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玉藻前の尾探し譚  作者: 歌多琴
2 猫又、美を語る
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-15

 そこで真夕が見る霊に関する話の区切りとなった。礼御が現時刻を確認すると、もう良い時間である。しかし礼御にとっては考え出すと面白くて仕方のない題目なのだ。


「少し話が戻りますが」


 礼御が話を戻したい意思を魔術師に伝える中、うつらうつらとしている空子であった。年相応で可愛らしい。


「肖像画がどんな魔術的能力を見いだせるかっていう話をしたじゃないですか? それじゃあ、風景画や、抽象画はどうなるんですかね?」


 礼御が気になっていたのは特に抽象画についてである。記憶に新しい作品というのが、もちろん抽象画であったためだ。


「それは自分で考えたほうが早いんじゃないか?」


 葵は未だ生き生きと絵画に関する魔術師について話す礼御に飽きているように見えた。これ以上話し始めるとキリがないとも考えたのだろう。葵はぼんやりと「私は美術に疎いと言っただろ」と言った。


「抽象画なんてかなりわかり易いだろうに」


 それでも葵がそのように促すのものだから、礼御は抽象画にどんな能力が付加できるか考え始めるのだった。


 抽象画。それは作者の心情を描いたもの、と表現することが無難だろうか。作者の心の内。どんな突飛な世界でも絵という方法で顕わにさせる。また想像、妄想としか思えない、現実にはありえないモノを描くこともよくあるのだ。


 しかしそこで礼御は気がついた。今自分が考えた『現実』とは、自分の踏み出した『現実』と差異がある。今までの『ありえない』は、今では『ありえる』かもしれない。そうなってくると、礼御は抽象画というものに新たな価値を見いだせるような気がしてきた。


 抽象画を見たとき、自分はどう思うだろう。礼御は考えた。


 例えば、偶像の生き物を描いた絵。こんな生き物はいないと考えるのが普通かもしれないが、それでも本当にいるのだと信じることができればどうだろう。そして本当にそれを見つけることができたなら? それは魔術師の第一歩に違いない。―――格好の良い言い方をするならば、能力覚醒の促進作用とでも言えば良いだろうか。


 例えば、異世界のような景色を描いた絵。もしかしたらそんなこの世界には、そんな過去があったり、未来があるのかもしれないし、また世界のどこかでは実際に起きていることを描いただけなのかもしれない。それを格好良い言い方にするなら―――。


 礼御の思考は、ゴンっという音でいきなり遮られた。

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