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私がやったことにされていた

作者: Wataru
掲載日:2026/02/11

 最初は、小さなことだった。


「あなた、私のパソコン触ったでしょ?」


 同僚にそう言われた。


 触っていない。


 そもそも部署も違うし、席も遠い。


「触ってないですよ」


 そう言っても、納得しない。


「履歴に残ってるのよ」


 そんなはずはない。


 だが彼女は、本気で怒っていた。


 それからだった。


「私の書類、隠したでしょ」

「ログインできなくなったの、あなたのせいでしょ」

「みんなあなたに言われてるって」


 関わってもいないことを、全部こちらのせいにされる。


 最初は笑って流していた。


 だが回数が増える。


 周囲も、少しずつ距離を取るようになった。


(……もしかして)


 本当に、自分が何かしているのか?


 記憶にないだけで。


 無意識で。


 スマホの履歴を確認する。


 会社のログも見直す。


 何もない。


 だが彼女は言い続ける。


「証拠はあるのよ」


 なのに、誰も証拠を見せない。


 夜、眠れなくなる。


 自分の記憶の方が信用できなくなる。


 本当に、私が壊れているのかもしれない。


 そう思い始めた頃だった。


 課長に呼ばれた。


「例の件だけど」


 胃が縮む。


「〇〇さん、異動になったから」


「……え?」


「被害妄想がひどくて、他の部署でもトラブル続きだったらしい」


 言葉が理解できない。


「君は悪くないよ。むしろ巻き込まれてた側だ」


 帰り道。


 肩の力が抜ける。


 自分は、おかしくなかった。


 そう思った。


 安心して、部屋に入る。


 カバンを置く。


 スマホを見る。


 ロック画面に通知が一件。


 知らない番号からのメッセージ。


 


『どうして私のアカウント触ったの?』

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