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玉藻の用事とは何か。玉藻はある場所に連れて行けと言った。そしてその結果から言うと、コントローラーを買いに行くよりもひどい場所まで、礼御は自転車をこがされたのである。
そこは礼御の人生では未だ入ったことのない空間だった。
アニメや漫画やそれに関したグッズを販売している、オタク御用達の専門店である。
とある商店街の一角。五階建ての建物の最上階にその店はあった。一階は普通の洋服店、二、三階はネットカフェ、四回は英会話教室をしているようだ。そんな中、いやそんな上の五階である。
異質。
礼御から見たらその一言に尽きた。電波ソングが流れ、アニメの女キャラクターのパネルが等身大で置いてある。中を見回ってみると、見たことない雑誌がズラリと並び、わざわざアニメキャラをプリントしなくともいいだろうと思える日用品がグッズの一つになったりもしている。
礼御の右頬は知らずのうちにひくついていた。オタクはキモイなんて、よく耳にしていたが、なるほどそれも頷ける。この異質さで高揚する玉藻の姿を見ていると、とっさにキモイという言葉を漏らしてしまいそうだった。
これがカルチャーギャップか、と礼御はその異次元さに心が廃れていくように感じてならなかった。
一方玉藻は先にも述べたように、まさに水を得た魚のような言動である。こちらも一言で表現するなら、とても楽しそう。それに尽きた。
そんな彼女に対して、ちゃんとアニメ文化の深部まで知らずに「キモイ」を言い放つのはどうにも気が引けた。
が、無理なものは無理である。
「玉藻、まだ結構な時間いますか?」
「もち!」
もち……て。お前そんなキャラだったか?
礼御は、意味はわからないが悲しい気分であった。
「じゃあ、ちょっと外に出ていていいかな?」
「おう、いいぞ」
玉藻はとある場所を指差した。
「でもあまり遠くに行ってもらうのは困る」
「なんでだよ」
「理由なんてどうでもいい。とにかく近くにいてくれ。あっちに休憩できるスペースがあるからそこにいてくれ」
そう言うと玉藻はこの異次元の奥深くへと消えていった。
今の自分では彼女を追えない。と、特に悲観的な場面でもないので、しれっと礼御は玉藻の指した方向、休憩できるスペースとやらに出向いた。




