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11・研修1日目 ~山の中~


今回も後書きにキャラクター説明があります

4月も終わり5月の半ば、ついにこの日がやって来た。

そう、今日は桜ヶ丘高校の研修の日だ


「にのっち、おっはよー」


「あおっきーおはよ」


校門の前で突然、話し掛けてきたのはあおっきーこと青木君、彼とは班決め以来漫画を貸しあったりアニメの話をよくするようになった。今ではにのっちとあおっきーと呼び合う仲になっている。やっぱり漫画とアニメは万国共通だね


「集合場所は体育館だよね」


「おぉ、にのっちその荷物ちょいと貸してみ?」


荷物とは私が持っているボストンバッグのことだ。なんで?と思いつつも私はあおっきーに荷物を渡す


「よしっ!行こうか」


「行こうかじゃなくて荷物くらい私持てるよ、返して」


「うーん、普通ならありがとうって言うと思うけど」


あのくらいの重さなら私でも持てるし何より持ってもらうのが悪い気がする。返してもらおうとボストンバッグに手を伸ばすが、ただ空を切るだけだった。私は何度も挑戦してみたけどあおっきーは軽い身のこなしでなかなか捕まらない。しかも楽しそうに笑ってるし、この演劇部め、そうこうしている内に集合場所である体育館に着いた


「あやの、朝からどうしたのよ」


「まっつーおっは、あっごめんなさい松永様じゃなくて松永さん」


「青木さんいつからそんなキャラに変わったのかしらねもしかして研修でテンション上がったのかしら?」


さやちゃんもあおっきーと話すけど

どうも、まっつーと呼ばれるのが嫌らしくて


「わかった、わかった、謝るからさん付けはやめて下さい」


「分かったのならよろしい」


どこぞの主従関係だ。体育館には1学年が各クラスごと、縦に並んで集合している。あと少しで全クラスが揃うみたい

1学年は5つのクラスがあって私たちは32人だけど、他のクラスは38人と6人少ないのだ、その理由は実に簡単で、5つのクラスの中に1つだけ32人しか入れない教室がある。で、私はたまたまそこに入ってしまったということになる


「5組点呼ーはい並んだ並んだ」


列の先頭で研修委員の江本君が叫んでそれにクラスの子が従う。私も並ばなきゃ、油断していたあおっきーからボストンバッグを掻っ攫い手を引く


「えっ手繋いで」


「ほら、あおっきーも並ぶよ。並ばないと江本君が困るでしょ?」


あぁ、江本のためかと呟き項垂れる。集まった後は校長の長ーい話を聞いて学年主任からの話も聞きやっとバスに乗り出発した



* * * * *



バスの席は前から3列目で窓側に私、その隣にさやちゃん、通路を挟んで江本君と古田君、ちなみ澤田君は後ろの方で女子の一部に囲まれ中、顔にヘルプって書いてある。うわぁ、男子の視線が怖い、羨ましいとか爆ぜろとか聞こえるよ


「にのっち、松永さんポッキー食べる?」


「食べる!」


「頂くわ」


あおっきーが席と席の間からポッキーを差し出してくる。私は後ろを振り返るとポッキーを2本もらいさやちゃんに分けた、そう私の席の後ろにはあおっきーが席を2つ陣取って座っている。本来なら私の席の後ろにはあおっきーと澤田君が乗るはずだったけど、いつの間にか女子に流され後ろの席へと泣く泣く連れられて行ったのだ


「江本ポッキーいるか?」


「サンキューな」


「古田はプリッツ派だろ、はい」


「よくご存知で、おぉ新作のレバ刺し味だ」


レバ刺し味、どんな味だろ?気になるな。試しに1本貰って食べてみた。塩辛いかな?でも甘みがあって、うーん言葉に出来ないや。さやちゃんと江本君も食べたようで私と同んなじ微妙な反応、その前にレバ刺し味が売ってることに驚いたよ。古田君はおいしそうに食べてもう2袋目を開けている


「古田の味覚はズレてるからな」


あおっきーが言うには、チャーハンをおかずに白飯を食べたりピザと味噌汁の組み合わせ、フルーツゼリーにあたりめ、など普通に考えてあり得ない組み合わせが美味いと言ってたらしい


「料理は得意らしいのに味覚が残念だ」


嘆いている、あおっきーが嘆いている。どうしよ古田君の将来が心配になってきたよ



* * * * *



バスで山を3時間くらい登って辿り着いたのは辺りが山で囲まれた『桜屋敷』という桜ヶ丘高校専用の宿泊地、カステラのような建物が前後に2つあり、薄桃色の外壁の建物は私たちが泊まるところで、茶色の外壁の建物が食堂や体育館など室内で体を動かすことが出来る造りになっていた


「うわ、広いね」


荷物を置きに私たちが寝泊まりする女子の部屋を覗くと4人部屋だというのにかなり広かった。ちなみにこの部屋には私とさやちゃんといつも澤田君を取り囲んでいる内の女子2人が同室だ


「あやの、着替えなさいよ」


「あっ、そうだった」


さやちゃんに言われて私は桜ヶ丘高校のジャージに着替える。長袖と長ズボンの側面にピンク色のラインが入っていて右胸に校章の桜が施されている。とても運動しやすくてこれから行われる活動にちょうど良い



