こす。いきなりチョップされた。痛い、さやちゃんって寝起き悪いのかな。それにしても痛かった


「澤田、あんたさっき、あやのに数学教えてもらったでしょ?その代わりにこの子、英語が苦手だから教えてやりなさい。それじゃぁおやすみ」


さやちゃんの後ろに座っていた澤田君にそう言ってもう一度、机に伏して寝てしまった


「数学教えてもらったし、オレでいいなら教えるよ」


「うん、お願い」


「なら、にのっちと一緒にオレにも教えてくれよ!ここが分からなくてさ」


話の横から入って来たのは澤田君の右隣に座っていたあおっきーだった


「あおっきーって確か頭よかったはずだよね?この前の英語のテストでも90点代だったし」


「それは偶然だよ」


爽やかな笑顔で言う奴が偶然だなんて信じられるか


「あおっきー、オレに教わる前にまずは古田を教えないとダメなんじゃないかな。ほら諦めて寝てるぞ」


「コイツはいいんだよ。それに、にのっちと一緒に勉強が出来るならオレはそれがい痛っ!」


どうやら机の下で澤田君があおっきーの足を踏んだらしい、あれでもなんで爽やかな笑顔なんだろう、ん?なんか爽やかじゃなくて黒い笑顔に見える気がする


「青木さん、まずは古田を教えないとな?」


あおっきーが苦手だとする呼び方で呼ぶと、あおっきーの体がビクッと反応し硬直した。そこまで青木さんって呼ばれるのが嫌なんだね


「ふっ、しょうがない。英語は諦めるとしよう。その代わり、にのっち、数学得意だよな!オレまだ終わってなくてさ、あと8ページもあるんだよね」


「じゃぁ、英語が終わっ」


「数学ならオレも教えてもらったし、全部(・・)分かるよ」


私がいい終わる前に澤田君が切り出した


「えー、澤田に教えてもらうのはなぁ〜」


2人の間に電気がショートするしたような閃光が見える。なんかこの雰囲気苦手だな


「二ノ宮ちゃん、ここのスペル間違ってるよ。AじゃなくてO」


「江本君、ありがとう」


澤田君の左隣に座っていた江本君が眠たそうな目で教えてくれた。というか、さやちゃんと同じで今まで寝ていたらしい、猫っ毛がさらにはねてハイパー猫っ毛になってる。あとメガネも外していた。メガネ掛けてないのによく、私の間違えが見えたね


「で、この単語が専門学校っていう意味で、ここが、動詞。それで、訳すと、《彼は1時間かけて電車に乗って専門学校に行きました》っていう訳になるよ」


江本君の教え方は先生よりも上手かった。丁寧で大切なところは赤ペンで線を引いたりテストに出やすいところまで教えてくれた


「江本君、ありがとう。もう6ページも終わっちゃった。教えるの上手いんだね」


「んー、いいよ。」


そう言ってまた机に伏して寝始めた。本当にさやちゃんと似てるな、やっぱり幼馴染だね。それにメガネを外しているせいか、それとも江本君が眠いのか、いつものふざけた感じはなくて、勉強が出来るかっこいいお兄さん的な感じにも思える


「「えっ、もう終わったの⁉︎」」


どうやら、江本君に教えてもらっていた時間、澤田君とあおっきーはまだ話し合っていたらしい。その時、9時30分の合図が鳴る


「うわっ、まだオレ数学が終わってない。にのっちヘルプ」


助けを求められても、私もそろそろ眠いので、あおっきーには悪いけど先に帰らせてもらおう。そうして私は寝ていたさやちゃんを起こして部屋に戻った



* * * * * *


夜10時

現在部屋にはさやちゃんと私の2人しかいない、本当はもう2人が部屋にいるはずなのだがどうやら友達のいる別の部屋で寝るらしいので今はいない状態である

部屋には2段ベッドが2つあり私が上でとさやちゃんが下というように寝ようとした


「あやの、部屋の明かり小玉にしてもいいかしら?」


部屋の明かりは大玉、中玉、小玉と分かれていて小玉というのは薄暗い明かりのことだ


「うん、もちろんいいよ。もしかしてさやちゃんって暗いところで寝れないの?」


「えぇ、小さい頃からね」


「もし、今いない2人がいたらどうしたの?」


「大丈夫よ。小型の電球を持ってきたから」


「そうだったんだ、そんな遠慮しなくてもいいのに、さやちゃんはもっと言ってもいいと思うよ?」


「ありがと。それじゃ、おやすみなさい」


「うん、おやすみ」


薄暗い部屋の中で私はベッドに入って数秒後に寝た

キャラクター説明 ~第5弾~


【田中 (みお)

・身長156cm

・メガネを掛けていて

背中の真ん中まである髪を二つに結んでる

・メガネはオレンジ色のフレーム

・童顔

・文芸部

・隠れオタク

・小学3年の妹がいる

・見た目は文学少女だが中身はぶっ飛んでる

・恋愛小説&漫画が大好きっ子

・妄想が激しい

↑暴走すると友人の香織に止められる



【三村 香織(かおり)

・身長158cm

・明るい茶色で肩までのショートカット

右側に1本の三つ編みをしている

・顔立ちは少し大人びている

・家庭科部

・テニス部の2年の藤村先輩が好き

・友人の澪のストッパーでもある

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