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玉藻前の尾探し譚  作者: 歌多琴
2 猫又、美を語る
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-11

「それで何か変わったことはあったかい?」


 三人はローテーブルを取り囲んで――実際空子は葵のすぐ隣であったため、対面してというほうが正しいが――座ると、葵はいきなりそう切り出した。


 それでは何から話そうか、と礼御は迷った。あれから数日だというのに色々あった。まずは狐の妖怪である玉藻と出会い、共同生活を置くことになったこと。また猫の妖怪とも知り合いになった。それから真夕とのやり取りもその一つかもしれない。


「まぁ、一昨日の今日で何かあったとは、思えないけどね」


 葵は笑ってそう言うものだから、礼御は少々呆気にとられた。それがあるのだから、仕方がない。


「なんか……猫の妖怪と知り合いになりました」

「……は?」


 礼御は一番気楽に話せそうなミネリとの出会いについて葵に報告することにした。それを聞いた葵は感心――そのように礼御には見えた――して、詳しい内容を話すよう礼御を促した。それに従い礼御は猫妖怪のミネリとの出会い、それからどういった行動をしたかを大まかに話す。


 葵は興味があるのかないのかよくわからない、なんとも適当な反応で礼御の話を聞いており、その後呆れたように言う。


「妖怪とデート……か。君は何をやっている」

「いえ、別に。……困っていたから助けただけ、ですかね」


 しばしの沈黙。空子は目を伏せている。眠たいのだろうか。


「あのな、君はこの世界の在り方をよく理解していないのだろう?」


 その葵の言い方には棘があった。妖怪なんて困っていても見て見ぬふりをしろと揶揄しているようにも聞こえる。


 それはミネリと知り合いになった礼御にとっては、気分の良い言い方ではなかった。だから何かしらの反論をしようと礼御が口を開いたとき、葵は静止をかけて続けた。


「妖怪と知り合いになるなと言っているわけではない。安易に知り合いになるなと言っている。今回は無害であったからよかったものの、無論害意をもって君に近づく妖怪がいてもおかしくないだろう」


 そう言われると礼御にとって受け止める他ない事実であった。


「浅はかだとは思わなかったのか?」


 どうやら魔術師は呆れ半分、怒り半分のような感情らしかった。しかしなぜだろうか。単純に礼御の行動に腹を立てているだけに見えないのだから、魔術師というのは不思議である。


 礼御はその魔術師の真っ当な言い分に少し反省した。しかし自らの勘をたよりに行動し、結果自らを危険に陥らせるような出来事には出くわさなかったのだから、つまりは正解なのではないかと内心ひねくれてもみた。


 それでも礼御が「すみません」と一言謝ると、葵は「別に私は困らないから、謝られても仕様がない」と言ったあと、「それでも」と少しだけ礼御の行いをフォロー続ける。


「結果、害はなかったようだし、恩は売っておいて損はないかもな。その過程は愚直すぎるが、君の行動は正しかったのだろうね。しかしいきなり妖怪と友好関係を築けるとは、いささか驚きを隠せない」


 礼御が感じた通りであった。なんだ、結局はよかったじゃないか、と多少傲った気分になる礼御を察知してか、葵は礼御に釘を刺す。


「だからと言って、今回のような行動ばかりしていると、痛い目をみるぞ」


 空子のジト目が一瞬礼御を見た。口元が笑っている。きっと怒られていい気味なのだろう。礼御は自分より小さい子に自分が怒られている姿を見られていることに恥ずかしさを覚え、再度短い謝罪の言葉を述べると、葵は小さく手を上げ、妖怪の話をそれまでとした。


「それで、まさか自分に危害を加えようとする人物などはいなかったわけだね?」

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