*十二
その岐路はいきなり目の前に現れたのです。
今日も我が子は神隠しにあったように消えていました。私が溜息をつきながら、また逢魔が時の時分に家を出ようとしたそのときです。
今まで私の前に姿を現そうとしなかったモノ達がこぞって姿を現しました。
異様な光景でした。今まで見たこともないようなモノ達。猫の妖怪。手のひらサイズの小人。翼の生えた小さなトカゲ。その他にも辺りを見渡せばきりがありません。
そしてそのどのモノ達が傷を負っているのでした。
驚きは恐怖に飲まれます。
すぐさま私はあの公園に駆けました。近づくにつれ我が子の泣き声が聞こえます。また時刻を置き去りにしたような暗闇が広がっています。
私はとっさに我が子の名を呼びました。しかし返事はありません。私の後ろには負傷した妖怪・精霊・魔物たちが歪んだ顔でついてきていました。
あの子の声はこちらまで届いているものの、私の声はその漂う黒色に吸収されているのではないか、そんな錯覚に囚われました。
結局息子を助けることはできたのです。幸いにも五体満足でした。
しかし今までの異形を愛する心はひどく犯されていました。
日の光を遮っていた暗闇の根源にはある魔物がいました。それが息子を食らおうとしていたのです。異形にも様々いますので、中には人の肉を食らうモノもいるわけです。そのことを私はもちろん知っていたのですが、それでも息子の異形を味方につける能力に、私はどこか安心しきっていたのでしょう。
その能力も万能ではありません。決して異形を意のままに操る、そんな魅了の仕方ではないのです。ただ、好意的に思われたり、どこか憎めない、そばにいると安心する。彼が引き継いだ能力と言うのはそのような曖昧な、けれど素敵な能力でした。
だからこそ、極めて端的な悪意を持って近づけば、その能力に影響されることなく息子に近づけるわけでした。
結果、息子は裏切られたと感じたでしょう。また今まで身近に感じていた存在が、ほんの少しの変化で、一転して恐怖を与える存在だということを、彼は死の恐怖を持って理解したようでした。
――嫌だ! 怖い! 怖いんだ!
――だって友達だと思っていたんだ。でも・・・でもあいつは裏切った!
――もういらない。こんな力、もういらない!
――僕はもう、あんな奴らを見たくない! 話したくない! 関わりたくない!
――助けてよ!
悲痛な叫びでした。あまりにも現実的な残酷さは、幼い心で受け止められるものではありません。
息子はそれきり異形のモノを警戒し、忌み嫌うようになりました。それでも彼の力は異形を惹きつけてやみません。自身の意と反する彼の力こそが、彼の精神を蝕みました。
そして衰弱していきます。常に恐怖に囚われ、目を閉じることを異様に嫌がり、幼い精神のすべてを恐怖を見張ることのみに使用するのです。
日に日に衰弱し、生きることに苦痛を見出したしまった息子。その力を消すことはおろか、封じることもできない、私は情けない親でした。
そうして遂には家族心中も考えた頃の話です。
一つの奇跡的な希望に辿り着くのです。




