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玉藻前の尾探し譚  作者: 歌多琴
3 蛟、ファッションを語る
54/152

*八

 男魔術師は一人、部屋の中で着々と準備をしていた。


 辺りには先のとがった鉄の棒が転がっており、手のひらサイズから、彼の腕の長さほどあるものまで大小長短様々である。それは彼が魔術を使用する際に用いる道具であった。普段より懇切丁寧に、状態を確認し、使えそうにないものを排除する。また鉄の棒を削り、今回の依頼に必要であろう大きさのものを作りだしていた。


 彼はそのようなちまちました作業を苦に思う性分であった。本来ならこれほど慎重に自身の魔術具の状態を確認なんてしないのだ。しかし今回は状況が状況である。万が一、魔術具の不備で失敗したら、依頼主に何を言われるか想像したくもない。


 自分のスタイルにあった依頼ではないことは明白であった。普通この手の依頼は断る。しかし依頼主が恩師だというのなら話は別だ。


 溜息を定期的に漏らし、彼はこの依頼を受けたときのことを思い出す。




『あるモノを封印しなおしてほしい』

「・・・それは私向きではありませんね」


 彼はその依頼の簡単な説明を電話越しに聞いたとき、自身の性格・魔術的に自分には不向きだということをはっきりと述べていた。それなのにその相手は彼にその事案を押し付けようとする。


『君の成長にもつながるさ』


 女性の声である。穏やかで彼の心境など掌握しているに違いない。


 彼は悟りきった口調で話し始めた。


「そうかもしれませんが・・・。単刀直入に申し上げるなら、嫌です。お断りしたい」

『そういわずやってくださいな。私は君が適任だと思います』

「私はそうは思いません」

『君は相変わらず嫌なことは嫌だと言うね。それは良いことなのでしょうが、それでも嫌なことを経験することも大切だと思いますよ?』


 いつもそうだ。魔術の師弟として付き合いがあったときも、自分が嫌だというのを承知で押しつけてくる。


『きっと最終的にはやって良かったと思いますって』


 まさにその通りだったから困る。男魔術師は自身の経験を思い出し、口を一文字にして話を聞く。電話越しの女性の声から詳細を聞かされ、彼はやはり自分向きではないと判断した。聞けば聞くほど、自分の得意とする魔術とは方向が似通っているものの明らかに違うのだ。間逆ならまだ良い。似通っていながら、違うというのが問題なのである。


「それはあなたの方が適役ではないですか? 少なくとも私よりは」

『少なくともあなたより私が適役と言うのはあり得ませんね』

「・・・・・」

『とりあえずお願いしましたからね』

「まだやるとは言っていません」

『では気が向けばお願いします。気が向かなくとも、気に止めなくて良いですから。最悪、こっちで何とかできるでしょう』

「またそのような言い方をする」

『だってこう言えば、君はやってくれるでしょう?』


 相変わらず流水のように掴めそうで掴めない女性であった。魔物・妖怪より達が悪い。


「・・・気が向けば行います」

『助かりますよ』

「勝手に取り消しても怒らんで下さいよ」

『もちろんです』


 男魔術師は電話越しの相手に分かる様に溜息を吐き、電話を切ろうとした。


『あ、そうそう―――』

「まだ何か?」

『ええ、もしこの事案を引き受けてくれると言うのなら、追加でお願いがあります』

「・・・・何です?」

『そんな難しいことではないですよ。封印の際には―――』

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