【その3】兄弟よ〈ビデオの秘密〉
予告通り兄弟ネタになりました。
オレには随分歳の離れた兄ちゃんがいる。なんとオレより14歳も年上だ。まるでサ○エさんとカ○オ。その兄ちゃんは婿に行ったので今うちにはいない。
つまりマス男さん(婿養子)ってことだ。
『そんなに歳が上のお兄ちゃんがいていいなぁ』
と友達にはよく羨ましがられるが、こんだけ歳の差があると下手をすれば “親子” に見られてしまう。
それはママが若くして兄ちゃんを産んだからじゃなく、逆にオレを産んだのが遅すぎたからだ。
だって、45歳の高齢出産ですから〜!
若き日の過ちならぬ、――老いし日の過失。
あぁ、それは罪なのか?オレはその運命の十字架を背負って生きて行かねばならないのか〜!?
アーメン……(意味不明)
それはさて置き、オレと兄ちゃんにまつわる兄弟メモリアルを勝手に語らせてもらう。
例え聞かなくてもいい、黙ってただ――読んでくれ……
まだ兄ちゃんがうちにいた頃、DVDを見ようとオレが棚の中を探しているとその奥にビデオを発見した。
(うわぁ〜ビデオだ! すげぇ〜昭和の香りがする〜ぅ)
そのビデオのラベルにはタイトルらしきものが書いてあった。
(一雄専用 “THEダンディズム” ?兄ちゃんのビデオか)
それにしても何だか怪しいタイトルだった。オレはそのビデオが妙〜に気になり、もの凄〜く見たい衝動に駆られた。
(何が入ってるんだろう〜〜〜!?)
そしてそのビデオをケースから取り出すと本体にもラベルが貼られ更に別のタイトルが……(“オレビデオ” ? すげ〜〜ツメまで折ってある!)
ダビング防止対策までしてあるし余程大事なビデオなんだろう。そう考えるとオレは余計にそのビデオが見たくなったが見付かるとママに怒られるので、素早くパパの書斎に潜り込んで試聴することにした。
(何だよこれ……釣りばっか?)
再生してみると延々と毎週土曜にやっている釣り番組が録画してあった。
(兄ちゃんのダンディズムって……)
オレは飽きて来たので4倍速で早送りしてみた。
――すると……
(うわッ!? ちょちょちょちょちょっと……何これ!?(赤面)
見てはいけない物を見てしまった。
テープの残りが半分ぐらいまで来ると突然、釣り番組から画面が切り替わり何故か “アダルト” な画面に……
(兄ちゃんのダンディズムって……)
これはきっと兄ちゃんの置き土産だ(?)オレが大人になるまで封印しておこう。
オレは心にそう誓った。
すると誰かが帰って来る音がして、慌ててオレはビデオの “取り出しボタン” を押した。
(やっべ!?)
すると閉まった棚のフタにぶつかったビデオはデッキの中へと戻って行った。玄関のドアが開けられカサカサと物音がする。
慌ててオレはフタを開けもう一度 “取り出しボタン” を押してようやくビデオを取り出し急いで書斎から出た。
「兄ちゃん!? 何で居んの?」
帰って来たのは兄ちゃんだった。
「何でって今、会社から帰って来たから」
「えっ、もうそんな時間!?」
時計を見ると既に6時を回っていた。
「あっ本当だ……?」
とオレは引きつったように苦笑いした。
(お願いだから気付かないで!)と願いながら――ところが……
「あっ!? 何持ってんだお前!?」
あっさり気付かれてしまった。
兄ちゃんは慌ててビデオをオレから奪い取った。
「何で、お前、こんな……!? はぁ〜」
兄ちゃんは気の抜けた声を出し、すっかり落胆していた。そして
「見たのか?」
静かにそう言った。
「見てないよ!オレ、そんな、 “釣り” なんか興味ないし!」
オレは必死にしらをきろうとしたが
「見たんだな」
何故かすぐにばれてしまった。
「兄ちゃんオレ、本当にあの、 “釣りのとこ” しか見てないから!」
「釣り以外何か映ってたのか?」
冷たく兄ちゃんはそう言った。
「う゛ぅ゛ん…… “全部” 釣りだった」
オレはたじろいだ。
「全部見たのか?」
「と、途中まで……」
(誘導尋問する取調室かッ!)
オレは言えば言うほど深みにはまって行った。
「省吾。男なら言い訳するな。洗練された男は言い訳などしない」
「……」
そこまで言った時の兄ちゃんはめちゃめちゃカッコ良かったが……
「それが男のダンディズムだ」
その台詞を言った途端兄ちゃんが全くダンディに見えなかったのは何故だろう……
もしかするとオレは釣り番組でカモフラージュしてまでアダルトビデオをダビングしていた兄ちゃんのあの小細工に、男の潔さを感じなくなってしまったからかもしれない……(切実)
次回【その4】??…………もしかしたら奴が現われるかもしれない……!?次話もよろしくお願いします〜