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「徳間さんって付き合っている方とかいらっしゃいます?」
普段礼御はシャープというこの喫茶店で、小説を読むか、携帯をいじるか、里愛と話すかといった行動で時間を潰していた。
本日は里愛の方から話題を振ってきたため、おしゃべりで時間を使うことになりそうだった。またそれは礼御にとってもありがたく、無下にすることなく話題に乗っかる。
そして今日は恋愛に関する話題らしい。
「特にいないよ。恋愛には疎いんだ」
「へぇー」
礼御の返答に、里愛は関心があるのかないのか、よくわからない素振りであった。自分から聞いてきたのに冷めてるな、なんて礼御が思っていると、里愛は内容を少し変える。
「大学生なんて、ほいほい恋人ができては別れてを繰り返しているのかと思ってました」
なんだその最悪イメージ。
そうは思っても礼御が大学に入る前に抱いていた大学生の印象というものも似たりよったりであった。
しかし現実は違う。
「合コンとか、しょっちゅうやってそうとか?」
礼御が里愛に尋ねると、里愛は「そうそう」とあっさり肯定した。
「合コンって楽しいんですかね」
「さぁ? 残念ながら俺は参加したことないな。誘われたことも数回しかない」
礼御の乏しい体験談に対して、里愛は興味深そうに掘り下げてくる。
「なんで参加しなかったんですか? 誘われたなら、一度くらい行ってみたらいいじゃないですか」
「行ってみたかったのは事実なんだけどね。たぶん自分のキャラでは盛り上がれないと思って」
「そうですか? 徳間さんは臨機応変に女の子の機嫌とったりできそうですけど」
「ひどい人間像だな」
年上の大学生なんてそんな風に見えるものなのだろうか。確かに大学生になってから、いろんな意味で行動範囲がぐんと広くなった。ゆえに里愛から見た礼御というのはそういう人間に見えるのかもしれない。
「でもでも、いい意味ですよ? 遊び人だなんて言ってるんじゃないです」
少し慌てて里愛が訂正する。もちろん礼御だって、そんな意味で言われたのでないことくらい察することができた。
「だったらいいんだけどね。――それに合コンに参加するのってちょっと嫌なことがあってさ」
「といいますと?」
「だってさ、合コンに参加するってことは、つまり恋人が欲しいですって言ってるみたいじゃないか。そりゃ参加はしてみたいけど、そこまで彼女が欲しいかと言われればそうでもないしね。それってなんだか失礼だろ」
里愛は納得したように礼御の意見を聞き入れた。
「それはそうかもしれないですね。ていうか、徳間さん彼女欲しくないんですか?」
そう問われて礼御は少々悩んだ。欲しくないわけではない。異性に興味がないわけではない。無論同性にしか興味がないなんてことは断じてなかった。
「んー、だってそれは出会うってことが大事でしょ。欲しがれば望むものが手に入るなら頑張るけど、実際そうじゃないし。欲しいなんて思わなくても、出会うべくして出会った人を欲しいと思えればそれでいいかなって。出会いの場としては合コンも別にいいけど、俺は合コンで運命の人に出会いたくないかな、なんとなく」
礼御の意見に里愛は感心していた。しかしどこか哀れそうな表情であったのが気になった。
「徳間さんは恋愛勝者ですね」
聞きなれない言葉であった。礼御がそれについて尋ねると、次に里愛は意地悪な笑を浮かべて説明する。
「つまりは、頑張らなくとも運命の人には出会えるし、出会えれば手に入るって言ってますよ、それ。もっと言えば、合コンなんかしなくとも、女なんて手に入るって言ってます」
「え? そんなふうに聞こえるか?」
礼御が弁解するためさらに続けようとすると、里愛は手のひらを礼御の方を向け、礼御の口の動きを静止させた。とりあえず私の意見を訊けということだ。
「聞こえは悪いかもしれませんし、合コンしている人を馬鹿にしているように聞こえるかもしれませんが、徳間さんくらいの男性なら間違いではないですよ」
「……」
礼御は黙って里愛の話を聞くことにした。
「それだけ自分に自身がある。勝者の風格ですね。徳間さんってわたしの嫌いなタイプの男性ではない気がします」
好きなタイプと言われるのではなく、嫌いなタイプではないと言われるのはわりと新鮮である。ここで里愛の嫌いなタイプについて教授されることになる礼御であった。




