*第11話*
おとなしく待ってる・・・といっても
人間っていうのは欲がある。
・・・会話が気になってしまう・・・。
悪いとは思った。だめだとは思った。
けれど、小泉って人が彼女ならなおさら聞きたいと思ってしまう。
イヤホンを少しだけずらして会話を聞いた。
「で、あの子誰なの?」
「あの子ってどの子。」
「インターホンに出た子。そこに寝てる子だと思うけど」
「会長だよ。生徒会室に用あったから行ったら、
しんどそうにしてたからつれてきたんだよ」
「そんなの保健室にでも運べばいいんじゃない?」
「保健の先生は残念ながらもう帰ってたよ。8時とかだし」
「なんでそんな時間に生徒会室にいるのよ!」
「別になんだっていいだろ?!俺の勝手じゃねえか!」
「あたしって言う彼女がいながら、なんなのよ!まったく!
この、遊び人!最低ね!!」
「はぁ?俺とお前はもう別れたんだ。そうだろ!」
「あたし別にあんたと別れたつもりないし!てか
あたしと付き合ってないって言うなら誰と付き合ってんのよ!」
「お前に言う義理なんてねえよ!」
「どうせ、その会長とイチャイチャしてるんでしょ?!」
「・・・はぁ?んなわけないじゃん。」
「じゃぁ遊び人?」
「・・・まぁな」
「あっそう?じゃぁ、あたしともまた付き合いなさいよ」
「お前に興味とかねえし」
「やっぱり会長は本気なの?」
「・・・わぁった。付き合ってやる。だから、今日は帰れ。」
「ありがと♪今日の課題置いとくわね?後、メアド送ってね。変えたでしょう」
「・・・わかった。わかったからまじで帰って。」
「じゃ、明日一緒に登校しましょうね?」
玄関のドアが閉まる音がして。
先輩が近づいてくる音がした。
あたしは即座にイヤホンをつけた。
「鈴羽、もう、いいよ」
先輩はあたしのイヤホンを外して、話しかけた。
「哉・・・先輩。あたし、帰りますね。」
「は?いや、帰れないだろ・・・」
「大丈夫です。帰ります。朝ごはん、冷蔵庫に入れてありますから。
失礼・・・しますっ・・・」
あたしは鞄を取って、先輩の家を出た。
『どうせ、その会長とイチャイチャしてるんでしょ?!』
『はぁ?んなわけないじゃん。』
『じゃぁ遊び人?』
『・・・まぁな。』
・・・遊び・・・人・・・
あたしは後悔した。
欲でイヤホンをはずすんじゃなかった。
外さなかったら、あんな会話聞かなくてすんだのに・・・
というか・・・あたし、全然動揺かくせてないじゃない・・・
・・・あたしが・・・先輩の事、本気で好きって・・・
ばれちゃうじゃないの・・・