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それから礼御は「そろそろ連れが待っているだろうから」とコスプレ衣装から元の服に戻ることにした。
先程は覗きの現行犯であった水保も今回はおとなしかった。きっと自分の変態をさらけ出して気分が良いのだろう。
礼御は着替え終わると、感慨に耽っている水保に尋ねる。
「水保さんはこの変に住んでいるのですか?」
ぼんやりとした表情で水保はそれに答える。
「あぁ……、そうですね。今はこの辺にいますかね。何かと便利ですし」
便利。この辺は確かに様々な店が並んでいるから便利ではある。そういう考え方は妖怪なんかも一緒なのか、と礼御はなんとなく思った。
「コスプレ衣装がある場所ってこの店くらいですからね」
そういうことね。
礼御はもう少しで大きな溜息をついてしまうところだった。コスプレするのが好き。それ以上にコスプレ姿の人を見るのが好き。一般人の目に水保は映らないのだから、この場所はそれはもう離れなくないに違いない。
「じゃあ、またこの辺りに来れば会えますか?」
「ええ、会えると思いますよ」
水保はようやく出会った当初の頃に戻りつつあった。
結局のところ、良し悪しはあれ、自分と違う価値観を持つモノとの会話は面白かった。
礼御が「また訪ねます」と水保に告げてその場をあとにしようとしたときである。水保は「あっ」と小さく声を挙げた。
なんだろう、と礼御が水保の様子を伺っていると、水保はポツリと呟く。
「やっとわかった。この匂いは……そうですね」
礼御の体臭のことなのだろう。しかし何に得心したのかよくわからない。
礼御は水保の今の発言について尋ねるが、水保は適当に誤魔化すばかりだった。
「ほら、お連れの方が待っているのでしょ」
水保はそう言って礼御を見送ろうとした。礼御は腑に落ちない気持ちであるも、追求しても状況は変わりそうにないと思い、その言葉に促されることにした。
「では、また会えればいいですね」
「はい。そのときはこっちの衣装を着てください」
そう言って水保が指差したのは、先ほどまで礼御が着ていた衣装よりだいぶ生地面積の大きなものだった。
礼御は苦笑混じりに答える。
「――気が向けば、ですかね」
「では、そうなるよう頑張りますかね」
水保は笑顔であった。
「じゃあ、また」
礼御が片手を上げて別れを告げると、水保は「はい。お連れの方によろしく言っておいてください」といって礼御を見送った。




