*第3話*
「そーいえば俺かいちょーの名前しらないな」
「へ?!」
さっきまで沈黙だったのに
いきなり先輩がしゃべったものだから
びっくりしてしまった。
「え?そこまで驚く?」
「あ、いや仕事に入り込んでたんで・・・」
「ほんと、かいちょーは真面目だね。もう少し気楽に生なよ」
「それは無理です。くそ真面目に生きないと世の中たえられないですよ」
「ま、いつか絶対苦しくなると思うけど。そのときは俺を頼りな」
「な、なんでそうなるんですか!」
「だって俺の事好きなんだろ?」
「・・・顔が、ですよ」
何の会話だ・・・これ
どうでもいい話をあたしはぺらぺらと・・・
「ふ~ん・・・。で、かいちょーさんのお名前は?クラスも言ってくれ」
「あ・・・美原鈴羽です。2-Aです」
「俺は久仁江田哉也、3-B。あらためてよろしく」
ニコリと笑う先輩に思わず見とれる。
・・・かっこいい・・・
「そんな眼見されても困るよー・・・?」
「!!!す、すみません!」
「いや、別にいいけどね。てか、かいちょー?もうすぐ6時回るよ?
まあ、まだ外明るいけどさ」
「6時ですか・・・まだまだ帰れそうにないですね」
「え、何時にかえんの?」
「8時ぐらいですよ」
「え!?学校に許可得てるの?」
「はい、なので堂々と8時までやってますよ」
「でも8時って結構暗いんじゃ?」
「・・・大丈夫、です。どうせ一人なので。」
そう、どうせ一人。
家には誰もいない。
父も母も兄弟も。
「ご家族心配す・・・」
「先輩、サッカー、試合終わったみたいですよ、行って下さい」
あたしは先輩の言葉をさえぎる
「俺別に・・・」
「良いから行って下さい。部活のサボりは許しません。
ほら!早く行って!!」
あたしは先輩を無理やり廊下に追い出し
ドアを閉めた。
「・・・ご家族なんていませんよ・・・先輩」
だって、あたしの家族・・・
「殺されたんですから・・・」
さすがにやばい。
涙があふれる。
このごろその話に触れていなかった分だ。
あたしはペタリと床に座って泣きじゃくった。
すると、ドアがあいた。
あたしは気にしずにないたままだったけど
不意に後ろから抱きしめられてびっくりした。
「先輩・・・?」
「ごめん、俺のせい。まじでごめん」
「いいんです・・・慣れてるので・・・はやく部活行ってください」
「でも・・・」
あたしは先輩から離れて、先輩に笑いかけた。
「過去は過去ですから、ね。うん、そうです。いってらっしゃい」
先輩は「わかった」といって、生徒会室を出て行った。
あたしはまた、席に着き書類作業に戻った。
「集中、集中・・・」
とにかく集中した。
・・・悲しい過去を見えなくするにはこれしかないのだ。
「後、イケメンを見る・・・」
自分でも怖いほど最近
イケメンが大好きになってしまった。
「先輩なんてど真ん中ストライクですよ・・・」
窓を見てなんとなくつぶやいた。