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それは適切に要約された話だった。それを聞き、あぁそうだったのか、と当然の、けれど悔しい想いを礼御は感じずにはいられない。
「そりゃあ、俺に危険が及ぶなら、そうするよな」
礼御はどこを見ているわけでもない視線を蓮武に向け、その真実であろう事実を受け止めた。この期に及んで、この男魔術師が嘘をついていると疑うほど、礼御の心はひねくれてはいなかったのである。
「そう、気を落とすな。確かにその力はお前が独自に身につけたものではないが、先天的な魔術師というのは大抵そんなものだ」
「……そんなものですか」
礼御は気を落としていたつもりはなかったものの、他者から見ればそれは落ち込んだ姿に見えたのだろう。確かに礼御の中にちょっとした期待外れの心情はあった。それは文字通り自身の特別性への期待である。誰しも一度は、そしていつしかと思い描くことだろう。自分だけの能力、自分だけの価値観、自分だけの運命。挙げ始めるときりがない。しかしやはり特別なんてものは、そうそう己が身に降りかかるものではないのだ。
「あぁ。そんなものだ。大事なのはどう発展させるかということだ。歩みを止めないことが、魔術師として何より重要だぞ」
「……魔術師を名乗るつもりは――」
そこで礼御は言葉を止めた。
事実はあまりにもつまらないものだった。
心のどこかで感じていた特別な自分。声を大にして、それを言うつもりはなかった。されどどこかで望んでいた主人公のような自分。
けれど現実は、新たな自分を発見するたびに、それが一般的であることを無粋にも押し付けてくる。
魔術の存在を知ったときは嬉しかった。――知ってしまえば、それはただの一般である。
不可解な異能が宿って、特別感は再浮上した。――礼御という個体が、絶対的に特別ではないことの象徴でもあった。
落胆するつもりはなかった。礼御だって妄想ばかりに囚われる年齢ではない。それでも今回だけは、自分が有象無象ではなくなったのではないかと期待せずにはいられなかった。
大学に入り――いや、それ以前から礼御は知っている。歳をとるたび、多くの人に出会うたび埋もれていく自分という存在。それは努力で跳ね除けられるものではなかった。
結局は、そういうことなんだな。
礼御はそう思って、軽く笑を零した。
それでも礼御は決して嘆くことはしない。
だって今回は、誰かを助けることができたしな。あれは十分――主人公みたいだっただろ。
礼御はその事実を思い出して今度はしっかりと笑顔を作ることができた。
そんな礼御の様子を見ていて蓮武は小さく言う。別に礼御に聞かせたかったわけではない。されど彼の口からは不意にそんな言葉が出ていたのだ。
「……そうでもないさ」




