*十
遠い民家から聞こえるはずもない苦しみの声が上がるのを、それでも彼女は感じていた。
女魔術師は一人、暗い森の中準備を進める。
ようやく全身の一部を現したそれは神々しいと言っても過言ではなかった。いや、現に神に近しいモノであるはずだ。このモノにはそれだけの力がある。
それを具現するように、辺りの空気に一種のエネルギーを感じずにはいられない。それを吸い込むと、肺が圧迫されるような気分になる。
現にそれは――何と言えば良いのだろうか――妖気、瘴気といった目に見えぬ力の集合として辺りを漂う。いや、この言い方も正しくはないはずだ。……そう。それは神気という表現が適切に思える。
それらにあてられて、いわゆる拒絶反応に似たそれで近隣の者たちは苦しむのである。しかしそれも当然のことだ。こんなか細い楽園に安寧と住む者にとっては良い刺激……だろう。今一度本来の在り方を思い出せばいい。
女魔術師は腰に付けたポーチから紙束を取り出し、その一枚を一方の手で握ると、その他を全て空に投げ放った。それらはまるで木の葉のように舞い、そしてそれの周りを囲んだ。
一人の少年が生んだその存在が悲しく微笑む。




