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絶望勇者と私の後半戦  作者: 川井田ナツナ


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2/8

2:私を選んで

 男女比――二十五対二十五人で始まった婚活イベント。

 司会者の合図で三分置きに男性が対面を移動し、一対一の自己紹介もすでに半数を過ぎていた。


(しんど……)


 数十分の間に入れ替わり立ち代わりに、鼻の下を長くした男と対峙するのは精神的に来るものがある。


 私の内面を知りたいと話して来た輩もいたが、その眼は私の身体ばかりを舐めるように見ていた。

 できる事なら、観覧費として金をむしり取りたいがそんな勇気はない。

 何とも非生産的な時間がゆっくりと流れていた……。


「……イヴァニュシュナ。あの田舎生まれか??」

 

 名前や趣味、年齢などを書いたプロフィール用紙を次に交換した男はそんなことを発した。


「ですけど……それが何か?」


 田舎生まれというフレーズにちょっとイラっとし、自然と返事が戦闘モードに切り替わる。

 出方によっては、持てるだけの語彙力を総動員して愚弄(ぐろう)してやるつもりだ――――心の中でだけど。


「あ、いや……母も長い名前で間に『ニュ』が入ってたので……それで」


 彼の顔は『しもた』と言わんばかりの表情で、私の目を真っ直ぐ見ていた……そして。


 他人の瞳に映る自分を観たのはそれが初めてだった。




 話を聞くと、彼――ビシオンはこの世界に存在する魔王の一体を倒した勇者だという。

 私が想像していた勇者――自信に溢れ、人々の希望の光となるような男……まして、こんな所にやってくることが信じ難かった。


 しかしながら、それは私が勝手に作り出した妄想に過ぎず――彼は絶望していた……人生にハリが無くなったと。


 現在は適当にクエストをこなし、日銭を稼いで生活しているという。

 彼の発する言葉の節々には、口にはしないが『だるい』『しんどい』『めんどくさい』などのネガティブな(にお)いがプンプンする。


 だがそれでも……腐っても勇者なのか、今どき魔物退治だけで生計を立てられるなんて眉唾物だ。

 なんなら、私だってそんな生活がしたいとすら思う。


 司会者が笛を鳴らし、彼との三分間が終わりを告げた。


 プロフィール用紙を返す別れ際――彼の耳元で。


「ビシオン――――私を選んで」


「あ……はい??」


 私を見るビシオンはピンと来ていないようにも見えたが、フリータイムでの会話を経て――。

 

 私たちはマッチングしたのだった。

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