時刻は12時30くらい、建物を出るとクラスごとに分かれて早速、担任の千夏ちゃんから活動についての説明が行われた


「えーと。これから各班でカレーを作ってもらう」


カレーは定番だね


「ただし、材料はこの山の中だ!」


材料が山の中?どういうことだ、そう言って千夏ちゃんから、各班に番号の記された地図が渡された。説明によると、この山の中に番号の書かれた木箱があり木箱の中には、米・にんじん・玉ねぎ・カレー粉などのカレー作りに欠かせない材料が書かれた木の板がある。地図に書かれている番号を探し出し2時間以内にたくさん見つけその材料でカレーを作るというアドベンチャークッキングだそうです

ちなみに、地図には番号しか書いてないからどの木箱に何の食材が入っているのか分からない


「今から2時間後ここに集合だ、怪我はないように注意しろよ。じゃ解散!」


千夏ちゃんが良い終わったと同時にバラバラと班が山に入っていくが、私たち8班は山には入らず少し班会議中、リーダーは江本君


「最低限、米とカレー粉は確保しないとな」


「あんた、研修委員だからどの箱に何があるかわかるんじゃないの?」


「いや、それが俺も知らないんだよね」


「札にも枚数があるって千夏ちゃん言ってたよ」


「無くなったら、終わりだな」


「じゃぁ、まだ誰も行ってない遠くから探そうか」




山道は一応整備してあったけど、所々荒れていて歩きずらかった。山を登ること30分、途中で幾つかのグループかに出会ったが今、辺りには私達しかいない。それにしても江本君、最初に地図を見ただけでどこに箱があるか覚えたらしい、スイスイと先を進んで行く。ただでさえ迷子になりやすい私なのだから逸れたら大変だ戻れる自信がない


「あやの、迷子にならないようにね」


後ろを見ることなく私の前を歩くさやちゃんに言われる。うん、流石私の方向音痴をわかってらっしゃる方だ。すると、目の前に赤色の木箱が見えた。番号は36番


「木の板が減ってないところを見るとまだ、誰も来てないみたいね」


「何が書いてあるんだ?」


澤田君の問いに江本君が答えた。しかも微妙な顔をして


爪楊枝(つまようじ)


爪楊枝、カレーに関係なくない?いやここまで来て爪楊枝ですか。なんとも言えない空気に思わず笑ってしまった


「まだ、時間はあるわ。拓真、地図なくても分かるわよね」


「もっちろん、俺の記憶力を思ってるんだい」


「頼りにしてる」


「えっ」


クスッと笑うさやちゃんは私でもドキッとしちゃう程、魅惑的だった。鳩が豆鉄砲を食らったように固まる江本君、これが前に言ってたツンデレの『デレ』というやつかな


「なんて言うと思った?ばぁーか、私だってこのくらいの地図なんて簡単に暗記出来るわよ」


「上げて落とされた!」


多分、ここまで来て爪楊枝だったことに苛立ってるのかな、うんきっとそうだ。さやちゃんの顔にそう書いてある


「確かこの近くに12番の箱があったはずよ。じゃぁ、行きましょうか」


項垂れる江本君を引きずりながら私も迷子にならないよう慌てて2人の後を追って行く

ガッ


「二ノ宮っ!」


澤田君の声がした時にはもう遅い、焦っていた私は大きな木の根っこにつまずいて前のめりに転けそうになった

なったということは転けてはいない、なぜなら転けそうになった瞬間、後ろにいた澤田君に左手を引かれギリギリ止まった


「澤田君、ありがとう」


「いいよ、怪我ないか?」


「うん、大丈夫。澤田君が手引いてくれたおかげで転けずに済んだよ。本当にありがとう」


私の左手を見ると澤田君の右手と繋いだままだった。あっ、と言って手を離そうとすると澤田君の手の力が少し強くなった


「澤田、君?」


「ほら、また転けると危ないからこのままでいいかな」


このままというのは手を繋いだままという事らしい、ここは手を繋いでもらった方がいいのか、離した方がいいのか、でも澤田君に迷惑は掛けられないから


「ううん、大丈夫!今度はもう転けないから、それに澤田君に迷惑は掛けられないよ」


「オレ、迷惑だって思ってないし手、嫌だったかな?」


私の目を真っ直ぐ悲しげに見つめられる。そうなると断れないじゃないですか。やっぱりここは


「そこっ!いちゃつくな」


遠くからさやちゃんの大声が聞こえる。声の様子からするとかなり苛立っているようだ


「松永もあんな感じだし、行こ」


手を引く澤田君の後ろ姿はかっこよかった。こんな感じだから女子にモテるんだろうな

さやちゃんたちの元に向かうと今度は茶色の木箱があった。そして肝心の材料というと


「カレーナン、だね」


「爪楊枝よりかはまだマシかしらね」


「なんだ、この敗北感」


またも悲しみに暮れる江本君を引きずりながら次の木箱がある場所に向かう


「二ノ宮、転ばなようにな」


「本当に大丈夫だってば」


悪戯っ子に笑う澤田君に私も笑い返す

キャラクター説明 ~第4弾~


【青木 友晴(ともはる)

・通称 あおっきー

・身長 175cm

・彩乃と同じクラス

・演劇部

・髪は赤みが掛かった茶色

・制服の中にオレンジ色のパーカーを着てる

・周りからあおっきーと呼ばれるため

さん付けや君付けは苦手、呼ばれるとぞっとする

・仲良くなるとあだ名で呼ぶ

でも友人の古田は古田

・小学3年の妹がいる

・そこそこ頭と顔は良い

・将来、俳優志望

そのためミュージカルや演劇をみたり

とある劇団に入って活動中


【古田 和宏(かずひろ)

・身長173cm

・少し青色を帯びた黒髪

・松永 小夜と同じくテニス部

・1にテニス2にテニス3にテニスで4が友人

というテニス馬鹿

・澤田まではいかないが爽やか系

・味覚音痴

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