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玉藻前の尾探し譚  作者: 歌多琴
4 赤しゃぐま、愛を語る
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一つの後日談

 一つの後日談。


 礼御は里愛の仕切っている喫茶店に訪れていた。いつものように彼に連れはおらず、また店内には中年の男性とカップルが一組いるだけである。


 里愛はおそらく独特の恋愛観を持っているだろう。それは礼御の勝手な推測なのであるが、人の顔の良し悪しについて、あれほど熱く語る人のなのだ。多少の変化球にも臆さず着いてきてくれうのではないだろうか。


 つまり礼御は彼女の意見を聞いてみることにしたのである。話題は『エロゲ』についてだ。


「そういや、最近知り合った女の子が十八禁の――性的描写のあるゲームを好んでやっていたんだよ」

「…………なんですか、いきなり。ひどい話題ですね」


 億すことなく彼女は礼御に非難の視線を向けた。途端に言葉を出せなくなる礼御であったが、ここで引き返すわけにもいかないと、話を続ける。


「俺だってそう思うけどさ。わりと面白いことを言って、どうにかエロゲを肯定してくるんだよ」

「……へぇ」


 里愛が少し乗り気になるのがわかった礼御である。そしてエロゲをやっている女の子について、深く追求されなかったのは幸運であった。


 そうしてエロゲをするにはどんな意味があるのかを、礼御は自分が聞いたままに里愛に話した。つまりは有能な雄こそエロゲをする、といった話である。


 それを聞き終えた里愛は思いのほか楽しそうであった。「なるほどね」なんて言って、エロゲ好きの妖怪、紅子の意見を真っ向から否定することはしないようであった。


「それで里愛はどう思う?」


 里愛は「そうですねー」と首を捻ると、自身の意見を口にする。


「その方の言いたいことは確かに一理ありますね」

「一理あるのか?」

「そりゃそうですよ。もてたいと言うのは誰にでもある想いだと思いますしね。でも、もしも自分が付き合っている男性にそのような趣味があるのは嫌ですね」


 まぁそうだろう、と礼御も思う。疑似的にとは言え、浮気に近しい行為であることは否定できない。


「あくまで一般的に、つまり例外を除けば、すべての女性がそのような趣味を嫌がると思いませんか?」

「まぁ、そうかもな」

「これは私の意見ですが、私はエロゲなんてする男性とお付き合いはしたくありません。どんな曲論――言い訳をされたって、私にとっては浮気と同じです」


 そこで里愛は一呼吸置くと、笑顔で言い切るのである。


「エロゲなんてしている男性なんて、その時点で男性として魅力ありませんよ。その時点で雄として失格ですね。女性の多感で繊細な愛情を、そんなゲームごときで逸らせたりはしませんよ」


 まったくもって否定のしようがない、清らかな意見であった。やはり間違っているのは紅子に違いない。


 間違えても自分は疑似的な恋愛にはまることのないよう、心に決める礼御であった。


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