*第12話*
あたしはとにかく走った。
別に先輩が追いかけてくるわけじゃないけど
走った。いや、逆に言えば、追いかけてきてほしいのかもしてない。
あぁ・・・・なんて欲深いんだ。
走って、たどり着いたのは・・・何故か家族のお墓の前。
ほんとに・・・あたし、なにがしたいんだか・・・
てか・・・先輩の家からよくもまぁ、お墓につけたものだよね・・・
「しかもこの前も来たよね・・・」
お墓の前でひざまずいて座り、備えてあるまだきれいなお花を
まっすぐに直して、手を合わせた。
お母さん、お父さん、お兄ちゃん。
あたし、好きな人に何も言わずふられちゃったみたいなの。
告白なんてしてないけど、ふられちゃうなんて
本当になさけないよね・・・・
お母さんとお父さんはどうやって知り合ったの?
あたし、お母さんとお父さんのことなんにもしらないなぁ・・・
娘なのに、ほとんど記憶がないってどうすればいいわけ?
お兄ちゃんとの記憶もほとんどないんだよね
もう・・・なにからなにまで最悪だよ・・・?
3分ぐらい手を合わせていた。
こんなことをしても家族は帰ってこないんだ。
てか・・・あたしいつからこんなにネガティブになったの?
そうだ、あたしは会長なんだよ。
鈴架学園,生徒会会長,美原鈴羽。
みんなから怖がられるような存在。
趣味はイケメン観察。
・・・決して、恋愛感情を持たない。
あたしはすくっと立ち上がり家の方向を向いて歩き出した。
もう先輩にはかかわらないでおこう。
サッカー部の観察は・・・一時停止。
うん、それが一番の得策だよね。
あたしはスタスタと歩く。
スタスタ歩くものの、徐々に目の前がかすんできた。
「あ・・・れ・・・なに、あたし・・・今更・・・」
・・・なに、今更涙なんて流してんのよ・・・
とめたくてもとめられない。
お母さんたちが死んだときと一緒だった。
泣き止みなさいといわれても泣き止むことはできなかった。
悲しさで胸がいっぱいで
涙腺なんて壊れ済みだった。
歩く足がすくんだ。
・・・家に帰って、あたしはいったい何をするの・・・?
誰もいない家であたしは一人むなしく勉強するの?
好きじゃないリスニングをして、頭使ってなにになる?
あぁ・・・こう思うと、先輩といただけで
なんか楽しかったな。別にこれといって話してないけど。
大体寝てたけど、なにか心地よいものがあった。
あたしの家は冷たい。先輩の家は温かい。
差はきっと、心の問題。あたしの心は冷たすぎるのよ。
とにかく歩いていると、後ろからあたしを呼ぶ声がした。
「会長ーっ!!!」
その声にあたしは目を見開く。
先輩・・・?!
後ろを向くと、先輩がツカツカとこっちに向かってきていた。
そして、あたしの目の前まで来るとあたしを抱きしめて
「話、聞いてたんだろ」と言った。
「人間って欲深いものです・・・。おとなしく待とうと思っても
待てないんです。イヤホンを外してしまいました。すみません」
「いや・・・あの状況で外さないやつは大体いないと思う。
・・・小泉と付き合うってのは嘘だから・・・」
その言葉にあたしは先輩を自分から離した。
「別にいいじゃないですか。ただ、あたしが先輩のことを
一方的に思っていただけですから。」
「いや、でも・・・」
「そんなに罪悪感があるなら、最後に一つ、お願い聞いてもらえますか?」
「・・・何・・・?」
「・・・あたしに、また、ニコニコ温かい笑顔で笑ってください」
そういうと先輩はまたあたしを抱きしめて
「そんなお願い俺絶対聞かない。会長、もっと、もっと欲深くなっていいんだよ。
会長の本当に思ってることを今、言ってよ」
先輩の真面目な声にあたしは思わず本音を言ってしまう。
「いやですよ・・・!先輩が離れちゃうなんてっ・・・!できることなら
ずっと、ずっと一緒にいたいです・・・温かい先輩の元にいたいです・・・っ
もう・・・あたしには今、先輩以外誰もいない・・・・です・・・」
はっと気づいた時には、先輩はまたあったかい笑顔で笑っていて
「よくできました。もう、俺会長離さないからね?」と言い
また、先輩の家にひきもどされた。