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玉藻前の尾探し譚  作者: 歌多琴
5 二人の魔術師
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-4

 有頂天な玉藻と字深蓮武のやりとりは最低限しか行われなかった。


 玄関先である。玉藻は字深 蓮武に「元気にしてたか」やら「相変わらずでかいな」など懐かしの言葉をかけるが、字深 蓮武の意識のほとんどが別の者に向いていた。玉藻の反応を見る限り、初手で殺されたりはしないだろうと恐る恐る礼御は玄関に向かった。また礼御の服の裾を握って紅子もついてくる。


 はしゃぐ玉藻の言葉を適当に流す魔術師はゆっくりと近づく礼御を待った。そして礼御、玉藻、紅子、蓮武が玄関に集まった。扉は開けっ放しである。ご近所さんに見られたら、また不審がられるな、と礼御はこんな状況でも他人の目を気にする余裕を失っていないようだった。


「蓮。ようやくあたしの前に現れたんだな。お前の悪名は時折耳にするぞ。さすがだ」


 どうやら玉藻は字深 蓮武のことを「蓮」と呼ぶらしい。馴染みがあるのは真実のようだ。


 言葉が止まらない玉藻に静止をかけたのは、他でもない蓮武である。


「玉藻。懐かしいのはわかる。けどな、今日は少し急いでいてな」

「ふん」


 玉藻は蓮武の言葉に不貞腐れることもなく、「何をいまさら」といった様子である。

「用があるのは礼御か。何が起こっている」


「さすがは徳間の血を引くだけはある。無論いろいろな意味でな。問題は一つずつ解決する他ないだろ」


 玉藻はすべてを理解しているわけではない。しかし礼御や紅子よりは蓮武の言葉についていけているようだった。相棒とは嘘ではないのだろう、と礼御はなんだか寂しさを覚えてしまう。


「まったく、お前らしいよ。ピンチには駆けつけるってか」

「その言い方は正しくないさ。……今回俺がそいつを助けるのは正式な依頼を受けたからだ」


 そう言って蓮武は礼御を指差す。それに促されるように、玉藻は横目で礼御を見ると、すぐさま視線を蓮武に戻した。


「依頼ねぇ。いつものあの――『可愛い後輩、云々』っていうセリフはいいのか? お前ららしくもない。どういう風の吹き回しだ」

「……恩人なのさ。頼まれたら断れない」

「蓮も人の子だものな」

「当然さ」


 玉藻は玄関の扉にもたれかかると、腕を組んで言う。その顔がとても楽しそうだったのを礼御は妙に目に焼き付いた。


「それで、あたしは何をすればいい?」

「別に何も――とりあえずはな。お前が出る必要はない。人一人くらいなら俺でも守れるのでな」

「……そうか」


 玉藻はなおも不敵な笑を含んでいた。蓮武もまた右の口元だけを上にあげ、偉そうにニヤついている。


「そういうことだ、礼御」


 ここで名を呼ばれるとは思っていなかった礼御は、すぐさま玉藻の方を見る。玉藻はくいっと顎で蓮武を差した。それに従い礼御は蓮武を直視する。


 長身でがたいも良い。まさに大きな男と呼べるそんな彼は、曲芸でも見ているような目を礼御に向けていた。


「何がそういう事なんだ」


 礼御はそんな彼らのやり取りと悟った様子に、逆に腹を立てつつある自分に気が付いた。蓮武のそれでいて見透かしたような瞳に、礼御は自分の視線を飛び込ませて玉藻に問うた。


 そんな礼御の態度に玉藻はちっぽけな事実だと言わんばかりの口調で言い放つ。


「行けばわかる。分かり切るわけではないだろうが、それでもお前の頭に引っかかるいくつかは外れるだろうさ」

「……」

「行ってこい。今回の案件に終止符を打ち始めてもいい頃合みたいだ」


 礼御はそれを送り出しの言葉とし、蓮武の背中について行くのだった。

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