6:私、女よ!
――――迷宮に入って二ヶ月が経った。
さすがの私でもダンジョンに住み着き、勇者の指南を受ければ『ザコモンスター』ぐらいなら一人で倒せるようにもなる。
ビシオンからもらったダガ―から滴る血を振り払い、鞘に納めた。
「よし、今日の食料は調達できたから泉に帰るか」
(……帰るの早っ)
毎日の日課に追加されたザコモンスター狩りだが、ビシオンから乱獲は禁止されている。
ザコモンスターといえど、その体内には魔石があり――小石サイズでも一週間分の贅沢な食費ぐらいにはなるらしい。
だからこそ、隙をみせているモンスターが目に着けば――自然と体が反応した。
「――――ん”ッ!!」
「――――帰るって言っただろ?!」
しかし、その度にビシオンが首根っこをつかみ止める。この繰り返しだ。
どうも私には彼の言う『待つ』というのが向いていないらしい。
そもそも、生きて帰れたとしても音信不通となった私は職場をクビになっているだろうし……借りていた部屋だって大家さんが他の人に貸し出しているかもしれない。
そのことを考えるとなおさら、遠ざかっていく目先の利益が恋しく感じた……。
また、その間にもミノタウロスは初めて見た時よりも力を付けているような気がしてならなかった。
*
ミノタウロスと遭遇して三カ月が経とうとしていたある日――――。
朝の食事をしていると、ビシオンがミノタウロスとの戦闘に備えるように言ってきた。
「……えっ?! 私も戦うの??」
すでにミノタウロスは多くの養分――まあ、他の冒険者のことだが。それらの手足を食べ、素人目の私でも分かるほどに強くなっていた。
そんなミノタウロスと駆け出し初心者の私が戦うなんて、『死ね』と言われているようなもの――。
だが、彼は私が言ったことを理解していないのか――
「ん?? そのためにいるんじゃないのか??」
はああああああああああ??!!
「いやいやいや、ビシオンさん――――。見て分からないの?? 私、女よ!」
「そうだな……俺は男だ」
「いやいやいや、お互いの性別の話をしているわけじゃなくって。か弱い女の子ってことよ、自分で言わせないで!」
「か弱い……?? 確かに俺に比べれば『か弱い』が……まあ大丈夫だろ」
「……冗談じゃないのよね??」
もしかしたら、この時に断っておけば良かったのかもしれない……。
しかしながら、それでも彼は……私を戦闘に参加させただろう。
……そんな気がしてならない。




